求めていた俺 sequel
第五部 「東西学園闘争編」
三十四話 ここから「本編」
「な、なんだよ!? “ 浪速のドッ『チ』ボール大会 ” って!そんな話聞いてねぇ!」
雄馬に掴みかかる寸前の桐生が大声を張り上げる。
「話なら最初っからしとったがなぁ。しっかしまさか、ホンマにあの国民的スポーツのドッジボールと間違えるとはノォ」
クスクスと、笑みがこぼれるのを隠す気も見せない雄馬。
「くそっ、たった一字違いだったとは・・!それで? その『ドッチボール』っていうのはどんなスポーツなの?」
今度は学級委員の香月あずさが質問した。
「ルールはシンプルや」
雄馬は遠くにある一点を指差した。 香月はその方向を目で追って見る。そこに見えるのは、PSJの中心部『エドエリア』にそびえる巨大な人口の岩山の頂上だった。本来ならば、超人気アトラクション『ギリギリロッククライミング』に使われる岩山でサイズは横浜ランドマークタワーほど。ちなみに『ギリギリロッククライミング』とは “命綱なし” で岩壁を根性だけでよじ登り、頂上を目指すというスリル満点のアトラクションである。(週に1人は死人が出るとか)
かなり危険なアトラクションであるため、ただ普通に料金を支払えば参加出来るわけではない。抽選で寄せ集められた一握りの猛者だけが挑戦できるのだ。当然、命懸けのハイリスクなアトラクションだけあって『制限時間内に頂上まで登る事が出来たものは、PSJ無料パークチケット一年分プレゼント』 という豪華特典も付いている。 こんなイベントを一般公開してるのは世界でもPSJだけで、法的にもかなり際どいゾーンじゃな〜い?マジヤバめ。(現代JK風)
「あの岩山のてっぺんをよく見てみるんや。約二畳分の面積の平地の真ん中あたりに小さな『台座』がひとつあるのが見えるやろ?あの台座の上に『所定のモノ』を運んで置く。それを誰よりも早く成し遂げたヤツのチームが勝利や。な?シンプルやろ?」
「それで?その『所定のモノ』ってのはなんなのよ?」
香月が片方の手を腰に当てながら雄馬にたずねる。
「いま見せちゃるで」
すると雄馬が近くにいる火天焔学園選手団の1人、『熊野プサーン』に目配せをする。
皮膚からは茶色い体毛がふさふさと生えていて、柄が全く無く真っ赤な色の半袖シャツ一枚だけを着用している男である。外見は、人間というよりもまるで野生動物そのものだ。
「これだっプー」
手持ちの壺から一個の『玉』を取り出す熊野。サイズは野球ボールより一回り大きい程度で、やや光沢がかかった水色の綺麗な『玉』だ。
「これが、『ドッチボール』だップ!!」
『ドッチボール』と呼ばれる玉を香月に手渡す熊野。
「はぇ〜綺麗な色してんなー」
舐め回すようにまじまじと玉を観察する香月。
俺にも見せろと、桐生達他の聖川東学園選手団も香月の近くにガヤガヤと集まってくる。
そこに雄馬が再びゲームの解説の続きを挟んだ。
「その玉は、熊野が作ったレプリカやで。本物の『ドッチボール』は広いパーク内のどこかに1つ隠されておる。必ずしもアトラクション施設の中にあるとは限らんし、もしかしたら道端にちょこんと転がってる可能性もなきにしもあらずや。どんな手段を用いてもええ。とにかく最終的に玉を『エドエリア』の岩山の頂上にある台座の上に置いたヤツのチームが勝ちやねん」
「わかったわ、ご説明ありがとう。みんな、この勝負絶対勝つわよ!聖川東学園は私たちが守るの!!」
選手団副団長の香月が聖川東学園チームのメンバー達を鼓舞する。
「あ、あのー・・盛り上がってるとこ悪いんだけど・・・。」
これまで蚊帳の外だったナヨナヨ系のメガネ少年が自信なさげに片手を挙げながら、団結力を固めた香月達の中に割り込んで来た。
「一応、リーダーはぼ、僕・・だから・・そこんとこ忘れないで・・」
その少年とは、聖川東学園の偉大なる生徒会長にして、今は聖川東学園選手団長を務める『砦外みくた』である。
聖川東学園vs火天焔学園。 東西を代表する両学園の意地とプライドをかけた大勝負が今、始まる・・・!
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