勇者と戦士が生き残ったらこうなった(2:0)
利用規約をご確認の上ご使用ください。
「勇者と戦士が生き残ったらこうなった」
≪キャスト≫
勇者(男)
戦士(男)
所要時間:10分程度
◇◇◇
戦士:うわーやばいなこれ、もしかして大ピンチ?
勇者:もしかしなくても大ピンチだな。
戦士:なあ、勇者、お前HPいくつ残ってる?
勇者:10ポイントだな。
戦士:俺なんか5ポイントだぜ……回復アイテムは全部使っちまったし、僧侶と魔法使いは死んじまったから……
勇者:そうだな。絶体絶命、というやつだ。
戦士:ごめん、勇者! 新しいダンジョンにテンションが上がってもっと奥まで行こうなんて俺が言ったから!
勇者:戦士のせいじゃないさ。リーダーは勇者の俺だ。俺の判断ミスだ、自分を責めるな。
戦士:ありがとう勇者。こんなときでも冷静だなんて、さすがリーダーだな……
勇者:そうでもないさ。……さて、アイテムで俺たちの姿を消したから今はモンスターは襲ってこないが、1時間が限度ってところだな。
戦士:1時間したら……俺たち終わりってこと?
勇者:まあそうなるな。
戦士:そうなるなって、いくらなんでも冷静すぎるだろう! うがー、やべえどうしよう!
勇者:落ち着け。声を出すとモンスターに気づかれるぞ。
戦士:あ、そっか……
勇者:ああ
戦士:本当に冷静だな勇者。すごいな。
勇者:そうでもない、これでも焦っている。
戦士:……はあ、でもなんか黙っていると、いろいろ考えちゃうな。今までのこととか。俺さ、馬鹿で、力が強いことくらいしかとりえがなかったからさ、嬉しかったよ、勇者が俺を仲間にしてくれたとき。
勇者:そうか。
戦士:俺いつもつっぱしって、みんなに迷惑かけるのに、勇者はいつもだまってフォローしてくれたよな。なんか照れるけど、ありがとう、な。勇者を守れなくてごめんな。
勇者:なんだ改まって。
戦士:いや、言っておきたかったからさ。どうせ死ぬんだし。……って、死ぬのかー俺! ああーー童貞卒業したかったー!!!
勇者:露骨(ろこつ)だな。
戦士:露骨で結構。死ぬってのに言葉なんぞ選んでられるか! 勇者こそなんか心残りないのか? あれ、そういえば、勇者と恋バナしたことなかったよな? なあなあ、勇者には好きな子とかいないの?
勇者:いるぞ
戦士:マジで!? だれだれ? 教えてよ、いいじゃん最後なんだし
勇者:おまえだ
戦士:……は?
勇者:だからおまえだ。
戦士:……は?
勇者:だから、俺が好きなのはおまえだ。
戦士:いやいやいや、勇者。俺が言っているのはそういう意味の好きじゃなくて、そのなんというか……
勇者:わかってる。恋愛対象として、だろ? 俺はお前を性の対象としてみている。
戦士:……は?
勇者:今もお前を抱きしめてキスして、体をまさぐって服をはだけさせながら押し倒したいと思っている。
戦士:うそだろ!
勇者:やってみせるか?
戦士:するな! なんだよ、なんの冗談だよ!
勇者:俺が冗談を言えないことはお前ならよくわかっているだろう? こんなときに嘘を言ってどうする。
戦士:……マジかよ。
勇者:そうだ、魔王を倒して世界に平和がきたらプロポーズするつもりで、指輪も買ってある。
戦士:……マジなんだ。
勇者:魔王を倒したら俺は仕事を失うが安心しろ、旅の間にこっそりためた貯金があるし、今使っている伝説の装備を売り払えばそれなりの金額になるから、それで店でも始めるつもりだから。俺は料理が出来るほうだし、冒険者相手の宿屋をやってもいいな。力仕事は戦士にまかせる。
戦士:ちょっとまってよ! そんな具体的な計画並べられても、俺、何がなんだか! あの、そもそもの話なんだけど、俺、男なんだけど。
勇者:知ってる。
戦士:気にしないの?
