【超短編】サムライ

トモコとマリコ(六井 象) 作

 満員の通勤列車の網棚の上に、大蛇が横たわっていて、お腹が、おっさんの形に膨らんでいた。
 後ろの車両へ行くほど、大蛇は細いので、前の車両に頭があって、それにおっさんが呑まれたのだろう。

 なぜ腹の形だけで、おっさんだとわかったのかというと、それは俺もおっさんだからだ。

 知っているおっさんだったら嫌だな、と思って、携帯のアドレス帳に入っているおっさんに、片っ端からメールを送ってみた。
「元気?」
 とか、そんなやつを。

 六人目のおっさんにメールを送った直後、もうすっかり平たくなっていた大蛇のお腹の中から、携帯の着信音が聞こえてきた。
「サムライ」だった。
 ジュリーの。

 通勤時間を、貴重な睡眠に充てているらしい若い姉ちゃんが、迷惑そうな咳払いをした。

 六人目のおっさんが、ジュリーとか聴きそうかどうか考えていたら、いつもの駅を乗り過ごしていた。

【超短編】サムライ

【超短編】サムライ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-01-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted