ガンダムW 少女の見た流星 シナリオ稿 

ガンダムW 少女の見た流星 シナリオ稿 

1998年作品

第一話 「少女の見た流星」

○さまざまな宇宙コロニー群

ナレーション「地球から巣立った人類は、宇宙コロニーでの新たな希望を求めていた。

しかし地球圏統一連合は圧倒的な軍事力をもって各コロニーを制圧していった。連合に反発する一部のコロニー指導者らは、流星に模した新兵器を地球に送り込むという行動に出た。作戦名『オペレーション・メテオ』――――だがこの作戦はすでに連合本部に察知されていたのであった。

時にアフター・コロニー195年・・・・・。」

 
○コロニー群の横に停泊する、古い戦艦からそれぞれ発射される五つの宇宙ポッド。地球に吸い込まれていく。

●アバン・タイトル「少女の見た流星」

○地球圏統一連合監視衛星

オペレーター「ラグランジュ・ポイントAXよりGYにかけて、質量の移動を確認。地球大気圏突入まで600秒。」


○停泊する地球統一連合軍戦艦より、ゼクス機とエアリーズ何機かが発射される。

オペレーター「目標を捕捉。このまま大気圏突入の場合、アメリカ大陸に落着予定。残り四機のポッドはユーラシア大陸に三機、中部アメリカに一機落着する予定です。」

パイロットスーツを着て、バイザーをかぶったゼクス。

ゼクス「了解。各機目標を追随せよ。」

兵士「ラジャー。」

ゼクス「M作戦か・・・・。」

ヒイロの乗るガンダム1号機のポッドに向かって、散開するゼクス機のリーオーとエアリーズ。一機のエアリーズが攻撃をしかける。中のヒイロ、バイザーから顔が見えないが、素早く反応してコクピットで操作する。ポッドからミサイルが連射される。

ゼクス「噂の戦争の卵とやらを見せてもらおう。」

ゼクス機、ポッドに向けてビームライフルを発射。一発がポッドの左に命中。

ガンダムコクピット内。

ガンダムのオペレーターシステム「左推進装置異常発生。」

ヒイロ「!」

ヒイロ、素早く天井のパネルにタッチダウン。ポッドが割れてガンダムが中から変形して現れる。

ゼクス「プロトタイプだ。間違いない。各機ガンダムを包囲せよ。」

兵士「ゼクス特佐、大気圏突入まで120秒を切りました。」

ゼクス「燃え上がる前に片付ける。散れ!」

電離層で激しい攻防戦が展開。ヒイロのガンダム、何機かのエアリーズを打ち落とす。

ゼクス「なんというヤツだ・・・・。」

ゼクスとヒイロ、地球をバックに激しく打ち合い。

オペレーター「ゼクス特佐、機体が持ちません。ただちに母艦まで帰還してください。繰り返します。」
ゼクスのオペレーターシステム「間もなく大気圏に突入します。生命維持の危険が出ます。」

