平成三十年版 卒業

黒猫

  1. 序章 『昭和二十年』
  2. 第一章 小林家の人々
  3. 第二章 大東亜戦争って何?
  4. 第三章 卒業制作はみんな大好き『憲法第九条』
  5. 第四章 舞の悩みごと
  6. 第五章 滝川大先生の『日本近代史、本当のところ』(その1)
  7. 第六章 滝川大先生の『日本近代史、本当のところ』(その2)
  8. 第七章 諸外国から狙われ続ける日本〜太閤さんも徳川一族も必死に日本を守った
  9. 第八章 睦の現場復帰と卒業式リハーサル
  10. 第九章 君が代特別修練
  11. 第十章 『大東亜戦争』学んで……
  12. 第十一章 大東亜戦争
  13. 第十二章 完成! 『新・憲法第九条』
  14. 最終章 卒業

【凡例】
T :テロップ

【登場人物】
小林 舞……主人公。中学三年生。
滝川 護……舞の同級生。
水野 拓巳……舞の担任。
小林 睦美……舞の母。
小林 珠代……舞の祖母。
小林 修一……舞の叔父。睦の兄。
小林 由美……舞の叔母。
西原……睦美の勤めるPC教室の生徒。
坂谷……睦美の上司。
竹村……舞の中学校の社会科教師。
日野……舞の中学校の音楽教師。

《戦時中の登場人物》
小林 喜一郎……舞の曾祖父。
小林 志津……舞の曾祖母。
小林 君代……舞の大叔母。
小林 祥太郎……舞の大叔父。
小林 幸代……舞の大叔母。
小林 喜代……喜一郎の姉。

【『卒業』について】
私は大東亜戦争(太平洋戦争)はパンドラの箱だと思っていました。
箱を開けると中から魑魅魍魎が、ワンサカ出てくるものだと思い込んでいました。
これは左翼教師や、共産主義者、そしてマスコミが日本悪玉論を散々流布した成果です。
その情報の大元はGHQだったりします。

政治評論家だった三宅久之さんが、大阪のローカル番組で、
いつも左翼思想のパネラーを叱ってらっしゃいました。
「このポン介!」
。。。ポン介の意味は不明なのですが、「大バカもの」というのを和らげた表現だそうです。
ちなみに女子は「ポン子だそうです」
左翼思想の強い時期に見ていたので、私まで怒られている気分でした。
しかも、なぜ叱られているのかまるで分かりませんでした。
ある日、番組で終戦の日にちなんで、三宅さんが靖国神社を案内するという企画がありました。
いつも恐い三宅さんが、遊就館を案内されている時、特攻隊の人たちの写真の前で
特攻の人たちのことを解説されながら、涙されていました。
何も知らなかった私は、不思議で仕方ありませんでした。
なぜ見知らぬ人たちのために涙を流しているのだろう……
と、理由がまるで掴めませんでした。

平成二十四年、震災から一年経過した三月十一日、テレビに映る更地を眺めていると、
なぜだかドキュメンタリーで見た戦後の日本の焼け野原とリンクしました。
リンクした時、ふとある想いが頭を過ぎりました。
「祖父母は、なぜあの若さで死ななければならなかったのか」
それまで、『戦争だったから仕方がない』くらいにしか考えず、真剣に考えたことがありませんでした。
死因は母から聞いていました。
祖父は戦地で病死、祖母は戦後の栄養失調。。。
死因だけではなく、歴史の背景も知りたくなりました。
何冊も、何冊も先の大戦に関する本を読みました。
そして、その年に出来上がったのが『卒業』でした。
この『卒業』の改版も今年で二度目です。

今では、三宅さんが英霊の写真の前で涙された理由が少し分かるようになりました。
私も、英霊を思うと魂が揺さぶられます
この六年の間に東京に仕事の拠点を移したので、靖国神社にも参拝に行きました。
東京で一番最初に訪れた場所です。
三宅さんが解説してくださった英霊の写真も拝見しました。
みなさん凛々しく、心が洗われる心持ちがしました。
戦時中の背景が分かってからは、祖父母に感謝と敬意を抱くようになりました。
祖父母の当時の心持ちを深く考えるようになりました。
その心情を思うと、いつも涙が込み上げます。
同情の涙ではありません。
あの大変な時代に国のために、家族のために必死に生き抜いた祖父母が誇らしく、
やはり祖父母にも魂が揺さぶられる思いがします。
そして祖父母のことを深く考える機会を与えてくださった三宅さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、大東亜戦争はパンドラの箱などではなく、国を思う人々の熱い想い、自己犠牲の美しい心持ち、
家族の愛情などなど、キラキラ輝く宝石箱だということに気が付きました。

是非、本編『卒業』を読んでみてください。
きっとご自身の先祖に対して、私と同じように深く考えることができるかもしれません。

憲法第9条オブジェクトの卒業制作は事実です。私が小六の頃の話です。
判断能力の無い、子供に美しい条項だと極左教師が企画しました。
『卒業』の執筆をし出してからは、9条オブジェクトに対して何か屈辱的な感覚を覚えていたのですが、
今回の改編でその仇を取れた気がします。ここら辺も合わせてご確認いただければと思います。

序章 『昭和二十年』

T「時が熱狂と偏見をやわらげたあかつきには、そのときこそ、正義の女神はその秤を平
衡に保ちながら、過去の賞罰の多くに、そのところを変えることを要求するだろう」
(「パール判決文より」『パール判事の日本無罪論』田中正明著 抜粋)

○パラオ・ペリリュー島
ズタズタになった旧日本兵の屍がそこかしこに転がる。
T「昭和二十年、パラオ・ペリリュー島」
一人の痩せこけた日本兵がこちらに向かってくる。
小林喜一郎(39)、銃を杖代わりにヨロヨロ歩いている。喜一郎の顔は煤で汚れ、軍服も泥
まみれで何カ所も破けている。
喜一郎、ギラリと敵陣を睨み付け、
喜一郎「天皇陛下、万歳! 大日本帝国、万歳!」
と、最後の力を振り絞り疾風の如く敵陣に走り込む。
銃を構える連合軍の兵士たち。
照準器の十字が喜一郎の額に重なる。

○旧小林宅・台所
T「昭和二十年 大阪」
小林喜代(40)と妊娠中の小林 志津(30)、こそこそ話す。
喜代「ほんまに堪忍やで。食糧、中々、手に入らんし、かなんわ」
志津「お義姉さん、気にせんといてください。子供らまだ小さいし、大阪いてるより広島
に帰った方が安全かもしれませんから」
喜代「せやな、せやせや。広島の方が空襲少ないやろうし、いい疎開先になるわ。せや、
頼みに行く間、珠ちゃんら、預かっとこか?」
志津「すぐに置いて貰えるかもしれませんし、迎えに来る汽車賃、勿体ないから連れて帰
りますわ」
喜代「ほんまに、堪忍やで。志津さんのご実家も大変や言うのに。もし、無理やったら、
遠慮せんと帰って来てな。しんどいけど、みんなで協力し合ったらええし」
志津、不安そうに愛想笑いする。

○再びパラオ・ペリリュー島
血まみれで地面に跪く(ひざまずく)喜一郎、晴れ渡る美しい空に手を伸ばす。
喜一郎「志津、珠代、君代、祥太郎……」
連合軍の兵士、銃の引き金を引く。
荒れ果てた大地に崩れ落ちる喜一郎。

○志津の実家・玄関(夕方)
T「昭和二十年 広島・呉市吉浦町」
珠代、君代、祥太郎に菓子を配る志津の母。
子供らの様子を微笑ましく見守る志津。
子供たち、お菓子を頬張って大はしゃぎする。
志津の母「(志津に)ほんまに堪忍やで。うちも、いっぱい、いっぱいで」
志津「分かってる。お義姉さんの手前、戻っといた方が恰好つくし。お父さんとお母さん
に、子供ら見せたかったのもあったし」
と、寂しく微笑む。
志津の母、不安そうに志津を見つめる。

○広島・海岸沿いの山道(夕方)
段々畑が山の斜面を覆い、そのすそ野には海が広がる。
石畳の階段を大荷物を持った志津と子供らが降りてくる。
志津、落ち込んだ様子で階段を降りる。
珠代と君代、はしゃいで追いかけっこしながら階段を降りる。
志津「珠ちゃん、君ちゃん、転ぶで。気ぃ付けや」
志津と手を繋ぐ祥太郎、姉らに追い付こうとヨタヨタしながらも必死で階段を降りる。
志津「祥ちゃんは、慌てんでええからな」
珠代と君代、階段を降りきる。
珠代「(海を指差し)お母さん、見て!」
沈む夕日が瀬戸内海を鮮やかに照らす。
行き交う船、汽笛を鳴らし合う。
キャッキャッ喜ぶ珠代と君代。
志津と祥太郎、ようやく二人に追い付いて一緒に海を眺める。
志津「また、みんなで来ような」
珠代「お父さんも!」
志津「せやな。日本が戦争に勝ったら、みんなで一緒に広島に来ような」
と、堪えていた涙が頬を伝う。
慌てて両手で顔を覆う志津。
君代「どないしたん?」
志津「夕日が眩し過ぎるねん」
珠代、手で庇(ひさし)を作り志津に見せる。
珠代「こうしたら、ええねん」
志津、覆った指の間から珠代を見る。
珠代、庇からおどけた顔を見せる。
志津、クスリと笑い手で庇を作る。
志津「ほんまやな、眩ないわ。賢いな、珠ちゃん」
誇らしげに微笑む珠代。
君代と祥太郎も真似て庇を作る。
夕日に照らされる親子四人。

○新幹線・車内
T「平成二十九年 秋」
小林珠代(81)、小林舞(14)、小林睦(45)、小林修一(48)、小林由実(47)向かい合って談笑
する。
由実「そうや、お義母さん、広島に行ったことあるんちゃうん?」
珠代「えらい昔の話やで」
舞「どんなん、やったん? 聞きたい、聞きたい!」
珠代「そんな、大した話やないがな」
一同、目を輝かせながら珠代の話を待つ。
舞「なあぁー」
と、珠代の服を引っ張る。
珠代「ああ……せやなぁー。あれは夕暮れ時やったわ。汽車が無くなるからって、急いで
駅に向かってたんよ。山道を、みんなでキャッキャッ言いながら降りててん。そしたら、
その内に目の前一面パーっとオレンジ色にキラキラ光る海が目に飛び込んできたんよ。そ
の海を船がゆっくり進みながらボーって汽笛鳴らすんよ」
舞「それって、どこ?」
珠代「呉の吉浦町や」
由実「そこも、寄ってみようや」
修一「え? 時間足りるかな」
と、旅のスケジュール表と睨めっこする。
他の四人はぼんやり、瀬戸内の海に思いを馳せる。

○四人の回想・瀬戸内海(夕方)
沈む夕日が瀬戸内海を鮮やかに照らす。
行き交う二艘の船、汽笛を鳴らし合う。

○広島平和記念資料館・館内
窓から見える原爆ドーム。
込み合う館内。
キノコ雲に覆われた漁村の写真。その下に『原爆投下直後の呉市吉浦町』のプレート。
写真の前で呆然と立ち尽くす小林家の人々。

○新大阪駅・ホーム
乗降客でごった返す。その中に持ちきれない程の荷物を持った小林家の人々の姿もある。
みな楽しげだが、睦だけ落ち込んでいる。
   ×   ×   ×
エレベータ前で、別れを惜しむ小林家の人々。
珠代、睦の手を握り、
珠代「ほんまにありがとうな。睦」
睦「私だけやないよ。お兄ちゃんと、お姉ちゃんの力もあったから実現できてんやん」
と、照れ臭そうに笑う。
由美「むっちゃん、そんなん言うても何も出ぇへんで(珠代に)あ、お義母さん、エレベー
タ来たわ」
エレベータに乗り込む由美と修一。
珠代も続いて、ヨタヨタとエレベータに乗る。
由美「むっちやん、また、遊びに来てな。舞ちゃん、また、明後日な」
舞「うん!」
珠代、由美、修一、二人に手を振る。
舞も手を振って三人を見送る。
溜め息つく、睦。
舞「もう、歳やな」
睦「しんどいんと、ちゃうわ」
舞「またまた、痩せ我慢して」
睦「おばあちゃんに、えらいことしてもうた」
舞「え?」
睦「おばあちゃんの一番大事な思い出、壊してもうた」
と、トボトボ歩き出す。
舞「ちょっ、ちょっと、どういうこと、壊したって」
と、睦の後を追い掛ける。

第一章 小林家の人々

○小林宅(祖母宅)・珠代の部屋
T「平成三十年 春」
燻る線香の煙。
棚に置かれた喜一郎の遺影。
その横に喜一郎の妻、志津の遺影が並ぶ。双方共、白黒の写真で喜一郎は軍服、志津は訪
問着姿で表情が固い。
珠代、水を替え、遺影に手を合わせる。

○同・洗面所
洗面所で入念に歯磨きをする修一。

○同・ベランダ
朝の柔らかな日差しが水槽に差し込み、水面がキラキラ光る。
藻が水槽の中を覆うように浮く。
珠代、水槽に餌をパラパラ入れている。
藻の間をすばしっこく泳いで餌に集るメダカ。
珠代、メダカの様子を嬉しそうに眺める。

○同・キッチン
朝食の準備をする由美。
用意されたおかずを二つの弁当箱に詰める舞。おかずに入った細かいピーマンをよけなが
ら弁当箱に詰めている。
由美「舞ちゃん、何してんのん。おっちゃんまで遅刻するやん」
舞「嫌いや言うてるのに、入れるからやん」
舞の肩越しから弁当箱を覗き込む珠代。
珠代「舞ちゃん、贅沢やなぁ。お婆ちゃんが子供のときは戦争で食べるもん無くてな」
舞「また始まった」
由美「舞ちゃん、大事なことやで」
スーツに着替えた修一がテーブルにつく。
修一「時代が違うねんから、ええやん」
由美「時代が変わっても、食べもんは大事にせな。な、お義母さん」
強ばった表情で頷く珠代。
舞「個性やん。選べるだけ食べもんあり余ってるねんから、ええやん」
修一「そうや、そうや。ピーマン食わんでも生きていける」
悔しそうに舞と修一を睨む珠代。
由美「個性は関係ない! バランス良く栄養摂らな。な、お義母さん」
珠代「あんたら終い(しまい)にバチあたるわ!」
怒って自室に戻る珠代。
由美「何で、そんな言い方しかできひんのん」
舞「だって、おばちゃんがピーマン入れるからー」
自室から叫ぶ珠代。
珠代の声「由美さん、ピーマン取っといてなぁ」
由美「はーい」
舞「(珠代の部屋に向かって)おばあちゃん、当てつけがましいねん!」
由美「舞ちゃん! いつまでも子供みたいなこと言うとったら、あかんで。友達に笑われ
るよ」
膨れっ面の舞。
修一「舞ちゃん、ずっと子供のままでいいいやんな」
無邪気に微笑む舞。
由美、うんざりした様子でテレビに目を向ける。テレビの画面には8:20の時刻が表示され
ている。
由美「舞ちゃん! 時間」
舞、慌てて弁当を鞄に詰めながら、
舞「早よ、言うてぇな~」
由美「もう! 勝手な事ばっかり言うて!」
舞、話も聞かず鞄を持って駆け出す。
由美「舞ちゃん!」

第二章 大東亜戦争って何?

