レイズと伝説の龍

みなさん初めまして。
オイスター改です。
本日は、読んでいただき、ありがとうございます。
この作品は、構成にあまり時間をかけない予定だったものです。
思い浮かんだものをメモ帳に書いていたのですが・・・。
書いているうちに、じっくりと練ってみたいと思い、
かなり時間をかけて練り上げたストーリーになっています。

プロローグ

昔々、まだ龍というものが地上にいた頃のお話。
一匹の龍が人間をさらっていきました。
それが、すべての始まりでした・・・。


怒った人間は龍に戦争を仕掛け、人龍大戦がはじまりました。
その戦争は長い間続きました。


やがて、500年後。
一人の男によって、戦争が終結しました。
その男の名は、ヘラクレス・レイズ。


戦争は終結したものの、この戦いでは多くの血が流れすぎました。
空や川は赤く染まり、大地は汚れました。


そこで、ヘラクルスと龍の長「ラドン」で掟を作りました。
もう二度とこのような事が起こらないように、と。


壱、互いにもう戦争をしないこと。
弐、互いの領地は不可侵とする。
参、互いに一切の関係を断つこと。
四、この掟は無期限であること。


これらの掟は1000年経った今でも続いていました・・・。




              ♦




手前においてあったレターセットがカサカサと音を立てる。
「よし、書き終わった・・・。」


この手紙を書くのに1時間もかかった。
なんせ、あの人に手紙を書くのは久しぶりだったものだから。


《親愛なるサリー様へ》

いかがお過ごしでしょうか?
私は相変わらず書庫にこもり、本に埋もれております。
さて、先日本棚の整理をしていたところ、懐かしいものを見つけました。
『レイズと伝説の龍』という本です。
覚えておいでですか?
昔、よく私に聞かせてくれていましたよね。
あの頃はとても楽しかったです。
今度、久しぶりにそちらに伺わせていただきます。
そこで、思い出話に花を咲かせましょう!

                 《貴方の親友、リーマックより》


もう一度中身を見直し、おかしなところがないか確認をした。
「よし、大丈夫だ。」
それから私は手紙をポストに投函してきた。


もう4月になるというのに、少し肌寒かった。
暖かな春の陽気などなく、花もまだ咲いてはいない。
私は足早に家に戻り、コーヒーをすする。
外の景色は、どうも退屈だ。
汽車が来て、行き、また汽車が来て、行き・・・。


ときどき通りかかる馬車も、どこか味気ない。
ああ、暇で仕方がない・・・。


コンコン。

誰かが家の戸をノックしている。
おおよそ2時のパンだろう。

私はドアのほうへ駆け寄り、戸を開ける。

そこには、やせ細った少年がパンの籠をもって立っていた。

彼の名はスラー。
郊外のスラム街で暮らしている。
父親は彼が幼いころに他界。
外に、兄が二人と、姉が一人いたらしい。
が、兄は二人とも軍隊に入れられ、姉は工場で働いて倒れたらしい。
結局、今は母親と二人暮らしだという。


こんな小さな少年が働かなくてはいけないなんて、なんて世の中だろう・・・。


「こんにちは、リーマックさん。
 今日の分のパンです。」
「いつもありがとうね。
 これは、ほんの気持ちだよ。」


私は、彼への同情だかわからないが、チップを数枚渡した。
代金に加えて、だ。


「そんな、受け取れませんよ!
 代金だけで大丈夫です!」
「無理をしなくていいんだよ。
 君のことだから、きっとお母さんに全額渡しているだろう?
 たまには自分のために使いなさい?」


そう言って、私は戸を閉めた。
いささか強引なような気がするが、まあいい。
どうしても、ヨワヨワしい彼を見ていられなかったのだ。




一か月後、リーマックさんから手紙が返ってきた。


《親愛なるリーマック様》

レイホーン、お手紙をありがとう!
君が来てくれることをうれしく思うよ!
そういえば、あの本を見つけたと言っていたね。
もしよければ、あの本を持ってきてくれるかい?
そのことで少しお話があるんだ。
君が来るのを待っているよ!

