第8話-13
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ティーフェ族議会は新たにジュヴィラ種族元首となったデルガイア首相と、対話による事態の解決を模索した。
デルガイア首相は、ジュヴィラ人の中にあり名家として栄え、その血族からは実に多くの政治家、財界人を排出し、デルガイア自身も史上最年少の人間の年齢に換算すると34歳、ジュヴィラ人の年齢で3400歳の時にバンダイン党の議員となった。多くの政策を党の若手議員としては異例というほど提出し、それがジュヴィラ人の政治方針へ繁栄されたこともあり、同期や若手議員をまとめ派閥を形成していく。
議員とは時勢に乗るのが常。大物議員たちがデルガイア議員の派閥へ参加するなど、派閥はみるみる巨大化した。
さらにその勢いは軍部へも拡大する。政治と軍事の癒着を好まなかったバスガリーガ前首相の政治方針とは裏腹に、軍部の上層部と癒着したことで、武力を手にしたのである。
その力はさらに財界へも及び、ジュヴィラ人版図でも有数の巨大企業が加盟する経済委員会ともつながりを持ち、まさしく今回の事変は起こるべきして起こったと言ってもかごんではない事変であり、クーデターの混乱はまたたく間に収束した。これもまたデルガイア首相がどれほどの権力を手にしていたかを表すこととなった。
ティーフェ議会がデルガイア首相と接触したのは、ジュヴィラ事変が起こってから地球時間で4日目のことである。
水で形成された60メートルの機械生命体のデルガイア首相は、しげしげと周囲を回遊するティーフェ族の議員たちを見据えた。
「デルガイア首相。前首相にもお話しておりますが、現在、我が宙域へ行っている攻撃行動を直ちに停止していただきたい。これは両種族の有効的な平和解決への最後の未知です。どうかご理解いただきたい」
ティーフェ族議会議長デガタの頭が敬々しく下げられた。
その時である。蒼白に色を変えたティーフェ族の若者が議会場へ高速で泳いで入るなり、議長の耳元へ水流を流し込んだ
「首相どういうことです。大使を、ビフォーラ大使が帰国したとは」
若者の言葉に驚きを持って議長は水のホログラムに叫んだ。議長は内心でそれが何を意味するのかを理解していた。
「お分かりでしょう、議長」
議会に居合わせたビザンは慌てて議会場を出た。デルガイア首相が何を意図して微笑んだのかを、すぐに察したからである。
第8話-14へ続く
第8話-13