○パソコン教室(朝)
パソコン教室の生徒たち(主婦や高齢者たち)がパソコンに向かって、熱心にHPを作成し
たり、アプリケーションの練習などをする。
講師数人が生徒たちの間を歩いて質問に答える。
パソコン画面に映し出されるホームページのタイトル『大東亜戦争の真実』。
西原(81)、パソコンと教材のテキストとを睨めっこしながら必死で操作するが、思い通
りにならず腕組をする。
西原の傍を通りかかる睦。
西原「先生!(画面を指さし)ここに写真入れたいねんけど、どうしたらいいんです? 
写真のデータここに入ってるねんけど」
と、USBメモリーを睦に渡す。
睦、USBメモリーをパソコンに差し込み、キーボードを操作しながら画面を覗き込み、
睦「(USBメモリを指さし)ここにUSBメモリを差していただきますと、画像の選択ボタンが
押せるようになりますので、このボタンをマウスでクリックしてください。そしたらファ
イルを選択できる画面が出てくるので、お好きな写真を選択してください」
西原、睦からマウスを受け取り、ファイルを選択する。
画面に零戦と少年兵たちが表示される。
睦、顔を曇らせる。
西原「ああ、できた、できた!ありがとう」
睦、零戦を指差し、
睦美「これって、特攻隊の人が乗ってた飛行機ですか」
西原「飛行機やないがな、戦闘機やがな」
睦美「この前、ドキュメンタリーで見たんですけど可哀想ですよね。十五、六の若さで敵
艦に戦闘機ごと突っ込まされて」
西原「無礼な! 突っ込まされたんやない!彼らは自分の意志でお国を守る為に出撃して
んや」
睦「でも、上官が出撃を拒否できんような空気にしてたっていうの聞いたことありますよ」
西原「あんたみたいな自虐史観の人間に、特攻を志願したもんの美しい心持ちなんか理解
できん!」
坂谷(40)、心配そうに睦と西原の様子を眺める。
睦「美しい心とか、美しい国とか、何か綺麗ごとに聞こえるんですよね」
西原「綺麗ごとに聞こえるんは、あんたの心持ちが薄汚れてるからや! 今も日本がこう
やって立派に主権を持って存続できてるんは、彼らのお陰や」
睦「でも、日本がアジアのいろんな国に侵略戦争を仕掛けてたから、アメリカが日本を止
めるために」
西原、机を叩き、
西原「侵略やない、自衛や! 大東亜の国々も自国を防衛するために一緒に戦っててんや
! GHQの言うがままに信じ込みやがって」
驚く睦。
周囲の生徒や講師たち、振り向く。
西原の元に駆けてくる坂谷、腰を低くし、
坂谷「弊社の小林が、何か粗相致しましたでしょうか?」
西原「どんな、社員教育しとんねん! 満足に先の大戦の事も知らんと知った様な口きき
やがって」
坂谷、深々頭を下げ、
坂谷「誠に申し訳ございませんでした(睦に)小林さん」
と、頭を下げるよう手で指図する。
睦「何が悪いんか分からんのに、頭、下げる方が失礼ちゃいます」
顔をひきつらせ西原、帰る準備を始める。
坂谷「いや、あの、西原様」
西原「こんな無礼な奴のいてる教室、二度と来るか! この売国奴が!!」
と、憤慨した様子で扉に向かう。
坂谷、睦の方を向き、
坂谷「スタッフルームに来てください」
不服そうな睦、坂谷の後をついていく。

○同・スタッフルーム
坂谷と睦、打ち合わせテーブルに向かい合って座る。
坂谷「弊社に損害を与えた場合、懲戒解雇を社内規定に定めております」
睦「ちょっと待って下さい。じゃあ、チーフは西原さんの言い分が分かるんですか?」
坂谷「さぁ」
睦「さぁって、さっき謝ってたのは、とりあえずですか? そっちの方が失礼じゃないん
ですか?」
坂谷「小林さんが、謝って然るべき所を前もって謝って差し上げました」
睦「それズルいんちゃいます」
坂谷「部下の粗相は私の粗相。西原さんの言い分が理解できたら教えてください。それま
で出勤していただかなくて結構です」
睦「いや、でもね、有給もまだやし、生活困るんですけど」
坂谷「じゃあ、早く復帰できるように努力してください。ご連絡お待ちしております」
睦「いや、あの」
坂谷「お疲れ様でした」
と、教室に戻る。
ガックリ首を垂れる睦。

○舞の自宅・舞の部屋(夜)
机の椅子に座る舞と、少し開いた扉から顔を覗かせる睦が睨み合っている。
睦「そんなんやったら、もう頼まんわ! ……今、高校、学費いらんし。生活費だけ何と
かしたらいいしな! ちょっとの事やのに、何なんよ」
と、扉を閉めようとする。
舞、扉を押えて阻止する。
舞「ちょっと待った! 何か危険な匂いがプンプンするねんけど……まさか、又」
睦「大丈夫、大丈夫。首の皮、一枚は繋がってるから」
舞「何したん!」
睦「いやいや、ええよ、ええよ。確かに、忙しい受験生さん、巻き込むのも酷やし」
舞「皮肉はいいから、ちゃんと説明して」
睦「ほんまにええから、ええから。大丈夫、大丈夫」
舞「いやいやいや、お母さんの首の皮一枚に二人の命がぶら下がってるってこと忘れんと
いてくれる」
睦、腕組みして考え込む。
睦「いや、実はなお客さんと太平洋戦争の話してたら、お客さん急に怒り出して……侵略
戦争やない、防衛やって。それでお客さん帰ってもうて、チーフにこっぴどく叱られたん
よ。社内規定で解雇がどうとかって言われてもうて」
舞「か、解雇……それってクビじゃないの?」
睦「いや、違うやん。さっきから首の皮一枚、繋がってるって言うてるやろ」
舞「気休めはいいから」
睦美「だから! 謝る理由さえ分かって、尚且つお客さんが許してくれはったら、晴れて
復帰できるから首の皮一枚やん」
口をあんぐり開けて呆れる舞。
舞「これって、正に絵に描いた様な首の皮一枚……何でいっつもそんな無謀なん。子供一
人育ててること自覚できてる?」
睦「大丈夫、大丈夫。パソコン教室の講師だけが、仕事やないし。仕事はいくらでもある
よ。今、景気いいし」
と、扉を閉めようとするが再び舞に阻止される。
舞「で?」
睦「え?」
舞「だから手伝って欲し事って、何?」
睦「いいよ、いいよ、聞いてくれてありがとう。気が楽になったわ」
舞「いやいや、悩みごとは話しただけじゃ解決せんから」
睦、ニコニコしながら部屋に入り、
睦「さすが舞ちゃん! ええこと言うわ! いや、実は手伝って欲しいって事っていうの
は、太平洋戦争の調査やねん。ここ調べんことには、お客さんが怒る本質掴めんやろ」
と、満面の笑顔。
舞「(苦い表情で)太平洋戦争……滝川の専門やなぁ」
睦「滝川?」
舞「同級生。戦争の話になると、急にスイッチ入って、先生とバトりまくるねん」
睦美「丁度いいやん。その子に聞いといてぇや」
舞「嫌やわ。滝川、面倒臭いし」
睦「だけど、先生と議論できるぐらい知識あるんやろ」
舞「議論って言うか、食って掛かってるだけやん」
睦「他におらんねん、頼むわ」
舞「だから、先生に嫌われてるねんって。滝川に関わったら、この大事な時期に私まで先
生に睨まれて内申書悪くなるやん」
睦美「そんな、みみっちい考え方でどうするん! 私らの死活問題が、かかってるねんで。
高校進学どころの騒ぎや無くなるかもしれんのに。分かってるん」
舞「いやいやいや、高校は無償やって自分で言うてたやん。も一つ言うと誰のせいなん」
睦「そう、カリカリしなさんな。ささ、救いの女神様、何卒、お力を」
と、手を合わせて拝む。
舞、腕組みしながら考え込む。
舞「うーん……」
睦、拝みながら細目を開けて舞を見る。
舞「あ! そう言えば滝川がいっつも見てるインターネットの右翼番組があるわ。とりあ
えず、それから見てみようか」
と、ノートパソコンを操作する。
睦、嬉しそうに頷きながら、
睦「じゃあ、後はよろしく」
と、部屋を出ようとする。
舞、扉を閉めて阻止する。
舞「お母さんの事やで! どうせ明日から休みやねんから、一緒に見ようや」
睦、渋々、ベッドに腰掛けパソコンの動画を見る。

第三章 卒業制作はみんな大好き『憲法第九条』

○中学校・教室
黒板に憲法第九条の文字。
水野、生徒たちに正方形の木片を配っている。
配られた木片を不思議そうに眺める生徒たち。
木片一つ一つにサインペンで文字が書かれている。
男子生徒A「先生、これ何するんですか?」
水野「ちょっと待て、後で説明するから。苛ち(いらち)やな」
女子生徒A「だけど、無言で、こんなん配られてもキモいだけなんですけど」
水野「だから、後で説明するって、言うてるやろ」
滝川「分かった! ハイハイ! 先生、分かった」
水野「絶対に分かってない!」
滝川「今年の優勝祈願に、六甲おろし!」
水野、大振りに滝川を指差し、
水野「惜しいぃー」
女子生徒A「だから、キモいねん! さっさと配って喋りぃな」
急ぎ足で残りの生徒に木片を配る水野。
水野、手を一つ叩き、
水野「よっしゃー、発表するでー!」
と、ドラムロールを口で再現する。
女子生徒A「もう、そんなん要らんから、早よしぃな」
目をキラキラさせる舞。
水野「もうちょっと、手加減できんか」
女子生徒A「手加減なんかしてたら、何億年掛かっても話進まんやん。あんたの話が終わ
る前に、地球滅亡してるわ」
水野「だから、今から話す言うてるやろ」
女子生徒A「あんたの嫁、何を思って、あんたなんかと結婚したん? 全く理解できひん
わ。魔が差してたとしか思われんへん。人生、棒に振ったも同然やん」
水野「あわわわ、そこまで言うなー! 嫁、関係ないやろ。盛り上げようとしてるだけや
ん」
滝川「それで、盛り上がってるんか。これは」
と、他の生徒たちを顎で示す。
生徒たち、飽き飽きした様子で漫画を読んだりスマホをいじったりしている。
水野、手を叩き、
水野「おーい! みんな、聞いてくれー」
舞、手を上げ、
舞「はい、はい、はい! 先生! さっきのん、どうやるん? ドゥルルルーってやつ」
水野「おい、お前、全然できてないやんけ。こうや、こう」
と、ドリルロール。
滝川「(水野に)もう、分かったから、早よせぇよ!廊下で先生、待ってるがな」
廊下側に座る男子生徒C、窓を開ける。
鋭い目付きで水野を睨む竹村。
水野、慌てた様子で廊下に向かう。
女子生徒A「(舞に)あんなんに、食い付かんでええねん」
舞「だって、気になるやん。あの、ドゥルルルーが」
女子生徒B「だから、できてないって」
廊下では、水野がペコペコと竹村に頭を下げている。
滝川「どうしようかなぁ」
舞「え? ドゥルルルー? 一緒に教えてもらう」
滝川「そんな、しょうもないこと、どうでもええねん。俺が言いたいんは」
水野、急ぎ足で教壇に戻る。
水野「えー、じゃあ説明するな。これは」
滝川「これ一つ一つ彫って、全部の文字組み合わせて、(黒板を指差し)それ作るんやろ」
水野「そうや、よう分かったな」
滝川「仕切りは俺に任せとけ!」
水野「いやいや、無理やろ。お前じゃ」
滝川「大丈夫! 立派な真の憲法第九条を作りますよ、先生」
と、自慢気に水野に微笑むと廊下にいる竹村に手を振る。
滝川「(廊下で待つ竹村に)竹村先生ー! 僕は完璧に平和を維持できる最高の憲法第九条
を仕上げる事を、ここに誓います!」
廊下の竹村、誇らしげに拍手する。
水野「ああ、しかし滝川、お前は」
滝川「先生、だから次の授業が」
と、廊下の窓を指差すと竹村、嬉しそうに微笑んでいる。
竹村「滝川、お前もやっと目覚めたか」
滝川「ええ、お国のためですから」
水野、教室を出て行く。
滝川、後ろの席の浪川に、
滝川「(小声で)木片回収や。次の休憩時間みんなに持ってきてって伝えて」
浪川「自分でやれや」
滝川「スマホ家に忘れてん。借りは返すから」
浪川「牛丼、たこ焼き、ラーメン、お好み焼き、いか焼き」
滝川「どれか一つや!」
浪川「(甘えた声で)二つ」
滝川「キモいねん、分かったから、早く拡散してくれ」
浪川、了解とばかりに親指を立てると、ノートの切れはしに滝川の伝言を複数枚書いて周
囲の席の者に拡散する。
滝川、浪川の頭を叩き、
滝川「何で、そんなアナログやねん!」
浪川「だって、おかんが『何しでかすか、分からん』ってスマホ買ってくれへんねんもん」
滝川「ああ。お前のおかん、正しいわ」
浪川、滝川の頭を叩く。
竹村、教室に入ってくる。
滝川と浪川、胸ぐらを掴み合い火花を散らす。
竹村「滝川、浪川! 何しとんねん!」
滝川と浪川、互いに舌打ちして席に座り直す。
竹村「受験生やねんから、そんな事に力使わんと、勉強に力使え。おい、日直」
   ×   ×   ×
机に突っ伏する舞。
舞を必死で起こす女子生徒B。
舞の横に鬼の様な形相で立つ竹村。
寝ぼけ眼の舞。
竹村「朝から居眠りか」
舞、慌ててパラパラページをめくる。
女子生徒B「(小声で)百三十六ページ」
竹村「お前は何で、いっつも、居眠りしてるんや。教科書はいいから話、聞かんかい」
シュンと俯く舞。
女子生徒A「確かに」
竹村「たまには意見が合うな」
女子生徒A「確かに先生の授業、催眠術がかってるから、みんな、瞼、寸止めにするん必
死やで、ほら」
と、半開きの目で見る。
竹村、ムッとしながら他の生徒も見渡す。
生徒たち半開きの目ででウタウタしている。
舞、開いた教科書のページを黙読している。
竹村、パチパチと手を叩き、
竹村「お前ら、夜更かしか? しっかり今のうちに勉強しとかんとギリギリになって、慌
てることになるぞ」
眠気の覚めた他の生徒たちは教科書を読む振りをする。
舞、高々と手を挙げる。
舞「先生、質問です!」
竹村「今、取り込み中や。後にしてくれるか」
舞「教科書の質問なんですけど……授業の内容以外で大事な事ってあります?」
竹村「お前が授業中に、居眠りしてたことが発端やろ!」
舞「だから、今、起きて質問してますやん」
竹村「ああ言うたら、こう言う。大体、お前は」
舞「質問したらダメなんですか?」
竹村「ああ、分かった、分かった。お前には負けるわ。質問って何や?」
舞、教科書(中学日本史の表紙)を持ち上げ、
舞「現在の日本国憲法は、戦後、国会で審議に審議を重ねて決議したとありますが、どこ
の国会ですか?」
竹村「お前は何を言うてるねん! 国会に大阪支店とか北海道支店とかあるんか」
舞「そうじゃなくて、どこの国の国会ですか」
滝川、笑いを堪える様に机に突っ伏する。
竹村「日本に決まってるやろ! その表紙は何て書いてあるねん!」
舞「いや、日本史って書いてますけど……文中に誰がっていう主語がないから」
竹村「無くても、日本国憲法って書いてるんやから、『日本の国会議員が』審議した
って読みとれるやろ」
舞「だけどね知り合いがGHQは現行憲法の草案を一週間で作ったって言うてましたよ。
GHQって日本を占領するために作られた外国の寄せ集めの司令部ですよね? しかも、
その外国人たちが日本の最高法規をいじくり倒したとも言うてたから事実を知りたくて」
竹村「ごたくはもう要らん! 憲法の事実はただ一つ! 九条の平和憲法が戦後、日本の
平和を守り続けた。それだけや」
舞「でもでも、右翼番組で、言葉だけじゃ国は守れんって」
竹村「だから、それは!」
滝川、立ち上がり、
滝川「先生、憲法に目覚めた僕が、後で小林さんに説明しときます!」
竹村「滝川、いい心掛けや。頼むわ」
滝川「承知しました!」
竹村「じゃあ、授業再開しようか」
《チャイムの音》
竹村「まったく、このクラスは! 残りは宿題や。今日の予定やった百四十ページまで、
読んでノートにまとめてくること。次回、質問受け付ける。以上」
生徒たち、ブーイング。
竹村「ああ、それと。宿題とかも、内申書に響くからな」
生徒たちのブーイング一層高まる。
   ×   ×   ×
滝川、舞に近寄り軽く頭を叩く。
滝川「ついに貴様も目覚めたか」
舞「はぁ?」
滝川「GHQが憲法の草案を作ったって、知り合いが言うてたとか」
舞「ああ」
滝川「知り合いって誰やねん」
舞「名前知らん」
滝川「それやったら、知らん人やろ」
舞「テレビ出てる人やから、私は知ってる人やん」
滝川「名前、知らんかったら、ほぼ知らん人やん」
舞「ごちゃごちゃ、うるさいなぁ。あんたが、前に言うてた右翼番組の人やん」
滝川「我が国に右翼なんか、おらん! おるのは、極左と左翼と保守だけや。お前が左に
寄りすぎてるから、保守を右翼言うてまうんや!!」
舞「そんな、怒鳴らんでも、ええやん」
滝川「明日、補習や。図書室で待っとけ」
と、憤りながら教室を出て行く。
舞「何の補習よ! ちょっとー!」
女子生徒A、舞に近寄り、
女子生徒A「新しい恋の予感? 春はそういう季節やもんな」
女子生徒B「近所の猫もニャーニャー発情してうるさいわ」
舞「は、発情って。あんたら、さっきから何、聞いてたん」
クラス中の生徒たち、舞を囃し立てる。
舞「うるさーい!」

