おやすみマイスイート
オレンジペコをミルクティーにしてシナモンなどを振りかけてみた。
外は雪が散らついていて、イルは呆れたような気持ちになった。
「お茶を淹れましたが、飲みませんか。お嬢さん。」
と緑色したタートルネックの襟を顎の辺りまでのばしながら、イルが扉を叩き、娘に告げた。
中からは返事の代わりに、物を投げたと思われるけたたましい音が返ってきたので、イルは再び呆れたような気持ちになった。
「お茶なんかで私の機嫌がとれると思ってるの?私がなぜあなたを部屋に入れないか、本当に分かってる?私は」
以下に続く罵詈雑言の限りをイルは音楽でも聴くかのように耳に入れる。
言葉から発せられる不安。強い強い他責の傾向。
可能性としての被虐は、どうだろうか。
「あなたが自分のことを責めているのはよく分かったよ。」
娘の動きがピタリと止まった。
「あなたが耐えてきた事柄も、見当がつきました。偉かったね。」
扉の向こうの音が啜り泣きに変わるのを静かに、やはり音楽でも聴くように、イルは耳に入れていた。
「ミルクティーは飲みますか。シュガークッキーちゃん。」
「甘いものは嫌いよ。」
イルは笑いながら頷いた。
おやすみマイスイート