金網

早朝の光を浴びてまっさらにきらめいている蜘蛛の巣は罠

埋めたのがタネではなくてホネなので何も生えない庭園の隅

花の色を名付けなければいくらでも増えてゆくかな花の数だけ

帰れなくなった蜂だけ集まってじっと死を待つ場所があります

アゲハ蝶をくわえてわめくヒヨドリの昼を過ぎても寝起きの頭

突風に流されながら飛んでいるモンシロチョウが見えなくなった

ハトを食うカラスは黒い正装で行うことに罪は問えない

青空に飛行機雲が線を引きまるで愚かな異議申し立て

繰り返し放送される迷い子の名前を誰も聞き取れなくて

金網にからみつく蛇金網は高く続いてわたしを越えて

ふた首のトカゲが道に迷わずにわたしの先を進んでいった

ガラス戸と網戸の隙を這っている虫の脱出までを見守る

強い風が窓を鳴らして人形が思いがけない棚で倒れて

レンコンの穴に隠れているような神様ならば信仰したい

満月を内から破り青黒い蛇が地球を呑みこみにくる

金網

金網

「第2回石井僚一短歌賞」に応募した短歌15首です。

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-30

Copyrighted
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