第四章 舞の悩みごと

○中学校・教室
放課後、睨み合う舞と水野。
女子生徒B、面倒臭そうに二人を見守る。
女子生徒B「舞、さき部室行くで」
舞「先生、私ら忙しいねんやん。早く本題に入ってくれへんかなぁ」
水野「さっきから話の邪魔してるのん、お前やろ」
舞「邪魔って何なん! 思春期の深刻な悩みを打ち明けてるって言うのに」
水野「そしたら、そんな悩みも吹っ飛ぶ朗報や」
舞「え! 何、何?」
微笑む水野。

○同・廊下
舞の困惑の声が響き渡る。
舞「え~!」
教室の方を振り向く生徒たち。

○小林宅・キッチン(夜)
舞、珠代、由美の三人が夕飯を摂る。
舞、落ち込んだ様子で食事する。
心配そうに見守る珠代と由美。
舞、溜め息一つ。
舞「はあーあ」
珠代、辛気くさい空気を払いのける様に、手をパタパタさせる。
舞「何してんのん?」
珠代「辛気くさいのん、退けてるねん。ご飯、まずくなるから」
舞、膨れっ面。
由美「舞ちゃんも年頃やねんし、いろいろ悩むこともあるよ」
舞「お婆ちゃん、ご飯以外に幸せなことないん?」
珠代「お婆ちゃん、ご飯食べれるんが一番幸せや。邪魔せんといて」
舞「ほんまに脳天気やなぁ」
珠代「舞ちゃん程やないよ」
舞「私のどこが脳天気なんよ」
由美「二人ともそんな喧嘩せんと。舞ちゃん、学校で何かあったん?」
舞、俯く。
珠代「どないしたん?」
舞「どうしよう」
由美「誰かに嫌がらせされてるん?」
舞、困惑した様子で俯く。
珠代「いじめに遭ってるんやったら、学校なんか行かんでええからな」
舞、首を横に振る。
珠代「睦も仕事、仕事って、ちゃんと話聞いたらなあかんやん。由美さん、ちょっと電話
してくるわ」
舞「そんなんちゃう」
珠代「あんた、そんなもん、かばうこと、あらへんがな。図に乗るだけやで」
由美「舞ちゃん、命賭けてまで学校に通う必要ないからな。他にもいろいろ方法があるし」
舞「違うねん!先生が」
珠代「先生まで、荷担してるんかいな! 恐ろしぃ学校やなぁ。電話や、電話。校長先生
にしたらいいんか?」
由美「校長も当たりハズレあるらしいですよ。揉み消しなんかにされたら、けったくそ悪
いし、もう警察に電話した方が」
舞「違う、違うねん! 先生が卒業式に答辞読めって言いよんねん。生徒会長してるから
って」
珠代と由美、顔を見合わせて大笑いする。
珠代「はっきり、言わんかいな。びっくりするがな」
由美「すごいやん、舞ちゃん! お義母さん、卒業式めかし込んで行きましょうね」
珠代「いやー、何、着て行こう?」
由美「お義母さん、あの薄紫の着物、いいんちゃう」
珠代「あれは派手やわ。あれ由美さんが着たらええやん。私は」
舞、テーブルを叩き、
舞「私は、困ってるねんけど」
由美「何でなん!名誉なことやん」
珠代「舞ちゃん、目立つの好きやし、丁度ええやん」
舞「卒業式って、先生と友達だけちゃうねんで。そんな畏まった所やったら、緊張するや
ん」
珠代「舞ちゃんが緊張するねんて。へぇー、へぇー、へぇー」
由美「冗談に決まってるやん、お義母さん」
珠代「もう、お婆ちゃん、舞ちゃんに騙されてばっかりやわ。ハハハ」
由美もつられて大笑いする。
悔しそうに二人を見る舞。

第五章 滝川大先生の『日本近代史、本当のところ』(その1)

○中学校・図書室
舞と滝川、向かい合って座る。
長机の上に散らかる大東亜戦争や太平洋戦争の書籍。
手振り身振りを付けて、必死で話す舞。
ふて腐れ気味に頬杖付きながら、うわの空で舞の話を聞く滝川。
舞「別にお母さん、変な事言うてないやん。お客さんが怒る理由が、まるで分からんねん
けど」
滝川「変な事だらけやがな。怒って当然や」
舞「どこが?」
滝川「小林らの言う『太平洋戦争』の話が、すべて東京裁判ベースやから、その爺さんと
話が噛み合わんねん」
舞「じゃあ、あんたは何て言うんよ」
滝川「大東亜戦争や」
舞「(顔を歪め)ええ! あの残酷な侵略戦争」
滝川「そこが東京裁判に汚染されてる言うねん。『太平洋戦争』はアメリカ側から見た戦
争、『大東亜戦争』は大東亜、要するに東アジアの治安維持を目的にした自衛の戦争で…
…日本だけが戦ってたんじゃなくて、現地の人も我が国の軍隊に指導を受けながら一緒に
戦っててんや。若干、中国共産党に振り回されてた感はあるけど」
舞「ちょっと待って、あんた、何でそんな東京裁判に批判的なんよ。あれって、確か」
と、『太平洋戦争』の書籍をパラパラめくる。
舞「あ! これこれ。『極東国際軍事裁判』って言うお堅い名前やから、ガチっと、きち
っとした裁判ちゃうのん? 国際って付いてるねんで」
滝川「国際って付いてようが、軍事裁判って付いてようが、茶番は茶番や。稚拙な報復劇
にすぎん」
と、『パール博士の日本無罪論』と『東条英機の宣誓供述書』を見せる。
滝川「インド代表のパール判事以外、全員でたらめの判決文しか書いてない」
舞、滝川に見せられた本をパラパラめくる。
舞「裁判で、そんなんあり得んやろ」
滝川「あり得ん裁判やったし、今じゃ考えられん思想に基づく戦争やってんや」
舞「え、日本が?」
滝川「アメリカやらイギリスやら、白人の国の思想や! 原爆使用もずっと正当化して、
日本の暴走を止めるためやったとか、未だに言うてるけど、当時、暴走してたんはアメリ
カの方や!」
舞、ページをめくる手が止まる。
滝川「原爆使用は勿論の事、空襲にしても民間人の殺傷は国際法違反や」

○回想・新幹線車内
目を輝かせて語る珠代。
珠代「その内に目の前一面パーっとオレンジ色にキラキラ光る海が目に飛び込んできたん
よ。その海を船がゆっくり進みながらボーって汽笛鳴らすんよ」

○回想・原爆資料館
原爆投下直後の呉市吉浦町の写真。

○再び中学校・図書室
滝川、舞の目の前で手を叩く。
舞、驚いて我に返る。
滝川「話、聞けっちゅうねん」
舞「でも……日本が侵略してたから、仕方なかったんちゃう」
滝川「まだ言うか」
舞「だって……」
滝川「だから、そこやん。お客さんが怒るの」
舞「へ?」
滝川「侵略……じゃあ何で日本が侵略したと思うん」
舞「だって、テレビとか新聞でも、そう言うてるし。小学校の先生も、ちょっとだけそん
な話してたもん」
滝川「じゃあ、そのテレビと新聞もひっくるめて、当時の日本人だけやなしに戦後から今
日までの七十年の間に生まれた日本人が全員、騙されてるとしたら、どうや?」
舞「あり得んやろ。そんなん都市伝説」
滝川「GHQ……マッカーサーはそれをやってのけたんや」
舞「いや、無理、無理、無理」
滝川、舞を指さし、
滝川「できてるやん。さっきのお前の答えが動かぬ証拠や。GHQは戦後すぐにラジオや
新聞なんかのメディアを利用して日本軍がどれ程、残虐な行為を行ったか、出鱈目の情報
を毎日流し続けたんや」
舞「そんなんやったら、反対意見も」
滝川「勿論あったよ。だけどGHQが、反対意見を抑えるために日本人を言論統制してて
んや」
舞「それって戦前の日本軍の話やろ」
滝川「それは共産主義者を、あぶり出すためであって意味合いが違う。少々、やり方が強
引過ぎたけど、共産主義は、そこまでせざるを得ん程の脅威やってんや」
舞「共産主義の何が悪いん?」
滝川「戦前戦後、殺人を含む数々の暴力事件を起こして、今、現在も公安の監視対象にな
ってる。国を変えるや、何や言うて、テロ起こした挙げ句に罪のない人々を巻き添えにし
た。放っといたら、国が滅びかねん。よその民主主義の国は、どこでも共産党を解党して
る。日本ぐらいや未だ存続させてるんは」
滝川、『パール博士の日本無罪論』『東条英機の宣誓供述書』の二冊を指さし、
滝川「その二冊は日本が占領下にある間、発禁処分受けててんや」
驚く舞、再び本をパラパラめくる。
滝川「奴らは日本に全ての戦争責任を押し付けようとしてたから、パール判事と東条前首
相の『日本が自衛の戦争してた』っていう主張は非常に不都合やった訳や」
舞「自衛……」
滝川「この東京裁判の首謀者やったマッカーサは、何年も後、東京裁判は間違いやったっ
て語ってる。それは朝鮮戦争で米韓両軍の指揮をとって、初めて日本が防衛してた事に気
が付いたからや」
舞「思い込みだけで日本を犯人扱い?」
滝川「それとは裏腹にパール判事が、日本人全員無罪論を主張したのは何でやと思う?」
舞「それこそ飛躍しすぎちゃうん。日本も悪い事してるのに」
滝川「現在に至るまで戦争を裁く法は存在せんからや」
舞「え! でもさっき国際法で民間人の何とかって」
滝川「それぞれの行為を罰する法が存在しても、戦争そのものに対する法は無い」
舞「それでも、悪い事したことには間違い無いんやろ」
滝川「喧嘩両成敗や。日本だけ裁かれるのはおかしい。アメリカは国際法も無視して日本
の民間人を大量虐殺してるのに、何で、どこからもお咎めがないねん」
舞「それは……」
机の上のスマホが振動する。
滝川「戦争に勝ったからや。勝者は敗者の歴史を塗り替える。当たり前の事や……しかし、
日本人はお人好し過ぎや。七十年も、こんな出鱈目、信じてるねんから。おかしな憲法を
書き換えることも未だにできてないし」
と、スマホを見る。
ディスプレイに18:00塾と表示され、時刻は17:30を示す。
滝川「時間や。それ読んで復習しとけ」
と、扉の方に歩き出す。
舞、神妙な顔つきで本を読みだす。

