人工音声時をめぐる

 佐藤三九郎は、人工音声プログラム。萌えキャラの佐藤三九郎はある婦女子の手によって改造をうけ、ある言葉を発するようになった、それはある歌のある一節だった。隣では、量子の光がわきたって、量子研究所は騒然となった、それは何がどうなってか量子の波にのり、量子プログラムとなった人工音声萌えキャラ佐藤三九郎は、その音声だけを過去へととどけた。

 それは大人たちが、罪人を捕えようと躍起になっていた、遠い昔の事、罪人は、無罪を主張してのたうち回り、あることないことふれまわり、北のその村をにぎわせていた、とうとう大きな赤い、地元で有名な赤い大岩の前で立ち止まり、おってきた、警察官たちにつかまろうとしていた、取り囲む2、3人、おおきな崖のそば、波打ち際で、さざなみの音がする。
「……は、オニダ!!」
「なんだって??」
一人の士族出身の警察官がこう答えた、時代の始まり、まだ明治になってそれほどたたない頃の事、外国からの、西洋から伝来するものはほとんど信仰に近いほどの人々の熱心な興味、関心を集めていた。
「彼は……鬼だ!!!」

「鬼!!!なんだって??何かと思えば鬼か??」
「何?鬼とは何だ!!!」

初めに発見した男は、そう問われては、何かを返さなければ、この罪人の真っ赤なウソにからめとられて、自分も罪人になる事もあるかもしれないと思った、なにせこの罪人ときたら、最初に起こした盗みのつみより、その後逃走をして、嘘に嘘を重ねた罪、その数二十幾つ、余程嘘のうまい人間に違いない、焦りに焦った男はこう答えた。
 
「鬼とは、角が生えているものだ、鬼とは、嘘をつく者の事だ、西洋の言葉で、こういう」
「何!!彼は鬼か」
「鬼だ、オニダ!!」

そうしてひとつの赤い岩に“鬼”という名前がついて、その後の人々の中で、妖怪“オニ”と認識された。オニごっこもこれを由来に始まり、初めに“何!!彼は鬼か!!”と呼んだ人は、のちに、赤面症と診断され、自分が鬼のような見た目になるが、しかし、その後丁度、海外から人が入ってきた、つまり明治の文明開化の真っただ中であり、彼は異人とすら間違われたが、が、しかし彼は明確にそれを指摘して、こういった。

「“俺こそがオニをつくったのだ”」

人工音声時をめぐる

人工音声時をめぐる

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-01-02

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