詩集.想いをこの束にして (二束目)
詩集.想いをこの束にして (二束目)
愛の編 六
この指とまれ
の合図で
呼びかけよう
重いくらい
集まった
たくさんの
温もりが
君の
細い指先に
留まれば
きっと
今よりもっと
笑ってくれるよね
そしたら
笑顔が
そこら中に
紘がって
僕は
それを
胸いっぱいに
吸い込む
溜め込んだ
その息を
一気に吐き出した後
今度は
僕の
差し上げた指に
誰か触れると
「幸せ」が
止め処なく
連鎖するんだ
君は
いつだって
笑顔でいられる
いつか
そんな
妖精みたいな
力を持って
指を
高く掲げながら
いつも
君の周りに
纏わりついていたいな─
愛の編 七
外れくじを
並べて
大きくため息を
吐いたら
わざと
口笛を
吹いて
笑って見せよう
お気に入りの
ジャケットに
泥を
はねられたなら
ついでに
クレパスの
緑色を
散りばめて
軽やかに
スキップを
踏んで見せよう
いつの間にか
強かな君に
「意地悪」の神様は
眉間に
皺を寄せたあと
そそくさと
逃げ出して行くよ
代わって
降りてくる神は
「幸せ」を
司る天人で
実は
片想いしてたんだ
あの頃の
アルバムを大切に
持っていて
いつも
朗らかに
笑う
君に
恋してた
けれど忙しくて
想いを
託したんだ
「彼女を大切にしておくれ─」
名残惜しげに
そう言って
ほら
見てご覧
知らぬ間に
僕の
アルバムの中で
笑ってる
君がいる─
愛の編 八
どこからか
金木犀が
香ったら
そよ風に向き合い
また
迎えられる
秋を祝おう
目を閉じて
君の
希みと一緒に
その
甘い風を
胸いっぱい
吸い込めば
きっと
微笑まずに
いられないだろう
眩(まばゆ)いほどの
笑みを
確かめたら
乾いた
蒼空を見上げ
そっと
掌を合わせるんだ
ありがとう
また
今日の
陽を
ありがとう
そう
繰り返すと
降り注ぐ
陽射しが
僕らを温かに
包み込み
靡(なび)いた
柔らかな
髪が
ふんわり
同じ
匂いを
纏(まと)う
僕は
思わず
君の肩を
抱き寄せて
魔法の言葉を
囁く
紅色の
柔らかな
唇に触れながら
誓うんだ
今
そして
決して
変わらぬ
永遠(とわ)を─
愛の編 九
独りぼっちの
わたしの
心に
例えようのない
淋しさだけ
吹き抜ける
隙間だらけの
哀しい心に
いつも
描きさしの
カンバスみたいに
色のない
殺風景で
行き場のない
わたしの
心の中に
いつからか
優しくて
懐かしい
光が
触れるようになった
労わりでなく
同情でもない
それが「愛」だと
生まれて
初めて
知った
包まれる
心地良さに
戸惑い
躊躇(ためら)う
わたしに
もう
いいよ
もう
だいじょうぶだから
そう言って
しっかりと
握られた
わたしの掌
あまりにも
温かくて
胸が
いっぱいになって
何か言わなくちゃ
そう思ったら
不意に
溢れかけた
涙から
救い出すように
あなたは
今度は
心ごとを
包み込むみたいに
そっと
広い腕で
抱きしめてくれた─
愛の編 十
風は
根づかせようと
種を運ぶよ
大地は
それを
優しく
受けとめる
お陽様に
育てられ
雨が手助けして
その
全てを
天(そら)が司(つかさど)る
人だって同じ
慈しみに
護られ
たくさんに
愛され
また朝(あした)に
生まれ変わる
信じたり
裏切られたりも
あるけれど
やっぱり
誰かに
出来れば
あなたに
そっと
寄りかかっていたい
何億分の一だという
奇跡を
温かな
その腕の中で
じっと
感じていたい─
詩集.想いをこの束にして (二束目)