第六章 滝川大先生の『日本近代史、本当のところ』(その2)

○舞の自宅・居間(夜)
座卓に置かれた『東条英機の宣誓供述書』と数冊の大東亜戦争の書籍。
『パール博士の日本無罪論』を読む睦。
舞、卒業製作をせっせと彫刻刀で彫る。
睦「茶番の国際裁判、日本丸ごとマインドコントロール……SF映画、何本か撮れそうや
な」
舞「これ、現実やから」
睦「敗戦後の事は分かったけど、日米開戦の経緯が、いまいちピンとこんねんなぁ」
舞「真珠湾攻撃やん」
睦「それ、きっかけやん。そこに至る経緯やん、知りたいのは。本、読んでても、それぞ
れ内容が食い違ってるし」
舞、難しい顔で考え込む。

○中学校・図書室
舞と滝川、長机に向かい合って座る。
滝川、頭を抱えて数学の問題を解く。
舞、大東亜戦争の書籍を読みながら、
舞「最新鋭の戦闘機は数学無しに動かせんよ。お父さんみたいな航空自衛隊員になりたい
んやったら勉強、勉強! 教科書とか見ながらでもいいから自力で解いてみぃな」
半泣きで問題集と睨めっこする滝川。
舞「……しかし、これだけ物量違うの分かってて、何でアメリカと戦争してんやろ?」
滝川「邪魔すんな」
と、教科書を前から後ろからパラパラめくって解法のヒントを探す。
舞「やっぱり真珠湾攻撃が発端やんなぁ」
滝川、ページをめくる手を止めニヤリと笑う。
滝川「日本を先制攻撃するように、仕向けた奴がいてる」
舞「ああ、陸軍の暴走」
滝川「自分で真珠湾や、言うといて、何で陸やねん!」
舞「だって戦争になったんは、陸軍が暴走したからって、テレビとかでよう言うてるやん」
滝川「軍隊は、どなた様のものやったか分かってるんか……(小声で)まあ、若干、先走っ
てたことも否めんけど」
舞「どなた様って、日本に所属してたんちゃうん」
滝川「日本の軍隊、すなわち天皇の軍隊や」
舞「(混乱気味に)え? え? えー?」
滝川「日本と天皇は同義ぐらいに考えとけ! 天皇陛下あっての日本、天皇陛下なしの日
本なんかあり得ん!」
舞、オロオロして口をパクパクする。
滝川「陛下の命令もなしに、勝手に動いたりできる訳ないやろ、このボケナス!」
舞「じゃあ、仕向けた奴って誰よ」
滝川「第三十二代アメリカ合衆国大統領、フランクリン・ルーズベルト」
口を開けて驚く舞。
滝川「驚くのは、まだ早い。こいつを陰で操ってた奴がいててん」
舞「大統領を陰で操る? マフィアとか……何か、どす黒い強大なパワー持った奴」
滝川「もっと質悪いわ。ソ連のスパイ、モーゲンソー。そいつがアメリカの財務省に潜り
込んで」
舞「何で、財務省なん。戦争の話やろ」
滝川「カラクリがあるねん……財務省長官とルーズベルトは大学時代からの親友なんや」
舞「ソ連って、ロシアやんなぁ。ロシアって明治時代、日本に負けたんちゃうのん?」
滝川「負けても国は残ってる。強すぎる日本が満州や朝鮮半島で、いつまでも防衛に当た
ってるのが、邪魔で仕方なかった。要するに南に侵攻することを諦めてなかった訳や」
舞「でも、太平洋戦争の後、アメリカとソ連って、ずっといがみ合っててんやんなぁ」
滝川「仲良く日本を攻撃したんちゃうんや。ソ連が工作してアメリカに戦争させたんや」
舞「仮にも大統領やで……一国の大統領が、人の言うた事だけで動く?」
滝川「ルーズベルトは戦争に参加したくてウズウズしてた。イギリスからも応援頼まれて
たし」
舞「イギリスやったら、ヨーロッパやん。日本と何の関係あるん。回りくどい事せんとイ
ギリスの戦争に直接、参加したらええんちゃうん」
滝川「そこにも、まだ裏がある」
舞「もう! ややこしいー。日本が戦争始めた事にしたら、ええやん!」
滝川、机を叩き、
滝川「お前は、それでも日本国民か!」
舞「だって、ややこしいやん。戦争に参加したい割にはゴニョゴニョ裏工作したり、大統
領がスパイの言いなりになったり」
滝川「じゃあ何で裏工作せな、あかんかったと思う?」
舞「知らんよ、そんなん!」
滝川「至ってシンプルや。大頭領選の時の公約、破るためや」
舞「公約?」
滝川「ルーズベルトは大統領選の時に、不戦の誓いを立てた」
舞「と、言う事は……アメリカ人は戦争反対やったって事?」
滝川「そう、だから、ルーズベルトを信じてみんな投票してんや」
滝川、一冊の本をパラパラめくり、目的のページを見つけると舞に見せる。
開かれたページは真珠湾攻撃に関する写真と説明が記載されている。

○回想・アメリカ・ホワイトハウス前
T「1941年アメリカ」
ホワイトハウスの前景。
門の前で大勢のアメリカ人が、プラカードを持って大声で叫ぶ。
滝川の声「『非常事態を作った原因を叩きのめせ!』と、世論が騒ぎ出す。ルーズベルト
はようやく戦争する名目を完成させて、堂々と公約を破ったって訳や」
プラカードに赤字で書かれている『Remember Pearl Harbor!』の文字。

○再び図書室
舞、本のページをめくると古い英字新聞の写真。大見出しに『Remember Pearl Harbor!』。
滝川「不意打ち、不意打ちって言うけど、日本の暗号の殆どはアメリカが傍受して解読し
ててんや。だからルーズベルトが日本の真珠湾攻撃を察知するのは簡単やってんや」
舞「それって、まさか」
滝川「ルーズベルトは自国民を囮にした」
舞「国民の生命と財産を守るのが仕事やのに、戦争する建前作るために国民を犠牲にした
ってこと? ほんで犠牲にされたことも知らんとアメリカ国民は大統領を信じて戦争を始
めた……外国の政治が変なん? それとも日本の政治が行儀良すぎるだけなん?」
滝川、スマホを操作してルーズベルトのインターネットの記事を見せる。
大見出し『狂気の男、ルーズベルト』(産経新聞)。
舞「大統領が狂ってる!」
滝川「日本もアメリカ国民も、こいつに振り回されてたっちゅう訳やな」
舞「だけど……こんなおバカな大統領の罠にはまった日本人も、おバカじゃないの」
滝川、机を叩き、
滝川「罠にはまったんや無い! 崖っぷちまで追い込まれててんや」
滝川の勢いに驚く舞。
滝川「お前の所、爺ちゃんか、婆ちゃん生きてる?」
舞「生きてるよ。お婆ちゃんが」
滝川「食べ物に、目茶目茶、執着してない?」
舞「もう、うるさいの、何のって。ピーマン嫌いや言うて退けてるだけやのに、勿体ない
勿体ないって、いっつも文句言うねん。挙げ句の果てに避けたやつ、食べるねんで」
滝川「ルーズベルトは、イギリス、オランダ、中国と共謀して日本を兵糧攻めにしてんや」
舞「え?」
滝川「戦争の映画で食糧は配給で、毎日、芋と南瓜しか食ってないとか言うてるの知らん
か? それが原因や。政治的な言葉で言うと禁輸措置を取られた訳や」
舞「だけど、話し合いしたらいいやん」
滝川「当時の内閣は、アメリカに話し合いを何回もも持ち掛けてたのに、アメリカ側がノ
ラクラかわしててんや。『平和裡に解決せよ』って、陛下のご意向もあったから、日本政
府は真摯に頑張って奔走し続けた」
大机に置かれた書籍の表紙に昭和天皇のお写真、
別の開かれた本には第二次近衛内閣発足の写真。
舞「ちょっと待った! 裏工作仕掛ける相手、別に日本じゃなくていいやん。何で、そこ
までして日本に取り憑くん?」
滝川「ドイツの同盟国やからや。戦争のお誘いしてたイギリスが戦ってた相手国な訳やな」
舞「何か複雑になってきたな」
滝川「最後の一押しは、石油の禁輸やな。資源の少ない日本にとっては大打撃や」
舞「あの時代、今ほど自動車走ってなかったやろうし、プラスチック製品なんか殆どない
ねんから、金持ちだけが困ったんちゃうん」
滝川「お前の発想は、それだけか」
舞「ああ! ストーブ……でも薪燃やしてたか」
滝川「生活圏内やなしに、国レベルで考えろ! 今みたいに安保があって、1パーセント
以内の防衛費で済むんやったら、それでええやん。あの時代は簡単に誰も助けてくれへん
かってん。同盟国のドイツ、イタリアは地球の裏側やし」
舞「安保とか防衛費って言われても」
滝川「ちなみに、当時の防衛費は国家予算の何パーセントぐらいか分かるか?」
舞「今が1パーセントやから、物価も考えると0.01パーセントぐらい?」
滝川「何で下がってるねん」
舞「でも、昔に比べたら物価、目茶目茶上がってるし」
滝川「比率で聞いてるねんから、物価上昇は関係ないやろ」
舞「ああ! あんた数学力上がってきたんちゃうん」
滝川「もっと上や! 自分の国だけで防衛せなあかんねんから。しつこいソ連に、どうし
ようもない中国と、それにとり憑いてた西洋諸国」
舞「分かった、分かった、ちょっと計算してみるから」
と、ノートに計算式を書き始める。
舞、時折、スマホで調べものをする。
舞「我が国の防衛費、弾き出しましたえー」
滝川「よしよし、言うてみろ」
舞「中国、ロシア、以外にもう一つ北朝鮮も入れて試算してみた。なぜなら、去年、打ち
上げ花火でも上げるみたいにロケットを日本に発射したから」
滝川「だから、今やなしに昭和初期や。当時は北朝鮮も韓国も、日本の一部やってんや」
舞「あ! それって、あの、いあ」
滝川「ちょっと待った! それも間違えてる」
舞「まだ何も言うてないやん」
滝川「言いたいことは、一語一句分かってる。ここも正しとかな。ふー、危ない、危ない」
舞「いやいや、だから」
滝川「これだけは今日、絶対に覚えて帰れ! 当時の朝鮮は朝鮮王朝の方から、我が国に
「朝鮮の統治をお願いします」って、頼みに来てんや。理由は、国内治安の腐敗と悪化、
中国を事実上の植民地にしてた西洋諸国、ロシアの驚異に堪えかねたからや。決して、日
本が侵略した訳ではない!!」
舞「え、あ、うん。しょ、承知しました」
と、ノートの文字を消す。
舞「あの……発表していいですか? 昭和初期の防衛費」
滝川「言いたまえ」
舞「北朝鮮外して、中国にいてた西洋諸国」
滝川「とは、言え朝鮮半島は重要な防衛拠点や」
舞「じゃあ、消さんで良かったやん」
と、またノートに書き足す。
舞「はい、発表しまーす! 今年度の防衛費はGDP比が0.9やから、昭和初期は、単純計算
で2.7パーセント! どない」
滝川「もしかして、今年のGDP比を、ほんまに単純に三拠点で掛けてしまった感じ」
舞「あ、ごめんごめん、西洋諸国まとめすぎてたな」
滝川「ちゃうねん、だからその0.9って言うのは、戦後アメリカにも一緒に守ってもらっ
てるから、それだけに抑えられてるねん。何回、言わすねん!」
舞「えええ、どういうことー?」
滝川「ブッブー、時間切れでーす! 正解は占めて国家予算の五〇パーセントでした」
舞「国家予算の、ご、五〇パーセント」
滝川「戦闘機とか軍艦を動かす石油が禁輸になったら、どないなる?」
舞「ああ! 攻撃される」
滝川「誰もが知ってた。石油を禁輸すれば日本は必ず銃を持って立ち上がるって」
舞「それで真珠湾攻撃」
滝川「まだや。それでも我慢してたけど、ソ連のスパイが起草した最後通牒『ハル・ノー
ト』、こいつが日本の堪忍袋の緒を切らしたね」
舞「ハル・ノート」
滝川「中国大陸やフランス領インドシナからの即時無条件完全撤退……防衛線を破壊しろ
っちゅうことやな。他に三国同盟の脱退、これは助っ人とは手を切ること。あと蒋介石…
…日本の防衛の邪魔し倒してた奴や。そいつへの支持……これ全部をする事は国の自殺を
意味する」
舞「日本は一生懸命話し合いしようとしてたのに……酷いやん」
滝川「ソ連が裏にいてたからこそ、日本が激怒する原因を心得ててんや」
舞の開いている本に記載されている開戦の詔勅(仮名が振られている)。
舞「開戦の詔勅……天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武
ナル汝有衆ニ示ス 朕茲ニ米國及英國ニ対シテ戰ヲ宣ス」
--------------------------------------------------------------------
参考:大東亜戦争 開戦の詔勅  (米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書)
http://www.geocities.jp/taizoota/Essay/gyokuon/kaisenn.htm)
--------------------------------------------------------------------
滝川「そう、昭和一六年一二月一日の御前会議で陛下はご聖断を下された。この攻撃も慎
重を極めた。攻撃命令までにアメリカ側が何らかの改善する動きが、あったら即時攻撃は
回避することになってた」
舞、再び本を開いて真珠湾攻撃の写真を見る。
舞「だけどルーズベルトの思惑通りに事は進んで、昭和十六年十二月八日、真珠湾攻撃」
滝川「『戦うも亡国、戦わざるも亡国。戦わずして滅びるのは、民族の魂まで失う、真の
亡国である』海軍軍令部の永野修身総長の言葉や」

