自由の囚われ人

田園のその子ら

7/15 16:30
本来の下校する道から大分離れた、田園を割くように作られた畦道を、アイスを食べながらゆっくり歩く。
駄菓子屋のおばちゃんの餞別、いつもありがとう、好きなのを持って行っていいよと言われて、まだ遠慮に慣れない僕らは、小走りにアイスが入っている冷たい箱に急いだ。箱を開けた時の涼さを目当てに、四人全員箱を覗き込んで、それぞれのアイスを手に取り、おばちゃんにさよならの挨拶をして店を出てすぐの畦道。
金曜日だけは、みんなでこの道を通る。僕の家に行くためだ。
「今日の議題はどうする?」
一番早く食べ終わったトンちゃんは、必死にアイスを食べる僕らをよそに話し始めた。
「今日の議題は考えてあるよ」
と一言。トンちゃんは残念そうに口を尖らせて、
「なんだよー、議題決めるのが一番好きなのに。ちぇ」
議題についての議論はいつも長くなる。だけど今日は話したいことがあるんだ。
「で、なに、議題にしたいことって。」
急かすトンちゃんも気にせずアイスを平らげてから、小さな声で答える。
「美代子ちゃんとどうすればもっと仲良くなれるかについて」

田の間を、子供らの笑い声がゆっくりと切ってゆく。
美しい夏の昼下がりであった。

自由の囚われ人

自由の囚われ人

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-06

CC BY
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