ゼクス「チッ。」

ゼクス、リーオーをひきあげる。

ゼクス「各機、母艦の信号弾にまで戻れ!」

兵士「ゼクス特佐、ポイントゼロにまで後退せよとのことです。」

ゼクス「わかった。すぐに行く。」

ゼクスの目の前で、大気圏に突入して炎に包まれるヒイロのガンダム。ゼクス、くやしげに。

ゼクス「ガンダニュウム合金・・・!地上の統一軍に連絡しろ。」

○ アメリカ大陸西部

夜空。轟音をあげて上空から降ってくる炎の塊。偵察に出ている地球統一連合の三機の戦闘機をかすめて落ちていく。大爆発が起こる。

パイロット「落ちたぞ。」

パイロット「すげぇ。核並みの威力だ。中の人間は即死だな。」

パイロット「われわれの出番はなかったな。」

キノコ雲をかすめて、飛び去る戦闘機たち。

○ ドーリアンの屋敷

リリーナ「何かしら。」

ベッドで寝ていた、リリーナ起き上がり、窓に近づく。カーテンを開けて見る。

リリーナ「東の空が明るいわ・・・・砂漠に何かが落ちたのかしら・・・・。」

不安げなリリーナの顔を、爆発の光が照らす。

○ 爆発の跡地

ガラッと音がして、黒こげのガンダムの中から人が出てくるのが少し写る。ヒイロ。

○ 翌朝。ドーリアンの屋敷

ドーリアン、リビングルームで新聞を読んでいる。向かいにリリーナと母が座って食事をしている。

リリーナ「・・・で、お父様、私今度の弁論大会では、そのことをテーマにするつもりですの。宇宙と地球との調和について。」

ドーリアン「・・・・ん?そうか。」

リリーナ「まあ。お父様、私の話をちゃんと聞いていますの?お母様、お父様ったらひどいわ。」

ドーリアン夫人、上品そうに笑う。

ドーリアン夫人「さあ、食事もすんだことですし、リリーナ、今度の学校の学年パーティで着るドレスの仮縫いをしましょう。こちらへいらっしゃい。」

リリーナ「はい、お母様。」

リリーナ、席を立つと、ドーリアンに膝を軽く曲げる会釈をし、ドーリアン夫人とドアの向こうに消える。

ドーリアン新聞を机に置くと、それとは別の部屋に行く。書斎。ドーリアン、電話を取り、誰かと連絡する。

ドーリアン「ああ、私だが・・・今度の実験は町の近くで起こったようだな。まだ町の連中はただの連合の核実験と考えているようだが。すぐにシャトル便の手配を頼む。あんなものが落ちたのだ、コロニー側の意向を聞かねばなるまい。では、午後の便で。」

ドーリアン受話器を置き、ため息、ひとりごちて。

ドーリアン「迫り来る、戦争の足音なのか・・・・?」

○ 聖ガブリエル学園中等部

徒歩で友人たちと登校するリリーナ。

リリーナ(やっぱりみんな、ただの核実験だと思っているわ・・・でも私はそうではないという気がするの。何故かしら・・・)

女生徒「おはようございます、リリーナ様。お聞きになりまして?今朝は臨時の転入生がいるそうですわよ。」

リリーナ「え・・・。」

女生徒「うちの学園は転入するのが難しいのに・・・・一体どんな転入生かしらね。」

○ 聖堂の中で、壇上に紹介されるヒイロ。学生服が似合ってない。

シスター「新しく編入になった、ヒイロ・ユイさんです。」

拍手して迎える生徒たち。だがヒイロは無言でむき出しの敵意で突っ立ったまま。

リリーナ「・・・・・。」

○ 授業中

ヒイロ、一見まじめそうに授業を受けている。リリーナ、ヒイロをちらりと盗み見る。

シスター「では次のところを、リリーナさん、読んで。」

リリーナ「はい。」

立ち上がり、コロニーの歴史を朗読するリリーナ。

リリーナ「この時、指導者であるヒイロ・ユイは密閉型コロニーを不完全であるとして、新たに開放型コロニーの機構を提案したのである。これにより、宇宙への移民は大幅に増大し、地球圏の居住状態も向上した。その後コロニー群は・・・・」