第七章 諸外国から狙われ続ける日本〜太閤さんも徳川一族も必死に日本を守った

○舞の自宅・居間(夜)
夕飯を摂る舞と睦。
テレビには反日運動で声高々に声をあげる韓国人の映像。
睦「あれだけ言うんやったら、嘘やなかろうし。謝ったらいいのにな」
舞「誰かも、納得いかんからって、謝ってないんちゃうん」
睦「それと、これとは話が別やん」
舞「いやいや、日本が謝らんのは、謝る理由がないからじゃないの。まあ、お母さんの場
合は謝る理由が分からへんだけやけど。トホホ」
睦「く、国は意地張ってるだけちゃうん」
舞「それは、お母さんであって、国はあんな出鱈目、相手にしてないだけやから。それよ
り、これから、どうするん?」
睦「あ……ハハハ。どうにかなるよ」
舞「ああ、いっつもの行き当たりばったり」
睦「あ、それって、あれに似てるな。『行き倒れ、バッタリ』」
舞「初めて聞くけど……まあ、そうならんように、気を付けてください。その時には、私
は叔父さんの所の養女になりますので」
睦「あんた、リアルで恐いわ」
舞「何はともあれ、お母さん、気を引き締めて事に当たってください。親子が離れ離れに
ならんで済むように」
睦「承知!」
と、敬礼する。

○滝川宅・滝川の部屋(夜)
机に山積みされた木片。
筆で木片に文字を書く滝川。
手が墨のせいで所々、黒くなっている。
最後の一筆を書き終えると満足げに木片を眺める。

○第八中学・教室
滝川と浪川、新たな憲法九条の木片を生徒たちに配る。
水野「おい、何でいちいち書き直してるねん」
滝川「我が国の憲法を、あんなヒョロヒョロした線のサインペンで書いていい訳ないやろ
! (生徒たちに)おい、配り直したのん、お手軽なサインペンの方で彫るなよ。こっちの、
きちっとした筆の方で彫ってこい」
と、木片の筆で書いた面を見せる。
水野、生徒の机の横を歩きながら木片の枚数を確認する。
水野「あれ? 何か枚数、増えてないか?」
滝川「数学教師が数も数えれんようになったらしまいやな」
水野「一枚や二枚の騒ぎやないで。お前こそ、元の枚数覚えてるんか? 一人、一、二枚
ぐらいやったのに、三枚の子とかいてるで」
滝川「(水野に)気のせい、気のせい(生徒たちに)失敗したり、ギブアップの時は、いつで
も相談にきてなー」
水野、こっそり生徒に配られた木片をいくつか見る。
水野「おい、滝川、何か関係ない文字、混じってないか」
滝川「そんな訳ないやろ」
水野「いや、でもこの三人に配られた文字『国』『軍』……『防』?」
滝川「全部入ってるやん」
水野「いやいやいや、おかしいって。国は『日本国民は、正義と秩序を基調とする』で、
OKやん。軍も、『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』で、これもOKやん。問題
は『防』や。どこに出てくるねん」
滝川「貴様は、憲法第9条を丸暗記してるんか!」
水野「してるよ」
滝川、水野に睨みを効かせながら扉の方に向かう。
滝川「(扉の外に)すいません、もうちょっと待ってもらえます」
水野、時間割表を見る。
月曜の一時間目『日本史』となっている。
滝川「で、何やって『防』が」
水野「いや、あの、えっと……後でいいわ」
と、急ぎ足で扉に向かう。
生徒たち、俯き肩を震わせて笑いを堪える。
水野の声「あれ、あれ、あれれー?」
廊下から足音。
竹村の声「何か探し物ですか?」
水野の声「いや、あの、今、来られたんですか?」
竹村の声「そうですよ」
生徒たち、弾けた様に笑い転げる。
水野、勢いよく扉を開け、
水野「こらー! お前らー!」
生徒たちの笑い声は一層大きくなる。
竹村、水野を押し退けて教室に入り、黒板を手で叩く。
静まり返る生徒たち。
驚く水野。
竹村「他のクラスに迷惑やろ! (水野に)なめられ過ぎや」
水野「すいません」
と、一礼して教室を出て行く。
舞「(女子生徒Bに小声で)おっさん、今日も絶好調やな」
女子生徒B「(小声で)あれって、狙ってるんかな」
舞「(小声で)ああ、数学教師なだけに計算し倒してるってやつ」
女子生徒B「(小声で)あれが計算やったら、間違いだらけの赤点で補習コース、間違いな
しやね」
舞「ほんじゃあ、あれ天然か。ガハハハ」
女子生徒B「(指を口に当て)シーっ!」
竹村、舞と女子生徒Bに近寄り、
竹村「お、小林、今日は元気そうやな」
舞「おかげさんで」
と、微笑み返す。
竹村「宿題やってきたやろうな」
舞「勿論ですよ、先生」
と、足元に置いた紙袋から数冊のノートを取り出す。
竹村「これ家で書いて来たんか」
と、ノートをパラパラめくる。
舞「歴史の教科書を読めば読むほど不可解で、山のように質問が出て来ました」
竹村「大したもんや。歴史というのは探究心無しに語れん学問やからな」
舞「ただ……先生が宿題に出した範囲外の質問もあるんですけど」
竹村「小林! 見直したぞ。何でも質問しなさい」
舞「鎖国はキリスト教を締め出すための政策とか、徳川幕府が私腹肥やすためっぽいこと
が教科書に書いてあったんですけど」
竹村「私腹を肥やすまでは、書いてないけど要約したら、そうやな」
舞「だけどね、他の本やったら宣教師たちが日本人を人身売買する目的で連れ去ったから、
豊臣秀吉も徳川幕府もキリスト教を禁止せざるを得んかったって書いてるんですけど」
竹村「いやいや、徳川が私腹肥やしてたんは事実や。大体、参勤交代もそうや。地方の武
士から搾取して力を弱めててんから」
舞「先生、それやったら二つの話が入り混じってます。キリスト教の締め出しと、参勤交
代は目的が全く異なります。キリスト教の締め出しは外敵から日本を守るため、参勤交代
は国内の治安を安定させるため。良し悪しは兎も角、アプローチが違うものを同じ話の中
に混ぜ混むのは混乱の素です」
竹村「ん、いいとこに気づいたな。整理することは大事なことや。よし、じゃあキリスト
教の話から行こうか」
舞「かしこまりました」
竹村「しかし、聖職者が人身売買って言うのは飛躍し過ぎちゃうか」
舞「そう仰るなら、今から読むの、よく聞いててくださいよ」
と、紙袋から一冊の本を取り出し読み始める。
舞「行く先々で日本女性がどこまでいっても沢山目につく。ヨーロッパ各地で50万という。
肌白くみめよき日本の娘たちが秘所まるだしにつながれ、もてあそばれ、奴隷らの国にま
で転売されていくのを正視できない」
竹村「こらこら」
舞「天正遣欧少年使節の少年がローマ法王に訴えた一節です。五十万人も自国民を拐われ
たら、入国を禁止するのは当然のことじゃないんですか」
竹村「そんなもんガセネタや。そんな本、読むのやめなさい。五十万人も誘拐されて教科
書に載らん訳ないやろ」
舞「それやったろ、先生は伏見桃山時代や江戸時代に友達いてたんですか?」
竹村「いてる訳ないやろ!」
舞「じゃあ、何でガセって分かるんです?」
竹村「いや、それは……」
舞「ちなみに私が、この本を信じたのは」
と、本の著者の写真を指差す。
舞「著者が白人さんだからです。ご自身の国の事実もしっかり、執筆されてます。普通、
自分の先祖にあたる人たちを、ここまで、こき下ろしますか? 嘘とは思えません」
滝川「(小声で)そうや、そうや。未だに先祖をこき下ろして、先祖を粗末にしてる残念な
国民もいてるけどな」
竹村「何て、滝川?」
滝川「え、ああ。後で小林さんに僕から、しっかり説明しときますわ」
胡散臭そうに滝川を見る竹村。
滝川「僕はね、憲法第九条に目覚めた平和主義者ですよ。先生。これを見てください」
と、『平』『和』の木片を見せる。
竹村「それ滝川が書いたんか? 見事なもんやなぁ」
滝川「書道九段!」
竹村「この調子で答案も読める字書いてくれるか」
滝川「承知つかまつった!」
舞「先生、参勤交代は」
竹村「他の子のも聞きたいから、また次回な」
女子生徒A「舞の質問の方がいい」
浪川「俺も、俺も」
生徒たち、口々に舞を支持する発言を口にする。
竹村「お前ら宿題やってきてないんちゃうか」
女子生徒A「いやいやいやいや、そうやなしに。宣教師が人身売買組織の一員やったっな
んて、先生もテレビも教えてくれへんやん」
女子生徒B「同じ白人がそれをカミングアウトしてるんも説得力あるし」
竹村「カミングアウトって、お前。じゃあ、後、一個だけ。小林、どうぞ」
舞「えーっと、それじゃあ」
竹村「参勤交代か」
舞「いえ、それよりも質問したいことがあります。でもちょっと世界史も入るんですけど」
竹村「どうぞ」
舞「アメリカ大陸は原住民の人達を大量虐殺して侵略の末に、アメリカやメキシコ、ペル
ー、カナダなどの国ができたっていうのは本当ですか?」
竹村「映画で考えたら分かりやすいな。僕らが子供の時は、西部劇っちゅうもんがあって、
原住民の人らを悪もん扱いして白人はアメリカ建国を正当化してたけど、90年代に入って
実は白人が原住民の人らを迫害してたことを映画にし始めた。ダンス・ウイズ・ウルブズ
なんかが代表的やな。総合的に考えても侵略、蹂躙したことは確かや」
舞「そう考えると白人による日本人の大量誘拐もあながち、嘘とは言い切れませんよね。
と、言うことは、やむを得ず、鎖国したとも言えるんじゃないんですか。もし、ほんまに
私腹を肥やすためやったら、国を開きっ放しにして、いろんな国と商売した方がガッツリ
銭儲けできるじゃないですか?」
竹村「言われればそうやな。歴史はいろんな角度から検証することが大事や。史実は百年
ぐらい経過せんと、歴史としては証明しがたい。教科書も、先生が子供のときから考えた
ら色々変わったわ。よし、ようやった、小林。この調子で、これからもしっかり勉強しぃ
や」
舞「はい!」
と、敬礼する。
竹村「みんなも、今日の小林の話で興味持てたみたいやから、小林に聞くのもいいし、他
にも興味でてきたら自分で本とかインターネット調べてみるのもありや。発表したくなっ
たら、事前に言うてくれ。今日みたいに時間取るから」
滝川、張り切って手を挙げ、
滝川「先生、次回、僕が発表しまーす!」
竹村「お前は最後や」
滝川「先生、何でですか? 今すぐにでも、発表できるんですけど」
《チャイムの音》
竹村「はい、終わり! 今日は有意義な授業になったわ。ありがとうな、小林! 次回は
普通の授業に戻るから。はい、日直」
日直「起立、礼、着席」
竹村、教室を出て行く。
滝川、舞に近づき、
滝川「やるやんけ」
と、肘で舞を小突く。
舞「あんたが喜ぶ様なこと、何もしてないけど」
滝川「あのおっさんを、あそこまで認めさせるとは。お前の強引さには感服するわ」
舞「あんたの喧嘩っ早さには、辟易とするわ」
悔しそうに舞を見る滝川。
何食わぬ顔で本を読む舞。

第八章 睦の現場復帰と卒業式リハーサル

○パソコン教室・応接間(夕方)
睦、坂谷、並んで座る。
上座に座る西原、不機嫌に腕を組んでいる。
睦、頭を下げ、
睦「この度は無知からくる暴言の数々、誠に申し訳ございませんでした。そして、本日は
ご足労頂き、誠にありがとうございました」
西原「客が減るの、そんな困るんか?」
睦、顔を上げ、
睦「いいえ、お客様が憤慨された理由を、ようやく理解致しました。謝罪する機会、そし
て勉強する機会を与えて頂いた事も重ねて御礼申し上げます」
西原「見え透いた事を」
睦「娘と一緒に大東亜戦争の事を調査させて頂きました。自分の先祖、この国を守った英
霊そして我が国の諸先輩に、今は、ただただ感謝するばかりです。娘も私も今は日本人で
あることに、大変、誇りを感じております」
西原「えらい、変わり様や。気味悪いなぁ」
睦「是非とも『大東亜戦争の真実』を仕上げて、戦後生まれの私達にご教授ください。私
どもスタッフも、精一杯サポートさせて頂きますので」
と、頭を下げる。
坂谷「何卒、よろしくお願い致します」
と、続いて頭を下げる。
頭を下げる二人をじっと見る西原。
西原「そういう事やったら、また明日から来るわ」
と、立ち上がり扉の方に歩き出す。
睦と坂谷、立ち上がり深々とお辞儀する。
睦・坂谷「ありがとうございました」
西原「うん」
と、後ろ手で手を振り部屋を出る。
西原の姿が見えなくなっても、頭を上げずお辞儀を続ける睦美と坂谷。

○小林宅・舞の部屋
勉強机に広げた原稿用紙を前に頭を抱える舞。
原稿用紙にはタイトルだけが記されている。
『卒業式 答辞』
舞、ブツブツ呟く。
舞「天皇陛下、君が代、憲法第九条」
舞、女子生徒Bに電話する。
舞「なぁ、答辞どうしよう……うん、うん」
電話しながら、パソコン画面の検索エンジンに『卒業式 答辞』と入力する。

○中学校・体育館
卒業式リハーサル。
日野真由美(48)のピアノの伴奏で生徒や教職員が『君が代』を斉唱する。
生徒たち、儀礼的に歌う。だるそうに歌う者、後ろの生徒と会話する者、こっそりスマホ
を操作して全く歌わない者。
一部の教師、口を一文字にして下を向いて歌わない。
一部の教師の様子に困惑する校長と教頭。
場内の歌う姿勢を不服そうに目を光らせる滝川。
×   ×   ×
生徒たち、壇上に向き整列して座る。
校長、並びに教職員一同、壁側に一列に座る。
壇上に立つ舞、答辞を読み上げる。
舞「三年間のさまざまな思い出が頭によみがえってきます。体育祭、水泳大会、文化祭、
修学旅行」
×   ×   ×
リハーサルが終了し、参加者が体育館から出て行く。
女子生徒Bと舞、談笑しながら歩く。
水野、舞に声を掛ける。
水野「爽やかで良かったよ」
舞、はにかんだ笑顔を見せる。
滝川、水野の背後から、
滝川「無難で、いまいちやったよ」
女子生徒B「そ、そんなん言うんやったら、あんたが代わりにやりぃや」
滝川「(嬉々として)マジで!」
水野「いやいや、いやいや。滝川、何が気に入らんねん」
滝川「何かこう……機械的っていうか……インターネットで『卒業式 答辞』で検索した
ような」
女子生徒B、図星で胸を押さえる仕草。
水野「でも小林も一生懸命考えたのに、それは言い過ぎやろ。な、小林」
舞、心苦しさに胸を押さえる仕草。
女子生徒B、天井を指差し、
女子生徒B「あ!」
水野、滝川、舞、指差す方向を見る。
女子生徒B、舞の腕を掴んで走り去る。
滝川と水野、二人の後ろ姿を呆気に取られた様子で眺める。
滝川「(鼻で笑い)こんなしょうもない事に引っかかりやがって」
水野「お前もやろ」
と、滝川の頭を軽く叩く。
睨み合う滝川と水野。