        《貴方の親友 サリーより》


手紙を読んで、私ははっとした。
どうやら、サリーさんの家に行くのが早まったようだ。
そうと決まれば、善は急げ。
行動を起こさなければ。


私は近くのサルジオ・セントラル駅に行き、汽車のチケットをもらった。
長期滞在になるだろうから、片道分しか買っていない。


出発は明日の朝だ。
すぐに荷造りを済ませなければいけない。


私はトランクを取り出し、中に荷物を詰めていく。
羽ペン、ガロン、タオルなど・・・。
もちろん、例の本を忘れずに。


それと、玄関に張り紙をしておかなければ。


『しばらく留守にします。
 いつも来てくださるパン屋さん、新聞屋さん、
 ありがとうございます。
 私の分まで、誰かに渡してあげてください』


とまあ、こんな感じでいいだろうか?
こんな物騒な世の中だ。
貧困で困っている人など、大勢いるだろう。
そんな人たちへのせめてもの救いになればと思う。


明日は朝早い。
今日はもう寝よう。



                ♦


大きな汽笛を鳴らして、汽車は走り出した。
私は、今汽車に乗っている。
同じコンパートメントには誰も乗ってこない。
それも当然のことだろう。
私が『相席禁止』と張り紙を張っているのだから。


私が相席してもらいたくないのには、理由があった。
それは私の持つ一冊の本にある。


『レイズと伝説の龍』を読み返しているのだ。
何せ、この本のことでサリーさんがわざわざ私を呼んだのだから。
ついでに、私が聞きたいことをまとめておきたかったのだ。


普段なら、周りの景色にも目を取られただろう。
実際、隣のコンパートメントから花々の香りがしてきた。
外にはきっと美しい花畑があるのだろう。
だが、今の私はそんなことを気にしていない。


汽車を降りると、サルジオ州よりも暖かかった。
あの寒さが嘘のような陽気だ。
どうやらこちらは完全に春になったらしい。


さて、ここからサリーさんの家まではだいたい1時間かかる。
今からだと、ちょうど正午ごろに到着するだろう。


私は一人、一本道を歩き始めた。
途中でこの国を縦断しているという旅人とすれ違ったりした。
が、基本は一人だった。
それほど、ここが田舎なのだろう。


なんと新鮮な空気なのだろう。
こんなのびのびと出来たのはいつぶりだろうか?
たまには、こういうこともいいだろう。
汽車の煙やススで薄汚れ、人混みのすごい都会から離れ、田舎へ一人旅。
旅というほどの物でもないが。



しばらく行くと、大きな風車が見えてきた。
その下にあるのがサリーさんの家だ。
すぐそばまで行くとわかるが、周りには色とりどりな花が咲いている。
春の代表的な花『メリダ』や、不死の雫を作る『ピネラ』。
どこかにあるという和の国から仕入れた『ツバキ』という花など。
珍しい花から見知った花までが咲き乱れている。


この花は誰が管理しているのだろう?
まさかこの花全部をサリーさんが管理しているということはないだろう。
聞きたいことがまた増えてしまった。


呼び鈴を鳴らすと、白髪で初老ぐらいに見える男性が出てきた。
彼がサリーさんだ。


「よく来てくれたね!
 さあ、長旅疲れただろう?
 まだ昼だが、今日はゆっくりと休みなさい?」
「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます!」


すごく助かる。
はっきり言って、すごく疲れていたのだ。
昼間だというのに、ぐっすりと眠れそうだ。
明日は必ず、話を聞こう・・・・・。


私の意識は、眠りの海へ沈んでいった。

レイズと伝説の龍

読んでいただき、ありがとうございました。

この作品を作るにあたって、時代はどうするかと考えたとき、
『龍』が存在していた世界ということで、世界線は異世界になります。

ただ、この語り部となっている『私』と『リーマックさん』が生きている時代は
現実世界に近い世界であり、わかりやすいものだと、
『ハウルの動く城』に近い感じかもしれません。

作品の流れ的には、『本』の中の話がメインになるんですが、
ときどき今回のように語り部が出てくると思います。

それでは、次回もまたよろしくお願いします。

レイズと伝説の龍

リーマックはある日、一冊の本を見つける。 その名も『レイズと伝説の龍』。 小さいころにサリーがよく読み聞かせてくれていた本だ。 サリーはこの本について話したいことがあるという。 そんな彼から語られたのは、驚くべきことだった。 『この本の話は実在している』と。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-12-06

CC BY-NC
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