ヒイロ、リリーナのほうを見ずに窓の外を眺めている。

○ 放課後

リリーナと取り巻きの女生徒が廊下を歩いている。

女生徒「今度のパーティでは、リリーナ様は誰とお踊りになられますの?」

リリーナ「まあそんなこと、私はちっとも何も決めていないわ。」

女生徒「そんなことをおっしゃって。リリーナ様と踊りたいと思っている男子生徒は大勢いますのよ。」

リリーナ「フフ・・・。(苦笑)」

女生徒「それはそうと、今朝の彼、ちょっととやばいかもですわね。紹介されても礼のひとつもしないなんて。シスターたちは、きっと目をつけたと思いますわ。」

女生徒「噂をすれば、彼ですわよ。」

廊下の向こうからヒイロが歩いてくる。

リリーナ、緊張して立ち止まる。すれ違う一瞬。

ヒイロ「おまえを、殺す。」

リリーナ「えっ・・・・・?」

リリーナ呆然と立ち尽くす。ヒイロの後ろ姿をあわてて目で追うリリーナ。先に行った女生徒たちの明るい笑い声がリリーナの耳に聞こえる。

女生徒「どうなさいました、リリーナ様。」

女生徒「リリーナ様。」

―――Aパート終わり。

○ 空港

出発しようとする、ドーリアン外務次官を取り囲む報道陣。

記者「今回のコロニー行きの真意をお聞かせください、次官。」

記者「コロニー連合側の要求を、統一連合としては呑むおつもりなのでしょうか。」

記者「ドーリアン外務次官、一言お願いします。」

記者「昨日地球に落下した隕石群を、軍部は隠しているとの噂が流れていますが。コロニー側のテロの可能性を、各国は示唆していますが。」

ドーリアン「ノー・コメントだ。先を急いでいる。諸君、通してくれたまえ。」

記者と人ごみをかきわけて、シャトル乗り場に急ぐドーリアン。

○ 地球・統一連合本部 近くの山

近くの山林で、クレー射撃に興じているトレーズ・クシュリナーダ。

トレーズ「(一発撃って)これは銃身が軽すぎるようだ。反動が少ないので、弾を撃った気がしない。」

付き人「特別に作らせた品物でしたのに、ご不満でいらっしゃる。」

トレーズ「銃は人を選ぶのだよ。モビルスーツも同じことだ。」

レディ・アン、眼鏡をかけて登場。

レディ・アン「失礼します。本部より連絡が入りました。落下したプロトタイプについての処遇を、OZに委託したいとのことです。」

トレーズ「ふ・・・・老人たちの結論がそれだな。彼らは平和に慣れすぎているのだ。」

銃を付き人に渡すと、本部へレディ・アンとおもむくトレーズ。

○ OZ地下秘密基地 作戦ルーム

何人かの軍人らとトレーズが会合を開いている。

レディ・アン、冷たくファイルを読み上げる。パネルに地球の勢力地図が拡大されて映し出されている。ガンダム落下ポイントが点滅している。

レディ・アン「北アメリカに一機、中部アメリカに一機、中国に一機、中近東地帯に一機、ヨーロッパに一機です。」

トレーズ「全機健在だというのに、老人たちは呑気なものだな。しかし、これからの時代は我らOZが作る。あまんじて受けようではないか、その掃討作戦の責務を。」

レディ・アン「ドーリアン外務次官が宇宙に上がるようです。いかがなさるおつもりで。」

トレーズ「今、地球連合の穏健派とコロニーがサミットの会議を持つのは、我らにとって

得策ではない。阻止したいところだな。」

レディ・アン「あの五機もほうっておけば、テロを起こすでしょう。『オペレーション・デイブレイク』・・ですか・・。」

トレーズ「そのテロは是非起こしていただく。そのためには、生かさず殺さずだ。まずは掃討作戦として、北アメリカには重爆用のモビルスーツを配備だ。レディ・アン。」

レディ・アン「はい。」

トレーズ「君は今は地球にいるべきではない。宇宙にあがりたまえ。君が今なすべき仕事が待っている。」

レディ・アン「はい。承知しました。」

トレーズとレディ・アン、軍人たち、基地の作戦室から出て行く。

○ 中部アメリカの湖

湖の底にデュオのガンダム二号機が沈んでいる。パイロット・スーツで湖の中を泳いで、水面に出てくるデュオ。

デュオ「ぷはーっ。(メットをぬぎ、トランシーバーを取り出し)こちら死神、応答どうぞ。もしもしもしーっ。ちぇーっ、聞こえねぇ。着信範囲外かよ。現在地・・・・メキシコシティの南20キロの湖・・・・これからどうやって町にまで出るかだな。」