○パソコン教室
パソコン画面に映し出されているホームページのタイトル『大東亜戦争の真実』。
睦と西原、画面を指差しながら朗らかに会話する。

第九章 君が代特別修練

○中学校・音楽室
旭日の鉢巻を締め、片手に竹刀を持つ滝川が黒板の前に立つ。
滝川「(日野に)御老女、本日は私がこの場を取り仕切りますので」
困惑する日野。
日野「御老女って、あんた」
滝川、竹刀でピアノの椅子を指す。
滝川「あちらにお掛けになって、お休みください」
日野「いや、滝川君」
滝川、竹刀で黒板を叩く。
滝川「只今より、『君が代』特別修練を執り行う」
男子生徒D「(滝川に)おい、それ俺のやんけ」
滝川「この鉢巻か?」
男子生徒D「そんな、いかつくない」
滝川、竹刀を持ち上げ、
滝川「こっちの方が、いかついんちゃうか。君のような剣士であれば、たちどころに相手
を殺傷してしまう威力がありそうやな。丁寧に取り扱うので少々、拝借したい」
男子生徒D「そういうことで、あれば」
浪川、男子生徒Dの頭を小突く。
浪川「乗せられんな。止めろや」
滝川、竹刀で床を叩き、
滝川「只今より『君が代』特別修練を執り行う」
男子生徒D「おい、お前どこが丁寧やねん!」
滝川「ハハハ、失敬、失敬。熱が入りすぎた」
男子生徒D「どないしてん、お前……いっつも以上にヤバイで」
浪川「(男子生徒Dに小声で)何か悪いもんでも食うたんちゃうか。あいつ」
男子生徒D、分からないとばかりに首を振る。
女子生徒A「滝川、ギョーカイ人」
滝川「何でや」
女子生徒A「だって、さっきから『シュウレン』、『シュウレン』って、逆言うてるやん」
滝川「何の逆やねん」
女子生徒A「『レンシュウ』」
滝川、竹刀を床に投げつける。
滝川「逆に読んでない! 漢字も違う!」
男子生徒D、ここぞとばかりに竹刀に手を伸ばすが、滝川がすでに竹刀に足をかけている。
女子生徒A「似たようなもんやん」
滝川、竹刀を拾い上げ床を叩く。
滝川「全く違う!」
滝川をうっとうしそうに眺める女子生徒A。
滝川「『練習』とは厳しかろうが温かろうが、ただただ繰り返す事や。しかし『修練』と
は、厳しく己を鍛える、いわば修行のようなもんや」
滝川、竹刀を女子生徒Aに突きつける。
滝川「我がの星へ帰れ、この地球外生命体」
女子生徒A「ち、地球外生命体?」
滝川、竹刀で床を叩く。
女子生徒A、ビクリとしながら不気味そうに滝川を見る。
滝川「今から私語は禁止や!」
うんざりした様子の生徒たち。
滝川「君が代、斉唱! 全員起立!」
だるそうに立ち上がる生徒たち。
滝川、床を竹刀で叩く。
滝川「シャキッと立て、シャキッと。やり直しや」
生徒たち、不服そうに着席する。
滝川「君が代、斉唱! 全員起立!」
軍隊の如き勢いで立ち上がる生徒たち。
滝川、ご満悦の様子で一同を見渡す。
男子生徒のほとんどが学ランのボタンを上まで閉めておらず、シャツをズボンの外に出し
ている。
滝川「(男子生徒たちに)お前らなめてんのんか!」
男子生徒A「何がやねん」
滝川「今から、大事なお国の歌を歌おうという、この時に、何やそのだらしない格好は!」
男子生徒C「お前も、さっきまでやってたやんけ」
滝川、竹刀で床を叩く。
滝川「さっきまで、だらしない格好してても、ここぞと言うときはビシッと決める。これ
をケジメと呼ぶ! その緩い頭にしっかり叩き込んどけ」
滝川、再び竹刀で床を叩く。
怯える男子生徒C。
滝川「さっさと直せや!(他の男子生徒にも)お前らもや」
男子生徒たち、半泣きでオロオロしながら制服を正す。
呆れ顔の女子生徒たち。
滝川、女子生徒たちを鋭い視線で見渡す。
女子生徒B「エロい目でジロジロ見んなっちゅうねん」
女子生徒たち、意地悪にクスクス笑う。
滝川、竹刀で床を叩き、
滝川「茶髪に、ピアスに、ゴテゴテの爪。何よりも、お前ら、足、出しすぎちゃうんか」
女子生徒A「滝川、やらしいー」
舞、机の上に載ってスカートに手を置き、
舞「もっと見したろか?」
男子生徒たち、狂喜乱舞で大騒ぎする。
女子生徒たち、舞を指差し大笑いする。
滝川、舞の足を手で叩く。
舞「ああん、下から覗かんといてー」
と、スカートを押さえる。
滝川「お前が上にいてるんであって、俺が下にいてるんじゃない!」
女子生徒A「滝川の話だけ聞いてたら、何かエロいな」
生徒たち、更に大爆笑する。
舞「キャッ」
と、頬に手を当てる。
笑いの止まらない生徒たち。
滝川、床に竹刀を何度も叩きつける。
日野、立ち上がり、
日野「ちょっと、あんたら静かに」
滝川「誰がぶっとい大根見て、欲情するんじゃ! この、どアホ!」
膨れっ面の舞。
舞「先生、滝川君、私の足、大根って言うー」
日野「小林さん、さっさと降りなさい」
舞「でもなー」
日野「早く!」
舞「はーい」
と、机から降りる。
日野「それと滝川君」
滝川、ピアノの椅子を竹刀で示し、
滝川「御老女は、あちらへ」
日野「あんた、全然仕切れてへんやないの」
滝川「先生、これからですよ。口出しせず生徒を見守るのも教育の一貫じゃないんですか
?」
日野「次、大騒ぎになったら終わりやで」
滝川「畏まりました(生徒たちに)お前ら、聞いての通りや。この時間だけで済まんかっ
たら放課後も休みもないと思え!」
生徒たち「ええー!」
日野「そんな事、一言も言うてない!」
滝川、竹刀で床を叩き、
滝川「冗談やないからな! 心して掛かれ!」
半泣きの生徒たち。
飽きれ顔の日野。
 ×   ×   ×
生徒の間を、巡回する滝川。
浪川、小声の上に猫背で歌っている。
滝川、浪川に近寄り、
滝川「姿勢は気を付けや。手は足の横に付けて、指先まで伸ばす」
他の生徒も、滝川の指示で一変に姿勢を正す。
滝川、立ち止まり生徒たちの歌に耳を澄ませる。その表情、不機嫌そのもの。
滝川「あかん、あかん! 息継ぎの場所、間違えてる。先生の伴奏がまずいんですよ」
日野「何、言うてんのん。毎年これで誰にも文句、言われたこと無いで」
滝川「でも、僕は入学式のとき、ちょっとイラっときましたけどね」
日野「何で、その場で言わへんのん。中坊になったばっかりで、臆病風、吹かしてたか」
滝川、竹刀で床を叩く。
日野と生徒たち、ビクリとする。
滝川「先生、入学したての僕は心苦しかったんですよ。年長者に、ましてや音楽が専門の
先生に意見するなど。しかし、これが最後のチャンスやから、意を決して物申してるんで
す。何でか分かりますか。今この場で注意しとかんと、先生は一生、我が国の国歌を間違
えたまま伴奏して、その教え子もまた」
日野「分かった、分かった! そこまで言うんやったら、あんたが一回手本に歌ってみぃ
な」
滝川「どいつも、こいつも愛国心の欠片もない。よう聞いとけよ」
滝川、『君が代』を朗々と歌う。
♪君が代は千代に~
感心した様子で滝川を眺める生徒たち。
滝川「そして、歌い終わったら、国旗に一礼」
滝川、鉢巻を取り、頭上に掲げて一礼する。
生徒たち「(感激して)おおー」
音楽室の窓から、この様子を眺める竹村。
滝川、竹村に気づいて扉を開け、
滝川「先生いかがでしたか? 一緒に練習しませんか」
忌々しそうに滝川を睨む竹村。
滝川、扉から顔を出し、
滝川「先生ー! ただ今、憲法第九条、絶賛製作中でーす」
戻ってくる竹村。
竹村「九条に目覚めて何で、君が代や」
滝川「我が国は民主主義の国ですから」
と、微笑み返す。
竹村「あ……せやな。九条の方、楽しみにしてるわ」
滝川「承知しました!」

第十章 『大東亜戦争』学んで……

○舞の自宅・舞の部屋(夜)
睦、ドアを少し開けて中の様子を窺う。片手に冊子を持っている。
舞、机に頬杖をついてぼんやり考え事をしている。
睦、舞の目の前で手を振る。
驚く舞。
睦「ええもん、見つけてん」
睦、持ってきた冊子を舞に渡す。
冊子の表紙に『大阪大空襲 体験記』と記されている。
舞、冊子をパラパラめくる。
睦美「それお婆ちゃんが、戦争の話したくないからって、くれてん」
舞「よくよく考えたら、何でお婆ちゃんに話し聞かへんのん?」
睦「お婆ちゃん、曾お祖母さんなくなった時ショックで一時的に声失ったらしいんよ」
驚く舞。
睦「戦争っていうのは私らじゃ想像つかんほど過酷な経験やと思うねん。そういう辛いこ
と、どうやって質問していいか分からんわ。舞も辛い思い出、質問されるの嫌やろ」
舞、しょんぼりと冊子に目を落とす。
睦「滝川君に教えてもらった後で、これ読んで良かったわ。太平洋戦争って教科書の一部
分としか捉えて無かったけど、やっと家族の苦しみとして向き合えた気がするわ」
舞「ずっと読んでなかったん?」
睦「何か恐くて。でも今回、大東亜戦争の勉強してやっと読む勇気が出た。いろいろ、あ
りがとうな。会ったことのない、お祖父さんとお祖母さんの事、初めて深く考えることで
きたわ」
舞「それ言うたら、私もやん。歴史は単なる学問じゃなくて、私らの人生と直結してるっ
て気付いたわ」
睦「それ読み終わったら、声かけて。子供の時に、ちょっとだけお婆ちゃんから聞いた話
するわ。きっと、読み終わった後の方が理解しやすいと思うから」
と、扉を閉めようとする。
舞「なあ、お母さんが、お婆ちゃんの思い出壊したんちゃうで。ルーズベルトとトゥルー
マンが壊したんやで」
睦「……せやな」
と、寂しそうな笑みを浮かべて部屋を出る。
舞、冊子を読む。

○中学校・教室(朝)
ホームルームの時間。
教壇に立つ水野。
水野「もうじき卒業式やけど、卒業製作どんな感じや。滝川ー」
滝川、パンを頬張りながら、万事OKとばかりに親指を立てる。
水野「おい、朝飯、家で食うてこいよー。ほんで、何割ぐらいできてるねん」
滝川、浪川の背中を叩く。
浪川「痛っ。(滝川に)お前に聞いてるんやろ。俺様は、お前の小間使いやないっちゅうね
ん」
滝川、頬張った口を指差す。
浪川「(水野に)あー、0.9割ぐらいです」
水野「えーーー! っていうか、お前、歩合の数、分かってるか。10のうち9できてるん
やったら、9割で、ええねんぞー。もうじき受験やし復習しとけよ」
浪川「ほ、ほ、ほんまに、いっ、1割もできてへんし」
滝川、浪川の頭を叩く、
滝川「何で、みんなの努力踏みにじってまで、そんなセコい見栄張るねん。(水野に)先生、
来週には組み立てられるから」
水野「おお、そうか! やったなぁ! みんなお疲れさん」
生徒たち、気だるそうにガッツポーズ。
生徒たち「おおー」

第十一章 大東亜戦争

○舞の自宅・居間(夕方)
鞄に荷物を詰める睦。
学校帰りの舞、部屋に入ってくる。
舞「ただいま」
睦「あ、舞、今日、お婆ちゃんの家に行ってな。もう電話してるから」
舞「出張?」
睦「うん、明日、朝から広島で入学説明会あるから、夜の内に新幹線で移動しとこうと思
って」
舞「明日、土曜やで」
睦「社会人向けやねん」
舞「ほんじゃ、今日、時間ないな」
睦「何?」
舞「空襲の体験記、読み終わったから、教えてもらおうかと思ってんけど」
睦、置き時計に目をやる。
時計の針は16時を示す。
睦「いいよ、新幹線の時間変更したらいいだけやし」

○小林宅・珠代の部屋(夕方)
舞、曾祖父母の遺影の前で正座して手を合わせる。
部屋を覗く珠代と由美。
舞、珠代と由美の間を抜けて自分の部屋に向かう。
由美「舞ちゃん、もうじきご飯やで」
舞「ごめん、明日食べる。冷蔵庫に入れといて」
由美「明日って。ちゃんと食べんと」
舞、部屋の扉を閉める。
珠代と由美、怪訝な表情で顔を見合わせる。

