金網
早朝の光を浴びてまっさらにきらめいている蜘蛛の巣は罠
埋めたのがタネではなくてホネなので何も生えない庭園の隅
花の色を名付けなければいくらでも増えてゆくかな花の数だけ
帰れなくなった蜂だけ集まってじっと死を待つ場所があります
アゲハ蝶をくわえてわめくヒヨドリの昼を過ぎても寝起きの頭
突風に流されながら飛んでいるモンシロチョウが見えなくなった
ハトを食うカラスは黒い正装で行うことに罪は問えない
青空に飛行機雲が線を引きまるで愚かな異議申し立て
繰り返し放送される迷い子の名前を誰も聞き取れなくて
金網にからみつく蛇金網は高く続いてわたしを越えて
ふた首のトカゲが道に迷わずにわたしの先を進んでいった
ガラス戸と網戸の隙を這っている虫の脱出までを見守る
強い風が窓を鳴らして人形が思いがけない棚で倒れて
レンコンの穴に隠れているような神様ならば信仰したい
満月を内から破り青黒い蛇が地球を呑みこみにくる
金網