デュオ、パイロットスーツをぬぐと、砂漠地帯を歩き出す。手に携帯端末のマップ。

デュオ「西に国道あり。」

遠くから砂煙をあげて走ってくるトラック。デュオ、手をあげて車を止める。

運転席のデュオと運転手。

運転手「なんでぇ、男か。おりゃまた女かと思ったぜ。そんな髪してっからよ・・・。」

デュオ「ちょいと願をかけているのさ。かなうまで髪を切らないってね。」

運転手「おカマみてぇなヤローだな。」

デュオ「カマはカマでも、死神の鎌ってね・・・あんたさぁ、俺の顔を見たヤツは死ぬんだぜ。」

運転手「ぶわっはははははっ、おめぇの顔が死神ってか。そんな娘っ子みてぇなツラのどこが死神なんでぇ。」

デュオ「俺少し寝るわ。街に着いたら起こしてくれ。」

帽子を引き下げて、いびきをかくデュオ。砂煙をあげて走るトラック。

○中国、チベットの高山地帯 岩場 青空

五飛のガンダム五号機が岩場にひっかかっている。

五飛「チッ。」

ガンダムから飛び降りて、パイロットスーツの襟元をゆるめる五飛。いまいましそう。

○ ヨーロッパ、森林地帯の火災跡 夜

こわごわとキャスリンが銃を手に歩いている。

キャスリン「誰か・・・・いるの・・・・。うちのサーカスのキャンプを襲いにきたの・・・・。」

森の茂みがガサッと動く。

キャスリン「だれっ。」

銃を突き出すキャスリン。トロワが両手をあげて立っている。

キャスリン「あ、あなた・・・・。」

○ 中近東、砂漠地帯 夕方

カトル、ガンダム四号機のモニターで、発信している。

カトル「こちらガンダム・・・・カトル・ラバーバ・ウィナーです。聞こえていたら、返事をしてください。繰り返します。」

その時、砂漠の向こうから現われるトレーラーの影。カトル、身構える。

カトル「敵かっ。連合が来たのか。」

ガンダムを立ち上げるカトル。ライフルを構える。

カトル「攻撃しないでください。あなた方と戦う意志は、僕にはないんです。」

カトル、ガンダムで呼びかける。

と、先頭のトレーラーの人影が立ち上がる。仁王立ちのラシード。

ラシード「それでこそ、我らがカトル様。お迎えにまいりやしたぜ。」

カトル、表情がパッと輝いて、ガンダムのコクピットから飛び出して叫ぶ。

カトル「ラシード!みんな!」

○メキシコシティのデュオ ジャンク屋の店先で

デュオ「そこをなんとか、行ってもらえないかねぇ・・・。」

ジャンク屋のおやじ「冗談じゃねぇ。こんなこれっぽっちで、モビルスーツの引き揚げ作業だぁ。なめんじゃねぇぞ、小僧。」

腕っ節の強いおやじ、デュオを通りに突き飛ばす。

デュオ「けっ、おとといくらぁ。」

デュオ、通りを歩いて、市場に出る。樽の上に座るデュオ。

デュオ「けっ、畜生、今に見てろよ。じじいも俺をこんな目に合わせておいて、『自分でなんとかしろ』って伝言だけかよ。ったくよ。」

そこへ走ってくるジープ。デュオの前で止まる。降りるサングラスの美女。もう一人軍人らしい男が乗っている。美女、デュオに尋ねる。

サリィ・ポォ「あなた、死神さん?」

満面の笑みで答えるデュオ。

デュオ「こっちのヒット・チャートでも人気急激上昇中だな。」

サングラスをはずすサリィ。冷ややかに。

サリィ「あなた、目立ちすぎるのよね。」

○北アメリカ。夜。 

銃を手に倉庫群の中を走り抜けるヒイロ。

ある倉庫の中に忍び込む。中のトレーラーを動かし、砂漠地帯へ走り出す。携帯トランシーバーで連絡するヒイロ。

ヒイロ「こちらゼロワン。今から任務を遂行する。」

女性オペレーターの機械的な声「了解。機体の動作を確認せよ。」

ヒイロ「了解。可能な限り、確認する。」

○ 落下したガンダム一号機

黒こげで、とうてい動くとは思えない。ヒイロ、そのコクピットをこじあけ、携帯の端末をセットする。パソコンでデータの確認を始める。目にもとまらぬ速さでキーボードをうつヒイロ。

ヒイロ「躯体部分の損傷度60%、伝達系異常なし・・・・システムエラー80%・・・。」

その時、ヒイロの背後でジープが二台止まる。サングラスで黒服の男が数人降りてくる。 

男「小僧、そこまでだ。銃を捨てろ。」

ヒイロの背中に銃がいくつか突きつけられる。

ヒイロ、素早く両手を挙げるが、次の瞬間、後ろ蹴りで男の銃を跳ね飛ばす。そのまま横にいる男の銃を手刀でうち落とす。発射される銃弾を身軽によけるヒイロ。

男「きさまーっ。」

ヒイロ残りの男も蹴りで倒すが、最後の男に飛び掛られる。ヒイロの首を絞める男。

男「(笑いつつ)運がなかったようだな・・・小僧・・・・。」

ヒイロ、苦悶しながらズボンに隠した銃に片手をのばす。ゆっくりと男に銃をつきつける。

男、必死で首を絞め続けるが、ヒイロの銃が額に発射される。轟音。ヒイロの顔に男の返り血がビシャッとかかる。

 

○夜。ドーリアンの屋敷

リリーナ、父の書斎のドアをあける。誰もいない。リリーナ一抹の寂しさを感じる。

リリーナ(お父様・・・・今頃宇宙に・・・・。)

リリーナ窓ごしに星空を見上げる。と、ドーリアンの書斎の机に置かれた一冊の本に気づくリリーナ。本を手に取り、そのタイトルを読む。(本のタイトルはフランス語の原題)

リリーナ「『星の王子様』・・・・お父様、なぜこんなものを・・・・。」

――第一話・完。

ガンダムW 少女の見た流星 シナリオ稿 

ガンダムW 少女の見た流星 シナリオ稿 

ガンダムWの第一話のみのシナリオ稿です。書き方がわからず、当時図書館で筒井康隆先生の「大魔神」というシナリオ本を借りて参考にして書きました。最近の鉄血のものとは違って若かったのでまだ固い感じだし、あらすじもトルーパーのものとよく似ています。サムライトルーパーの大ファンだったのでそういう話だったらよかったのにという思いで書いたのだと思います。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-01-10

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