○同・舞の部屋(夜)
舞、机に突っ伏して眠る。
肩に半纏がかけられている。
×   ×   ×
舞、大東亜戦争の夢を見る。
昭和初期の長屋。
喜一郎と舞が向かい合って正座している。
喜一郎「珠代、お母さんの言うことちゃんと聞いて、お手伝いしぃや」
舞、ぼんやり喜一郎の顔を見る。
舞(M)「私が珠代……ということは私がお婆ちゃん? この人は遺影の曾お爺ちゃん?」
喜一郎、舞の膝を軽く叩く。
喜一郎「珠代、聞いてるんか?」
舞「はい」
喜一郎「お姉ちゃんやねんから、弟や妹の面倒、ちゃんと見なあかんで」
舞「はい!」
×   ×   ×
戦時下の街。
広場で出征兵士を見送る町内の人々、日章旗を振って叫ぶ。
町内の人々「出征、万歳、万歳!」
台の上に立つ喜一郎、敬礼している。
お腹の大きい志津と、その横に舞、君代、祥太郎も町内の人々に混じって同様に見送る。
×   ×   ×
戦地。銃撃戦の最中。
散兵壕(さんぺいごう)に身を隠す喜一郎、滝川。一様に緊迫した面持ち。
僅かに銃撃がやむ。
喜一郎と滝川、顔を見合わせる。
喜一郎・滝川「今生の別れ」
喜一郎と滝川、銃を持ち上げ散兵壕を飛び出すと、敵陣に走り込む。
飛び交う弾丸。
喜一郎が、滝川が、口々に叫びながら命を散らす。
喜一郎・滝川「天皇陛下万歳! 大日本帝国万歳!」
軍服姿の舞、血まみれの喜一郎と滝川の骸(むくろ)を見下ろす。
舞「(前方の敵を見据え)天皇陛下万歳! 大日本帝国万歳!」
舞、銃を構えて敵陣に向かって走り込む。
×   ×   ×
長屋。
志津、虚ろな目でお骨箱を抱える。
神妙な面持ちの舞と君代と祥太郎がその前に座る。
布団ですやすや眠る幸代。
志津「お父様は名誉の戦死を遂げられました」
お骨箱を持つ志津の手が震える。
舞、君代、祥太郎、俯いて涙を堪える。
志津、仏壇にお骨箱を置き、
志津「珠ちゃん、お母さん、ちょっと具合悪いから先寝るわ。みんな、お姉ちゃんの言う
ことちゃんと聞いて、いい子にしてるんやで」
志津、隣室に入り障子を閉める。
布団を被って泣いているのか、時折、すすり泣く声が聞こえる。
微かに聞こえる母の泣き声につられて、正座した君代、祥太郎も俯いて涙を流す。その横
であどけない寝顔で眠る幸代。
舞、幸代の寝顔を見ながら、
舞「名誉の戦死……天皇陛下万歳。大日本帝国万歳」
舞の頬に一筋の涙が伝う。
×   ×   ×
町内、夜半。
空襲警報が鳴り響く。
B29からバラバラ投下される焼夷弾。
家や建物に着弾するとシャーッという音と共に火が一面に広がり、炎がメラメラ燃え上が
る。
あちらこちらの家屋にも火が付き、一帯が火の海となる。
警防団や町内の人々、手に手にバケツを受け渡して水を撒くが消火が追いつかない。
家屋が崩れ落ちる。
防火していた人々、熱さに耐えきれず散り散りに逃げてゆく。
志津、背にしっかりと幸代を巻き付けて、もう片方の手で祥太郎の手を握る。
志津の目の前に防空頭巾を被った舞と君代がしっかり手をつないで立っている。
志津「珠ちゃん、喜美ちゃん、お母さんの後、しっかりついて来るんやで」
頷く舞と君代。
志津「もしお母さん、見失ったら、八中、目指しや。お母さん、探したらいかんで。お母
さん、そこで待ってるからな」
不安そうに頷く舞と君代。
×   ×   ×
薄暗い防空壕。
外の爆発音、悲鳴、サイレンなどの音が響き渡る。
舞と君代、不安げにしっかり手をつないで座る。煤で顔が黒くなっている。
その隣に日野が座り、その母親らしき老女が横たわる。
舞「ここ、何で、おばちゃんらだけなん?」
日野「ここは危ない言うて、みんな別の防空壕に逃げてもうた」
舞と君代の表情が曇る。
日野「あんたらも、他、当たった方がええわ」
舞「おばちゃんらは、どうするん?」
日野「おばちゃん、病人と一緒やし。もう、これ以上、逃げれんから、ここで死ぬわ」
舞と君代、しょんぼり俯く。
日野「あんたら、お母さんは?」
舞「はぐれた」
君代、ぐずつく。
舞、君代の背中をさすって慰める。
舞「八中に行ったら、お母さんにちゃんと会えるからな」
君代、ヒクヒク言いながら頷く。
近くで爆弾が炸裂し、壕が揺れる。
怯える一同。
誰も話せず、歯を食いしばって空襲の止むのを待つ。その間、何度も爆弾の炸裂音がし、
壕が揺れる。
外が静かになる。
日野「空襲やんだんかなぁ」
舞と君代、嬉々として外に出ようとする。
日野、二人を制し、
日野「ちょっと待ち、危ないから。おばちゃんが先、覗いたるさかいに」
日野、防空壕から用心深く顔を出して外の様子を眺める。
日野「……もう、大阪も終わりや」
と、防空壕から外に出る。
続いて舞と君代も外に出る。
夜の闇に切れ目なく盛りを過ぎた炎が紅に浮かび上がる。
辺り一帯の建物は跡形なく消えてしまい、そこかしこの電線がだらしなく垂れ下がってい
る。そして遥か彼方先まで、平らな土地が続く。
焼け野原と化した大阪の街を呆然と眺める舞、君代、日野の後ろ姿。
×   ×   ×
避難所の第八中学校、校庭。
避難者でごった返す。
舞と君代、志津を捜す。二人とも煤で顔が黒くなっている。
舞・君代「お母さーん、お母さーん!」
二人と僅かに離れた所で、志津、舞と君代を捜して辺りをキョロキョロ見回している。志
津もまた煤で顔が黒くなっている。手を繋いだ祥太郎と負ぶってる幸代も煤で顔が黒い。
志津「珠ちゃん! 君ちゃん!」
舞と君代、志津の声に反応し振り向く。
志津、舞と君代の姿を確認すると笑顔で手を振る。
舞と君代、全力で志津の元に駆け寄る。
志津、舞、君代、微笑み合う。
志津「祥ちゃんも、さっちゃんも無事やで」
手を繋いだ祥太郎と負ぶっている幸代を二人に見せる。
微笑む舞と君代。
志津、手ぬぐいを取り出し、舞と君代の顔を拭ってやる。
志津「よう頑張った。よう頑張った」
舞と君代、志津に抱きつくと、堪えていた涙がポロポロ溢れ出る。
志津、幸せそうな笑みを浮かべて舞と君代を抱き締める。
×   ×   ×
第八中学校、教室。
志津、子供たちを連れて中に入る。
乳飲み子を負ぶっている由美。
志津、由美に近づき、
由美「奥さん、無事やってんな」
由美、虚ろな目で志津を見る。
由美「へえ」
志津、乳飲み子の頭を撫でる。
志津「あんたも、よう頑張ったなぁ」
由美「死んでますねん」
志津「え?」
由美「この子、死んでますねん」
と、乳飲み子を志津に見せる。
志津、乳飲み子の背中をさする。
志津「そうですか、そうですか」
×   ×   ×
廃墟と化した町内。
志津と子供達、とぼとぼ歩く。
前方から水野、疲れ果てた様子で歩いてくる。
水野「ああ、小林さん、ご無事でしたか」
志津「団長さんもご無事で。ご家族の皆さんは?」
水野「妻も息子も無事なんですけど、親父が」
と、手に持ったハトロン紙の封筒を見せる。
志津と子供達、不思議そうに封筒を眺める。
水野「死体が多すぎて、一体一体焼いてられんからって、何体もまとめて焼かれて……(
俯いて涙を堪えながら)役所の人がスプーン一杯分の遺灰を、この封筒に」
志津、封筒に手を合わせる。
子供達も続いて封筒に手を合わせる。
×   ×   ×
十三、淀川付近。日中。
機銃掃射が低空飛行し、人々を狙い撃ちする。
逃げ惑う人々。
撃たれて怪我した人々がそこいらに呻きながら転がる。
舞と君代、手をつないで逃げ惑い、命からがら橋の下に逃げ込む。
恐怖に顔を引きつらせる舞と君代。
×   ×   ×
国鉄 京橋駅、日中。
B29、飛来する。
電車、線路の上で止まる。
降ろされた乗客、高架下に逃げ込む。
B29、無数の焼夷弾を投下する。
崩れ落ちる駅の高架。人々の悲鳴が轟く。
駅周辺を逃げ惑う人々。
そこかしこに血まみれの怪我人や遺体が転がる。
焼け焦げた新聞の切れ端が熱風に舞う。
その切れ端に印字された昭和二十年八月十四日が見え隠れする。
×   ×   ×
第八中学校、校庭。
朝礼台に置かれたラジオから流れる玉音放送。
玉音放送「堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び」
校庭に集まった人々がラジオの前で正座し、天皇陛下のお言葉に涙する。
その中に幸代を負ぶった志津、舞、君代、祥太郎の姿もある。
みな、悔しそうに涙する。
×   ×   ×
バラック小屋。
顔色の悪い志津、配給された僅かな米と芋を調理して、四人の子供らに与える。
舞、自分の分を半分残し、
舞「お母さん、食べて」
志津「お母さんは、ええねん」
舞「でも、お母さん、殆ど食べてないやん」
志津「大人はちょっとでも大丈夫やねん。あんたが食べなさい」
舞「お母さん!」
志津「お母さん、工場に行ってくるから、みんなの事、頼んだで」
と、立ち上がると同時によろめく。
舞、志津に手を貸す。
志津「大丈夫やから」
と、微笑みヨロヨロと表に出て行く。
×   ×   ×
食品工場。
大きな鍋の中でグツグツ煮込まれる磯のり。
大人の工員に混じって作業をする舞。
女子工員A「珠ちゃん、お母さんの具合どないなん」
舞「寝込んだまんま」
女子工員A「(小声で)弁当箱、持っといで」
と、磯のりの鍋を指差す。
女子工員A「お母さん、ちょっとは元気になるわ(口に人差し指を当て)工場長さんに内緒
やで」
舞、微笑んでこっそり持ち場を離れようとすると、血相を変えて走り込んで来た君代とぶ
つかる。
舞「君ちゃん、こんな所で走ったら危ないやん。怪我するで」
君代「お姉ちゃん! お母さんが」
×   ×   ×
バラック小屋。
横たわる志津の横に医者と祥太郎と幸代が座る。
医者、険しい表情で志津の診断をする。
舞と君代、息を切らして志津の枕元に座る。
志津「珠ちゃん、君ちゃん、みんなのこと頼んだで。ほんまに、堪忍な。もっと、みんな
と一緒にいてたかったのに」
舞(M)「嫌や、お母さん。私も、もっとお母さんと一緒にいたい……あれ? 声が」
君代、祥太郎、幸代、泣きじゃくる。
志津「姉弟仲良く力合わせて、一生懸命生きてな。お父さんと二人で見守ってるからな」
舞、慌てながら弁当箱を開けて志津に磯のりを見せる。
志津、微笑み、
志津「大収穫やな。日本もこれから、ようなっていくわ。そしたら、もっといろんな美味
しい食べもん手に入るようになるで」
舞、声が出ず口をパクパクしながら志津の手を取り首を横に振る
志津「ひもじい思いばっかりさして堪忍やで、ほんまに、ほんまに堪忍な」
と、力尽きて目を閉じる。
君代「お母さん、死なんといて!」
舞、必死で声を出そうと口を開くものの声が出ない。
医者、志津の脈を取り、残念そうに首を横に振る。
大声で泣く君代、祥太郎、幸代。
舞、目を見開き志津の亡骸を見る。涙がポロポロ目からこぼれ落ちるものの、声が出ず口
だけパクパクさせる。
舞(M)「お母さんも、お母さんも一緒に」
×   ×   ×
現在の舞、苦しそうに口をパクパクしている。
舞「(大声で)一緒に美味しいもん食べよう!」
自分の声に驚きパチリと目を開ける舞。

○同・ベランダ
舞の声に驚き、手に持ったメダカの餌を水槽の中に落とす珠代。
水面を覆うように大量の餌が浮く。
悲しそうに、その水面を眺める珠代。
メダカ、我先にと大量の餌に集る。

○同・洗面所
修一、舞の声に驚いて歯磨き粉を壁にぶちまける。
悲しそうに壁を眺める修一。

○同・居間
由美、舞の声に驚いて仕分けていた結婚式の写真をそこいらにばらまく。
散らばる写真を悲しそうに眺める由美。

○再び舞の部屋
珠代、由美、修一、部屋に入る。
由美「どないしたん、舞ちゃん」
舞、悲壮な顔でキョロキョロする。
珠代「大丈夫か?」
舞、珠代の顔を確認するとポロポロ大粒の涙を流す。
舞「声、出た」
珠代「それが、どないしたん?」
舞「やっと、声出てん」
と、珠代に抱きついて泣き出す。
舞「お婆ちゃん、いっつも、ごめん」
珠代、首を傾げながら舞の背中をさする。
修一「そんなん遠慮せんと、早よ言うてくれたら、ええのに。よっしゃ、今日は、みんな
でうまいもん食いに行こー!」
由美「私、フレンチ」
珠代「お母さん、お寿司」
修一「あんたらに聞いてない! 舞ちゃんに聞いてるねん。何する? 舞ちゃん」
舞「えーっと……」
由実「あ、お母さんもって、言うてたな。むっちゃんにもメールしとくな……って、出張
か」
修一「あいつは、ええ、ええ」
由美「そんなん言うてたら、また、怒られるで」
舞「明日のお昼、帰って来る」
由実「じゃあ、明日の夜にしようか」
と、スマホを操作する。
珠代「そうや! メダカの餌」
由美「どうしたん?」
珠代「舞ちゃんのせいで、メダカの餌、全部水槽に落としてもうたわ。また買いに行かな」
膨れっ面の舞。
修一「食い過ぎて、金魚になれるんちゃうか。その次は鯛か?」
珠代「なるかいな!」
由美「突然変異っていうこともあるし。目の小さい網やったら、餌回収できるんちゃう」
珠代「え……そんなん聞いたことないで」
修一「急がな、おかん。えらい、こっちゃ、えらい、こっちゃ!」  
珠代「水槽の水汚れるだけやがな」
修一「糞しすぎて」
珠代「餌が散らかって、水が汚れる言うてるねん。食べたい分食べたら置いときよるがな」
由美「大丈夫! お義母さん、後は私らに任せといて。えらい、こっちゃ! えらい、こ
っちゃ! あ、お義母さん、これ」
と、無造作に持った写真を預ける。
修一と由美、駆け足で部屋を出る。
珠代「(扉の外に向かって)あんたら、全然、話、聞いてないやん。メダカまで掬わんとい
てや。ほんまに、もう」
と、手に持った写真を見る。
大欠伸する舞。
珠代「舞ちゃん、休みやからって、いつまでも寝てたらあかんで。ほら、これ」
と、舞に写真を渡して部屋を出る。
舞、写真を眺めて微笑む。
写真には新郎新婦を中心に、めかしこんだ親族一同が段上に並んで写っている。
舞、写真を指差しながら、
舞「珠ちゃん、君ちゃん、祥ちゃん、さっちゃん、そして、その子供たち、その孫たち」

