冬空見上げて

乾いた風。底冷えする空気。雪でも降り出してきそうな匂いがした。

もう数ヶ月くらい、あの人の顔を見とらん。

会う理由を探せばいくつか見つかるけど、あえて会いに行かんようにしとった。
想いが大きくならんように。

やけど、会う会わないは関係ないんやね。
一度好きになったら、心にはその人の残像が残り続ける。

もう絶対恋なんかしんと思っとったのに……。
頑なな意思なんて軽々無視して芽生えとった。
刈っても刈ってもキリなく生えてくる雑草みたいや。
枯らした方がいいのに。そうするべきなのに。
枯らす方法が分からん。

もうどうしようもない。

好きやね。どう考えてもそれ一択。

きっと、自分の中で都合よく美化したあの人に惚れとるって部分もあるんかもしれん。

それでも。

叶わんことは百も承知。
思うことだけは許してほしい。

報われることを考えて惹かれたわけやないから。


今日、あの人も頑張っとる。
そう思えば私も頑張れる。

あの人が笑顔になると私も嬉しい。

何年も忘れとったあたたかいもの。
嫉妬と恋の喜びを教えてくれた人。


あの人も冬の匂いをたどっとるんかな。

冬の星はなんでこんなにくっきり綺麗に見えるんやろう。
綺麗すぎて泣けてくるね。

あの星々みたいに、綺麗になりたい。

冬空見上げて

冬空見上げて

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-12

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