恋愛不適合者なり!

それまでは、自分は彼氏に対して束縛とかしん淡白で冷静なタイプやと思っとった。

それは、それまで、心の底見せる覚悟で人と向き合っとらんかったでかもしれん。人と生の感情ぶつけ合うなんて、やや。こわいし。そう思っとった。今もそう。

唯一、自分が壊れてまうほどの恋を、経験した。
二十歳の時。

話が面白くて頭のいい人。かっこよかったし気遣い上手。女性はもちろん、同性や年配の方々にも人気があった。人たらしってこういう人のこと言うんやろなーと思ったほど。もちろん全部褒め言葉。

元恋人の視点抜きにしても、彼は素晴らしい人間やったと思う。

彼と出会う前にも人を好きになったことはあるけど、色々あって深く付き合うまでにはならんかった。自分の本音を語る機会もそうそうなく。

彼は、私をありのまま居させる天才やった。

他の人の前では笑顔の仮面が取れんかったけど、彼の前ではそんなの投げ捨ててもいい。

汚い感情も受け止めてくれた。
泣いたら優しく抱きしめてくれた。
そこが大きかったんやと思う。

そういう異性は初めてやった。
こんな人がおるんやなーと、彼の腕の中で安堵した。
欲しかった形の愛情。
ただ受け止めてほしい。

思いを叶えてくれた相手。
依存心と執着を膨らませるのには充分すぎた。

バイト先で毎日のように会っていたし、彼はマメに会ってくれた。連絡をくれた。
それでも足りず、もっともっとと欲しがってまった。
片時も離れたくなかった。

好きという感情が深くなればなるほど、自分の我儘を抑えとれんくなった。

……甘え過ぎた。

バイト先の店の、彼は社員。
学生の私より忙しく大変やったはず。
しょっちゅう眠いと言っとった。
今なら容易く想像できるのに、あの頃は相手の立場とか全く考えらん、私はエゴの塊やった。

結果、失った。

自業自得。優しさって当たり前のもんやない。こっちもちゃんと相手を大切にしんと消えてってまう儚いもの。
今でこそそういったことが解るけど、彼が居なくなってしばらく経った後も、状況が受け入れられずただただ苦しかった。

あの時間はたしかにあったのに。
もうない。

人を好きになるのはこわい。
相手のせいやない。
自分が悪い。
自分が嫌になるから。
こんな自分はもういやや。

自分の限度を知った。
恋とか結婚って美談で語られとることが多いけど、そういう風に私はなれん。憧れはするけど。

恋にも適性がある。
私は不適性。うん。

結婚も、感情のまま突っ走ったわけやなく、頭で考えて決めた。
この人となら汚い自分を晒さず安定した気持ちで付き合える。そう思って。
最低かな?人には否定されるやろうけど、それが自分。
どう頑張っても、これが限界やった。

恋は、自分を成長させると同時に、自分っていう人間の器を測れる機会でもあるんやと、個人的には思う。

心の奥深くまで晒して四六時中熱に染まるほど誰かを好きになろうなんて思えん。
結婚しとるで恋愛は終わりやけどさ。
それもそれで、ちょっと切ない。

恋愛不適合者なり!

恋愛不適合者なり!

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-06

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