詩集.想いをこの束にして (一束目)
詩集 「想いをこの束にして」
愛の編 一
たった今
君は
微笑んでいるだろうか
哀しみを
そっと
しまい込んで
震えては
いないだろうか
塞いでいた
長い
暑い季(とき)が
過ぎ
僕は
やっと
君の 好きな
色づいた
葉ずれの音を
見上げてる
あのね
また
掌を繋いで
じっと
乾いた
陽射しを
感じていたいな
ずっと
この場所に
いるよ
僕は
いつまでも
ここにいる─
愛の編 ニ
涙が
その
傷みを 宿して
また
優しさに
変わったね
ざらついた
傷の痕が
切ない
追憶に
縋(すが)り
ついたとしても
埃 みたいに
大切な
面影は
簡単には
払えないよね
でも
そろそろ
明日を
見上げようか
探してる
人がいるんだ
花台の鉢の
水仙が
華開く
待ち遠しさにも似た
恋心を
ときめかせ
指の糸を
ゆっくりと
辿り始めた
その人の
掌は
とても温かく
今度こそ
全てを
抱き寄せて
放さない
踏み出した
視線の向こうで
大きく
掌を振り
たった今
君を
待ちわびる人がいる─
愛の編 三
ポーションの
ミルクみたいに
「幸せ」が
分け合えたなら
いいね
苦味の強い人生が
美味しくなるくらい
クルクル
混ぜながら
向かい合わせの
君がもし
とっておきの
笑顔を
見せてくれたなら
嬉しさが
目に沁みて
僕は
泣いてしまうかも
しれない
昔
誰かに
聞いたことがある
ちっぽけな
喜びにも
目を閉じて
掌を
合わせるように
なったら
売り子が現れるって
「─良く 頑張ったね」
そう笑って
一握りの
「幸せ」を
分けてくれるんだ
実はね
今日
待ち合わせしてるんだ
一緒に行こう
そろそろ
約束の時間だ─
愛の編 四
半分こにしよう
嬉しいこと
哀しいこと
辛いこと
楽しいこと
チョコレートを
分けるみたいに
半分こにしよう
悪いことは
ちょっとだけ
僕が余分に
引き受けるよ
良いことは
多めに
君にあげる
だから
顔をあげて?
もう
泣かなくていいんだ
君が
笑顔になったら
みんな
半分こにしよう─
愛の編 五
古いアルバムに
挟まれてた
手紙
右肩上がりの
懐かしい
文字から
今も
息遣いが
聞こえてきそうで
思わず
耳に当ててみた
「大丈夫─もう
大丈夫だよ─」
口癖だった
あの
穏やかな
言葉が
不意に
聞こえた気がして
振り返ると
射した光が
部屋の隅に
柔らかな
陽だまりを
こしらえていた
ゆらゆらと
温かな
橙(だいだい)色の中に
あなたが
いるみたいで
ありがとう─
まだ
気にしてくれてるんだ
そう
呟いたら
涙が
溢れてきた
心配しないで
少しは
強くなったんだよ
決して
消えることのない
優しさが
いつも
わたしを
支えてくれてるものー
詩集.想いをこの束にして (一束目)