独り言

変な夢の途中

ひとりのこびとが語る


ある日お嬢さんがやってきた

お嬢さんは着ているものもぼろぼろで

すれ違う人

振り返る度に可哀想な顔をするが

立ち止まる人は悲しくもいなかったんだ


ある日猫がやってきた

猫は首輪もつけていなくてね

すれ違う人

可愛いと言って歩いて行く者

可哀想と言って歩いて行く者

立ち止まったとしても顔をしかめてまた歩いて行く者


東から小娘一人

西から猫一匹


赤い灯りの前

同じ様な容姿の猫に少女は言った

「なんて汚い」

同じような容姿の人間に猫は言った

「なんて汚い」


東から何台もの自転車がやってきた

西から一台の高級車がやってきた


東から耳にはいる声は全く少女に届かなかった

「大丈夫だった?」

「ごめんね 私たちが間違ってた」

綺麗な制服を身にまとった少女たちの泣き声も

綺麗なスーツを着た先生の怒鳴り声も

なにもかもな。


西から耳に入る声は全く猫に届かなかった

「可哀想にッ誰がこんなことッ」

「早くおうちに帰るわよ」

綺麗なピアスをつけた奥様の手の感触も

綺麗に磨かれた1m立方の檻の冷たさも

なにもかもな。



赤い灯りの前

一人と一匹は待ち合わせるそうだ。

独り言

独り言

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-07

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