届ける気のない手紙
どうしても伝えたいことがあったのに
こうして書き始めると言葉が出てこない
言いたいことがたくさんあるのに
何から書こう
まずはそう
「ありがとうございます」から
貴方のおかげで
つらい時期をやり過ごせた
もうここから消えてしまいたいくらい
追いつめられていた夏
久しぶりに貴方と会って少し話した
他愛ない話をして
笑顔を見せてくれて
気遣ってくれて
普通にさよならした
それだけなのに
そのことが救いになった
友達とも言えない遠い距離
もどかしくて切ないけど
これが相応なのだとも思う
貴方はとても素敵な人
私にはとても手が届かない
触れることさえ叶わない
わきまえている
何も望んでいない
だから
いつまでもそのままで…
素敵な貴方でいてほしい
私がこんな風に思っていることを知らない貴方
どうか一生気付かないで
また会えたら
穏やかな時間を過ごせますよう
貴方の笑顔さえ見られれば心は落ち着く
それだけで満たされることを知れた私は
永遠に飢えで苦しむのだとしても
果てしない幸せ者です
届ける気のない手紙