第8話-15

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 自宅へ到着したビザン。

 すでに彼と父が住んでいる家は半分崩壊して、凝固した水分子が普通の水へ還元されていた。

 父はベッドの軽い水分子から抜け出し、水中を這いずり回っていた。

「父さん、逃げるよ」

 ただそれだけ言うと父の骨ばった身体を抱きかかえて逃げようとした。

 だが父は突然暴れだした。

「行かない、まだ行かない」

 外ではまだ嫌いが爆発を続け、凝固した水分子を機械の巨人たちは破壊していく。

 外を横目で一瞥してから、水を通じて叫ぶ。

「逃げるんだよ。ここに居たら死んじゃうんだよ」

 叫んで父を連れ出そうとするが、脳の病気の筋力も低下しているはずの父の力は、ビザンを引きずるほどの力だ。

「あれを、あれを持っていかねばならんのだ。あれがなければ、水の意思は体現できぬ」

 また頭がおかしくなったのか、とビザンが強引に父の腕を引くが、その手をすり抜けるように父は家の中に入っていき、自分が人生で集めてきた、ビザンにはガラクタとしか思えない物が置かれている棚から、銀色で正方形の箱を手にした。

「そんなの要らないだよ、早く逃げなきゃ」

 イライラしながら箱を捨てようとビザンが銀色の正方形へ手を伸ばした刹那、箱から一瞬、波紋が広がったと思った時、外で異変が起こった。

 街を破壊する巨人たち、首都を攻撃する機雷、水面へ選手を突き刺す軍艦。それらがまたたく間に錆びついて動きを停止してしまった。

 外の急変に呆然とするビザンは、とりあえず銀色の正方形を抱える父を抱え、家を泳ぎ、逃げていく。

 避難先は議会場である。

第8話-16へ続く

第8話-15

第8話-15

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-24

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