飾らない笑顔の君へ この歌を
雨音のする窓の外をカーテン越しに見つめた
今日は何曜日だっけ?
ああ、僕を連れ出してくれた君は今どこにいる?
テレビ画面の中に立ちはだかる主人公
ソファーからずり落ちた僕は世界の端役
この手が届いたリモコンの赤いボタン
ヒーローは勝利の雄叫びを上げ損ねた
「ざまあみろ」
君の要らないものが僕のホシイモノ
僕の嫌いなものが君の好きなものだった
もどかしいって言葉はきっと
この数か月のためにあった
胸の痛みが嘘じゃないなら
まだ僕が僕であることに意味があるなら
チェックのレインコートは確か僕のじゃない
朝顔柄の浴衣も、そう
取っ手のとれたマグカップは次の月曜に不燃ごみ
水面に浮かんだ金魚 そっとすくい上げ
靴箱に鼻緒の切れた下駄 神社へのあぜ道
ここで出会ってここへ還る
これは涙じゃない 傘を忘れたせいだ
「さよなら」
でくのぼうの僕と才能まみれの君
すっぽんはね月に本気で恋しちゃいけない
微笑む君は夜店のように
きらびやかじゃなかったけれど
思い起こす度なんでだろ
僕はやっぱり脆い人間だったと知るんだ
奪い返してよ 君の残した忘れ物
作り笑顔の僕のほほ
固く握った拳でぶん殴って
いつまで待っても やまない雨とため息
スマホの充電は満タンなまま
今、約束の十一時から三分と
半年が過ぎた 分かってるってば
「 」
手を伸ばす君が大嫌いだった
万年エイプリルフールってもはや病
やるせないって言葉はきっと
僕らを繋ぐためにあった
あの日の涙が夢じゃないなら
もう一度、振り返った先に君を
飾らない笑顔の君へ この歌を