もぐらのはなし

もぐらのはなし

もぐらがいました。もぐらは暗い暗い土の中で暮らしていました。もぐらがいつものようにどこへ向かうわけでもなく、ただ土をかきわけ歩いていると大好物のせみの幼虫をみつけました。

せみの幼虫は長い眠りからちょうど目覚めたばかりのように思えました。
「やあ、せみくん。」
「どうも、もぐらさん。」
「本当ならばすぐにきみを食べてしまうところだが、あいにく今はミミズを食べたばかりでお腹がいっぱいなんだ。食べずにおいてやるから、少し話そうじゃないか。」
「歩きながらでもいいかな、もぐらさん。」
「かまわないとも。ただ石ころがあったら教えておくれ。土の中だからか、目が悪いんだ。ところで、セミくんはどこに向かうつもりなんだい。」
「そうなんだ。ボクは行かなきゃならないところがあるんだ。」

「へえ、いったいどこへ向かうって言うんだい。どこへ行っても、どうせ土ばかりじゃないか。」
「そう、ボクは土のないところに行かなきゃならないんだ。そうなんだ。」
「ほお、土のないところなんてあるのかい。驚きだな。そんなところは生まれてこのかた聞いたことも見たこともないよ。」
「ボクも行くのは初めてなんだけどね。」
「誰かから聞いたのかい。」
「ううん、聞いたこともないよ。」

「じゃあどうしてきみはそんなところがあると知っているんだ。」
「うん、わかるんだ。知ってるんだ、生まれる前から。覚えているんだ。」
「へえ、よくわからないなあ…。いっしょについて行ってもいいかな。」
「いーよ。ボクも本当は少しだけ怖かったんだ。」

「ああ、その、土のないところにはいったい何があるって言うんだい。」
「光さ。」
「光……。知らないなあ。それはいったいどんなものなんだい。」
「そうだなあ、とても明るくて暖かいものかな。」
「明るい……。わからないなあ。」
「もぐらさんも行ってみれば、きっとわかるはずだよ。」
「そうだね。」



「そろそろ見えてくるはずだよ。・・・・ほら少しだけ見えてきた。・・・・・・・・ここだよ。まさにここだよ。これのことだよ。わああ、ボクも知ってはいたけれど、この目で見たのは初めてだよ。すばらしいなあ。美しいなあ。これが光だよ、もぐらさん。」

「せみくん、きみはさっきからいったい何を言っているんだい? ここも真っ暗じゃないか。いつもの土の中と何も変わらない。がっかりしたよ。・・・そういえば、歩いたしお腹も空いてきたな。悪いね、せみくん。」

(おわり)

もぐらのはなし

このへんちくりんなお話をもっとわかりやすくするべきかかなり葛藤しました。もぐらは土の中で生活をしているため、目が退化しほとんど視力がないそうです。
あと、このお話はどこ形式にあてはまるのかよくわかりません。

もぐらのはなし

「もぐら」と「せみの幼虫」が登場人物(?)です。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-07

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