冬の海で思うことは

あおい はる

 双子が冬の浜辺で砂の城をつくっているあいだに、ぼくの肉体から昇華されたものの正体をぼくは考えているのだけれどわからずに、二十四時になったら日付が変わることを知っているだけのぼくは、どうしたら全うな人間になれるのかを双子がおしえてくれるものだと思っている。月はいつのまにか太陽に喰われた。
 学生の頃に恋をした相手が同性の先生だったけれど気にしていない。双子は女の双子で、先日七才になった。姉の子どもだが、母親である姉よりも叔父であるぼくに懐いている。おそろいの紺色のスカートが汚れることも厭わず、砂を掘り返し、海水とあわせて城の土台をかためてゆく。十六時の海は寒い。突っ立っているだけのぼくは海風に晒され、何気なく触れた髪が少しべたつく。風に舞う潮のせいか。姉が双子の父親と別れてからすぐ同性の恋人を連れてきたとき、姉弟で性癖というのは似るのだろうかと思った。
「わたしたちは終わらない旅をしている」
 そう言ったのは姉だったか、実家の近所で喫茶店を営んでいる祖母だったか忘れてしまったが、はじめてきいたときはよく意味が分からなかった。姉も祖母も、とつぜんそういうことを言い出すタイプのひとだった。十六時の空はまだ明るい。しかし夜になれば、世界は闇に包まれる。月を失った人類は未来が潰えたのと同等であるとテレビのなかでなにかの専門家のひとが話していて、ふうん、と思った。自分が人類の行く末とやらに然して興味がないことには驚かなかったし、月を失くしても今を生きているのだからいいだろうと考えていた。それよりもそのときに飲んでいたコーヒーはとても美味しかったのだが、豆をくれたのが豆をくれた次の日に別れた恋人だったことを思ってもこれといって憂鬱になることもなかった。ものに罪はないのだ。
 カモメが鳴く。
 双子のつくる城は童話のなかにでてくるような立派なものではないがちゃんと城のかたちをしている、誰がどう見ても城とわかるもので、生まれたときからやわらかく薄い赤茶けた色の髪が風に靡き、顔に纏わりつくのを煩わしそうに片手で除きながら、双子は砂の城と向き合っている。
 暇だ。
 暇だからか、どうでもいいこと考えてても損した気分にならないよな、と思いながら、スニーカーの先端にわずかに付着した砂をじっと見つめている。

冬の海で思うことは

冬の海で思うことは

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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