勇者:別に。お前は気にするのか?
戦士:いや、当たり前じゃん? おれはバインバインのボンキュッポンが好きだ!
勇者:貧乳も悪くないぞ。
戦士:……いやいや、胸がどうのの話じゃなくてだな! 俺にとって勇者は勇者で! 親友みたいなもので、大事だけど、その……ごめん。
勇者:そうか、もちろんお前の意思は尊重するつもりだ。悪かったな。
戦士:いやいや勇者は悪くない! 勇者のことは好きだよ! かっこいいし、優しいし、一緒にいて楽しいし! ずっと一緒にいれたらなって思うよ、けど……
勇者:いいんだ戦士。俺は最後のこの瞬間を戦士といれて嬉しい。
戦士:ちょ、ちょっとまって?
勇者:なんだ?
戦士:……なんで腰を引き寄せてくるんだ?
勇者:最後くらいいいだろ? 好きなんだ、戦士の匂い。
戦士:汗臭いだけだろ……変な奴。
勇者:どうした顔が赤いぞ? 意識しているのか?
戦士:し、してねーよ。するわけないだろ……男相手に。俺は女の子が好きだ。ボンキュッポンが好きだ。
勇者:そっか、じゃあこんなことしても平気だな(リップ音)
戦士:……っておい! 何すんだよ!
勇者:ははは、悪かったって。お詫びにこれ「ヒール」
戦士:え、あ、体力が……勇者?
勇者:最後の魔法だ。お前の体力なら走れば入り口までたどり着けるかもしれない。行け。
戦士:馬鹿! なにやってんだよ!
勇者:勇者の命令だ。行け
戦士:いやだ! 絶対やだ! 勇者を残してなんて行けない! ねえ、お願いだから、そんなこと言わないで。勇者の傍にいさせて?
勇者:いいのか本当に。
戦士:俺やっぱり勇者のことが大事だ。さっきキスされたとき、びっくりしたけど、なんか嫌じゃなかった。俺もしかして、大事な奴が傍にいることに気が付いてなかっただけなのかな?
勇者:戦士……
戦士:勇者……
勇者:いいんだな、本当に。
戦士:う、うん、でも、その、俺こういうの初めてだからどうしたらいいか。
勇者:大丈夫、力を抜いて俺に任せろ。そう、いい子だな。
戦士:う、くすぐったい……あ、ちょっと、そこ、は……やめ
勇者:やめるか?
戦士:ううん、やめなくていい……あ、痛……
勇者:悪い、強くしすぎたか?
戦士:いや、そうじゃなくて、むしろ気持ちいい、けど、なんか当たって……勇者の服の中に……あれ、これって
勇者:……やべ
戦士:これってメキラの石じゃん! 一瞬で街に戻れるアイテム! ……おい勇者、お前! 隠し持ってやがったなぁ!!!
勇者:ばれたか……惜しい、あとちょっとだったのに
戦士:あ、あ、あとちょっとだったのに、ってなあ! お、俺は、俺はどうしたらいいんだ!
勇者:どうもしなくていいだろ? お前のことは俺が幸せにするから安心しろ。
戦士:……よくもそんなのうのうと言えるよな。お前恐ろしい奴だな。
勇者:嫌いになったか?
戦士:き、きらいとは、言ってないだろ。
勇者:わかった。じゃあ続きは宿屋でやろうな。
戦士:え、ば、ばか、何言ってるんだよ!
勇者:しないのか?
戦士:し、しないとも、言ってないけど。あーーなんでこうなったんだろ! ボンキュッポンのアニメ声の女の子と結婚してつつましく暮らすっていう俺の夢がー!
勇者:まあ、諦めろ。
戦士:そんなーーー!!!
勇者:よし、帰るぞ、しっかり掴まってろ
戦士:はーい。
勇者:3、2、1……
戦士:やっぱり納得いかねー!!!
END
勇者と戦士が生き残ったらこうなった(2:0)