初恋の人

笑った声
楽しそうにはしゃぐ姿
好きなことに取り組む真剣な顔

年々淡くなっていく記憶の波にも埋もれることなく
残ったまま

あの人は
普段から人の事をよく観ていた

他者の心に入っていくのが上手かった

冗談ばかり言って周囲を和ませ
人を傷つけるようなことは絶対しない
綺麗な心の持ち主だった

悩む時は
決まって人の気持ちを中心に考えている

誰にも言えない憂いを
真っ先に気付いて気にかけてくれた
最初の人が彼だった

まっすぐな目は眩しく
いつもキラキラしていて
なぜだか直視できない日もあって
見つめられるのは照れくさく嬉しい
だけど
たまに恐かった
隠しておきたいものまで見透かされそうで

何かに気付いているのに問い詰めたりしない
こちらの気持ちに寄り添ってくれる空気感

心地良かった
この人が好きだと思った

アイスや肉まんを分け合って食べた
普段は別方向の帰宅道
たまに同じ方向の電車に乗って帰った

他の人にはしない悩み相談をしてくれた
頼られているのが嬉しかった

あの頃私は自分のことしか見えてなくて
何もしてあげられなかった

ごめんね
謝ってもあの頃はもう戻らないけど…

人の愛し方なんて知らなくて
いまだに上手に優しくできないけど

貴方に出会えたおかげで
笑い方と穏やかな接し方は身についた


二度と会うことはないだろうけど

運良く再会できることがあったら

あの時話せなかったことをたくさん話して

あの頃より成長した自分を見せたい

今ならきっと
逃げずに向き合えるから

あの頃よりは強くなれたんだよ
ほんの少しだけどね

あの時手を伸ばせなかった
怯えてばかりで足がすくんだ

今なら一歩前へ踏み出せる
後悔が背中を押すから


最高の友達になりたい
貴方が望んでくれるのならば

初恋の人

初恋の人

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-19

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