虚無

虚無

窓の外は暗くて、私の目の前はゲームなどのエフェクトで明るくなっている。これが私の生活で何も取り柄がない高校三年生。たいしてうまくもないゲームを自分勝手にやり、できるはずもないギターを買って弾いてみるが、目覚まし時計の甲高い嫌な音のように聞こえる。才能もない、なにもない。こんな生活に飽きが来て、新しいものに挑戦しようと私は兄の煙草を盗み、一人で夜の外を歩く。煙草にライターを近づけて吸ってみる。初めての体験で胸が躍った。が、すぐにこれだけか、という状態になる。なぜ?私はこんなにも自分を楽しめさせないのだろうか。

虚無。多分これが今一番私のことを指しているような気がする。楽しくない。生きている意味がないのだろうか
私はそう考えたが、やっぱり死ぬのは怖いし、もし目の前に生きる道か死ぬ道を選ぶとしたら生きる道を確実に選ぶだろう。死に対する怖さは人並みぐらいにはある。ただなんだこの虚無感は、胸にこびりついて洗っても洗ってもとれない台所の汚れのように落ちない。取れない。

この胸にこびりついてる虚無感は本当は触れるんじゃないだろうか?胸の中にある黒い部分を僕は触った。指先に黒い虚無感が付く、どうなるわけでもないが、これが虚無だと思った。

虚無

虚無

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-26

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