善をなす

どえ 作

ちょうど一週間前、あなたは人のため、家のためにこの世を去りました。それは素晴らしく誇らかなことでありました。

小さな女の子と私は公園でくだらない世間話をしていました。そろそろ帰りたかったのですが、小さな女の子の話は全く止まりませんので、苦笑いをしながら時計をちらっと見るしかできませんでした。
夕陽が少し薄くなってきた時間帯に私はやっと抜け出し、我が家に帰りました。家に帰るとすぐに夕飯の支度はじめて、あの人の帰りを待ちます。
今日は緑色のネクタイを締めて仕事に向かいらっしゃったのでサラダを多めに作って待っていました。私だけのルールで、これはあの人には内緒にしています。
家の玄関を開ける音が耳に聞こえ、私は急いで玄関に向かいます。あの人の顔を確認すると私は毎日こう言います。
「お帰りなさい。今日もお仕事お疲れ様でした」
あの人は私に無言でバッグを渡し、疲れた顔をしながら家の中に消えて行きました。私はあの人が脱がれた靴を整え、バッグを部屋に置き、キッチンに向かいました。今日もあの人は相当疲れているようです。いつもお仕事を頑張り、時に家に帰ってこれなくなるほどの忙しさである彼には感謝の気持ちでしかありません。
あの人は朱色のネクタイを外し、ジャケット脱いでソファに座りました。

「今日は準備にたくさんの時間を使いました。あなたのお口に合えば良いですけど」

私は食卓に夕食を並べました。いつもより少し豪華でありました。いつもより少し多く作りました。いつもより少し栄養を入れました。

あの人は、沢山食べてくれました。きっとお腹がすいていたのでしょう。美味しそうに食べているとは言い難いですが、沢山食べてくれました。

あの人はその後、疲れてお風呂にも入らずそのまま眠りにつきました。相当お仕事を頑張ってくれているようです。私はそっと緑色の毛布をかけ、家を出ました。


公園につくと小さな女の子が私の元に走って飛びついてきました。私は優しく抱きしめ、
「今まで辛い思いをさせてごめんね」
と彼女の朱色の頬を撫でながら囁きました。
彼女は何も言わずただ私から決して離れないように強く、強く抱き締めていました。

私は自身の吐いた息ただずっと眺め続けていました。

「これから頑張ってね」
私はそう言ってまた強く抱き締めました。

善をなす

善をなす

短編を書いてみました

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2018-12-01

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