○同・珠代の部屋(朝)
舞、曾祖父母の遺影の前で手を合わせる。
遺影の前に結婚式の写真が供えられている。
舞(M)「曾お爺ちゃん、曾お婆ちゃん、命を繋いでくれてありがとう。そして、あなた
たちは、私たち家族の誇りです」

第十二章 完成! 『新・憲法第九条』

○中学校・中庭
スーツ姿の水野と生徒たちが憲法第9条のオブジェクトの前に集まっている。
水野、必死にオブジェクトの文字を読んでいる。
その後ろでニヤニヤ笑う生徒たち。
水野「あれ、あれ、あれれー!」
滝川「先生、どない。これが真の憲法第9条や。日本の未来を繋ぐ大事な条項や」
水野「いや、お前、こ、国防軍って。それに、後、あれが無くなってる、あれ」
滝川「どれ?」
水野「『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』っていうのは、どこいってん?」
滝川「持ってるのに、嘘書いたら、あかん! 最高法規やぞ。分かってるか?」
水野「え? ま、まぁ、言われたら、そうやけど……」
竹村、嬉しそうに意気揚々とこちらに向かって来る。
竹村「おおー! 立派なんできてるがな(生徒たちに)ようやった!」
礼儀正しく深々と竹村にお辞儀する生徒たち。
竹村、嬉しそうに何度も頷く。
竹村「よっしゃ、読んでみるで」
水野、オブジェクトの前に立ちはだかり
水野「あ、先生、式、もうじきですし、後でゆっくりと」
竹村、時計を見る。
竹村「まだ充分、時間はありますよ」
と、水野を押し退ける。
竹村、右端から堪能するように一文字、一文字読む。
竹村「彫り込むと、また、いい味出すなぁ」
滝川「ありがとうございます!」
竹村「ん?」
水野、手を叩き、
水野「よっしゃ、みんな、一回、教室に戻ろうか」
先を読み進める竹村、次第に憤りで肩が震える。
撤退し始める生徒たち。
竹村、振り返り、
竹村「滝川! ちょっと来い!」
水野「先生、そろそろ保護者の方も来られますので。また後で」
滝川、水野を押し退け、
滝川「はい、何すか?」
竹村「貴様という奴は、神聖な平和憲法を何と心得る」
と、滝川の胸ぐらを掴む。
滝川、怯む様子もなく、ほくそ笑む。
滝川「平和憲法と仰いますが、現行憲法で平和を維持する事は不可能です。現実的に去年、
北朝鮮は日本に向けてミサイルを発射しました。武器を持つ相手から我が国を守るのに、
自衛隊に丸腰で臨めと仰ってるんですか?」
竹村「憲法九条さえ改正されんかったら、どっこも攻めてこん」
滝川「逆です。その憲法九条が我が国を脅かしてるんです。憲法九条のせいで我が国が、
手も足も出せんことを知ってるから、中国もロシアも日本の領土、領海で好き放題するん
です。このままでは、北朝鮮の拉致被害者を救うチャンスが訪れても自衛隊は動くことも
できません」
水野、二人の間に割って入る。
水野「(竹村に)うちのクラスの子に最後の挨拶したいんで、これぐらいにしてもらえませ
んか(滝川に)教室に戻り(他の生徒たちに)みんなも、早く教室に戻れー」
意気消沈した生徒たちトボトボと校舎に戻る。
竹村「おい、滝川、将来は、お前も人殺しの仲間入りか! 自衛隊に入りたいんやろ。親
も親やったら子も子やなぁ」

↑/**共産党の思想より**/
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参考:
産経新聞
「防衛費は人を殺す予算」 共産・藤野政策委員長がNHKで 他党議員は発言取り消し
を勧めたが…
https://www.sankei.com/smp/politics/news/160626/plt1606260016-s1.html_2_
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滝川、竹村の方に猛突進する。
慌てて後を追いかける男子生徒たち。
水野、間一髪の所で滝川の前に立ちはだかって食い止める。
水野「(小声で)今日はお前にとっても、お前のご両親にとっても晴れの日や」
滝川、怒りが収まらず竹村に掴みかかろうとしている。それを後ろから必死で食い止める
男子生徒たち。
水野「(小声で)滝川、今日を乗り越えられたら、お前もお父さんと同じ強い人間になれる。
あんなおっさんらの天下なんか、後、僅かや。お前は立派な意見持ってるねんから、あん
な奴、相手にするな」
舞、竹村の方に勢いよく歩み寄り、
舞「先生は卑怯です!」
竹村「ひ、卑怯? いきなり、何や」
舞「議論とは全く関係のない誹謗中傷で相手を攻撃することを卑怯と言います! 滝川と
滝川が最も尊敬するお父さんに対して、とんでもない言葉で、たった今、罵倒しました。
これを卑怯と呼ばずに何と呼ぶんですか」
竹村「関係ないことない!」
舞「関係ありません! 左翼の人たちは自分が議論で負けが混むと、必ず議論から脱線し
ます。テレビ番組ならまだしも、血税を使った国会の審議中でも平気で脱線して税金の無
駄遣いをしています。先生は、もっと酷い。脱線するだけでなく、我が子同然の生徒に対
してあの物言いは戦犯ものでしょ」
竹村「せ、戦犯?」
舞「だって滝川は根拠をもって冷静に意見しているのに、先生は何の根拠も示さず神聖だ、
平和憲法だ、人殺しだと、こちらが恥ずかしくなるほど稚拙でした。還暦前のおっさんが
遣う言葉ではありません。五、六歳の子供が、持てるだけの言葉を必死にぶつけてる様に
しか見えませんでした。正直、気味悪いです」
竹村「い、いや、しかしな」
舞「だまらっしゃい! 九条が平和を守ってる? 言葉だけで平和を維持できるほど、国
際社会は甘くありません! 前にも言いましたよね!」
水野「もう、それぐらいに」
舞「だまらっしゃい! だまらっしゃい! だまらっしゃーい! (竹村に)先生の行動の
方が余程、私達の平和を乱しています。先生は滝川の胸ぐらを掴んだり、滝川や滝川のお
父さんに対して薄汚い言葉で罵ったりして、非常に暴力的です。言葉と行動が裏腹です。
私はそんな先生の言葉に何の重みも共感も感じません。以上!」
竹村は勿論のこと、滝川、水野、男子生徒たち、戻ってきた生徒たち、共にポカンと口を
開けて舞を眺めている。
舞、生徒たちの方に向いて、
舞「野郎ども、教室に戻るべー!」
生徒たち「お、おー」
と、首を傾げながら校舎に向かう。
舞「駆け足! おっさんのせいで、最後の貴重な時間食い潰されてもた」
駆け出す生徒たち。
舞、滝川の背中を叩き、
舞「戦は始まったばっかりや。私がもっと大勢の前で、あの、おっさんを叩きのめしたる。
我が家の窮地を救ってくれた礼や」
と、ニヤリと笑って駆け出す。
滝川「え?」
水野「ハハハ、女の子は勇ましいなぁ」
滝川「お、おう」
と、はにかんで笑う。
水野「惚れたか?」
滝川「アホか」
と、水野を突き飛ばし校舎に全速力で走り出す。
水野「あ、痛たたた、何でやねん」
竹村「あーあ、この国も終わりやなぁ。あんた、生徒らに何を教えてててんや」
水野「僕は何にも。彼らは自分の力で事実を突き止めて、未来への道筋を見つけたんです。
僕は彼らが作る未来が楽しみですよ」
浪川「先生、早く!」
水野「おう」
と、手を上げると駆けて校舎に走り出す。
竹村「チッ」
と、悔しそうに水野と生徒たちの後ろ姿を睨む。

最終章 卒業

○中学校・教室
生徒たち、最後の談笑を楽しむ。
滝川と舞、机の上に広げた答辞の原稿見ながら打合せする。
舞「あのおっさんを挑発できるのって何やろ?」
滝川「いろいろあるで、天皇陛下、憲法改正、教育勅語、君が代……」
舞「君が代、最初に歌うし、もう一回壇上で歌うんもなぁ」
滝川「とは言え、天皇陛下を、こんなことで、引き合いに出すのも無礼やし」
舞「教育何とかって何?」
滝川「我が国の美しい道徳観念を凝縮した明治天皇からの贈り物や……父母ニ孝ニ兄弟ニ
友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」
舞「え、え、え?」
滝川「父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦び合い、朋友互に信義を以っ
て交わり、(文部省訳)。要は日本古来の道徳観念を凝縮して言葉にしたためてんや」
舞「当たり前のこと、何でわざわざ」
滝川「明治時代、一気に西洋文化が流れ込んで、日本中が西洋フィーバーで浮かれ倒して
てんや。その様子を心配された明治天皇が時の総理大臣に依頼して作らせたのが教育勅語
や」
舞「へー」

○同・体育館
舞台壇上正面左に掲揚される日章旗。
君が代を歌う卒業式の参加者たち。
保護者席に珠代、睦美、由美の姿もある。
竹村を始め一部の教職員、口を開くも歌わない。
教員の口元を見て回る教頭、困惑の表情。
×   ×   ×
舞、壇上で挨拶する。
舞「皆様方のご活躍をお祈りしつつ、御礼の言葉とさせて戴きます。最後に明治天皇から
の贈り物『教育勅語』を唱和し、締め括りの言葉とさせていただきます」
一部の教職員、どよめく。
舞「朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ」
竹村、立ち上がり、
竹村「やめろ、小林! お前は中学最後の日を台無しにする気か! 戦争を美化する様な
軍国主義の教育勅語なんか取り上げやがって」
舞、演台を叩き、
舞「先生! 天皇陛下の悪口を言わないでください。先生、国旗に背を向けないでくださ
い。先生、自衛隊に敬意を払ってください。先生、君が代を一緒に歌ってください。そし
て先生、一緒にこの美しい日本の国を愛してください」
舞、全員の方を向き直り、
舞「教育勅語がお嫌いな方もいらっしゃるようですので、続きは皆さんで調べてください。
最も美しい国語、世界中で愛されている国語です。本日は素晴らしい卒業式を誠にありが
とうございました」
舞、一礼して壇上を降りる。
場内、シンと静まり返る。
睦、立ち上がりスタンディングオベーション。
睦「舞! よう言うた!」
慌てて珠代と由実が睦の服を引っ張る。
珠代「(小声で)やめんかいな、恥ずかしい」
他の保護者たちもパラパラ立ち上がりスタンディングオベーション。
舞、水野に促され壇上に立って一礼する。
更に大きな拍手が沸き起こる。
×   ×   ×
司会「卒業生、起立。『仰げば尊し』斉唱」
日野、ピアノの椅子に座り『仰げば尊し』の伴奏を演奏する。

○同・中庭
体育館から流れる『仰げば尊し』の合唱。
柔らかな日差しに包まれる新憲法第九条のオブジェクト。

                      【完】

平成三十年版 卒業

【参考書籍】
・大東亜戦争を見直そう/名越 二荒之助 著
・パール博士の日本無罪論/田中 正明 著
・大東亜戦争の真実~東條英機 宣誓供述書/東條 由布子 編
・教育勅語のすすめ/清水 馨八郎 著
・田母神塾/田母神 俊雄 著
・世界が語る大東亜戦争と東京裁判/吉本 貞昭 著
・戦争犯罪国はアメリカだった!/ヘンリー・S・ストークス 著
・教育勅語の真実/伊藤 哲夫 著
・一気に読める「戦争」の昭和史/小川 榮太郎 著
・産経新聞「ふりさけみれば」(新聞小説)

【参考WEBサイト】
古事記/現代語訳
・三、大東亜戦争の目的と結果(http://www.senyu-ren.jp/AA/11.HTM)
・ウィキペディア『昭和』(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C#.E9.87.91.E8.9E.8D.E6.81.90.E6.85.8C)
・日露戦争の原因(http://www.t3.rim.or.jp/~miukun/R-JW%201.htm)
・msn産経ニュース 2011/12/7
「ルーズベルトは狂気の男」 フーバー元大統領が批判"(http://sankei.jp.msn.com/world/news/111207/amr11120722410009-n1.htm)
・日教組の「自衛官の子いじめ」 「人権」はなかった…(http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4759/19990218.html)
・日本共産党HP~憲法より(http://www.jcp.or.jp/kenpou/)
・できるかな?じゃねえよやるんだよ。今がその時だ!/)
 「君が代」の正しい歌い方を知らない日本人が多過ぎませんか?"(http://minkara.carview.co.jp/userid/761752/blog/20894355/)
・【気をつけ】君が代を日本人らしく歌おう【一礼】(http://mimizun.com/log/2ch/asia/1150045953)
・卒業式の答辞の文例(http://blog.livedoor.jp/nz_troutbum/archives/991570.html)
・ビジネスマナーと基礎知識/卒業式の挨拶(http://www.jp-guide.net/businessmanner/b-manner/speech-b-sotsugyou.html)
・日本が日本であるために/開戦の詔勅(http://jiritsusaisei.blogspot.jp/2011/02/blog-post_12.html)
・「対華21ヶ条の要求」と日華条約(http://www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/7517/nenpyo/1911-20/1915_taika_21.html)
・正当史観年表/『対華21ヵ条の要求』と日華条約(http://seitousikan.blog130.fc2.com/blog-entry-219.html)
・日韓併合の真実/日韓併合によって朝鮮は救われた (http://www35.atwiki.jp/kolia/pages/143.html)
・MY小論/「教育勅語」誕生の経緯(1) (http://d.hatena.ne.jp/misakay/20120110)
・修身 -日本と世界- あの頃の道徳をもう一度/教育勅語成立の由来(http://www.moral-science.com/origin.html)
・縄文人の反乱 日本を大事に/世界を感動の渦に巻き込んだ教育勅語(http://blog.goo.ne.jp/s6990714726/e/c4b194aaaf8e3c6e554b7ad809d868ba)
・産経新聞HP
「防衛費は人を殺す予算」 共産・藤野政策委員長がNHKで 他党議員は発言取り消しを勧めたが…
https://www.sankei.com/smp/politics/news/160626/plt1606260016-s1.html_2_
・大東亜戦争 開戦の詔勅  (米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書)
http://www.geocities.jp/taizoota/Essay/gyokuon/kaisenn.htm

平成三十年版 卒業

先の大戦で祖父母が若くして他界しました。子供の頃は「戦争って大変だなぁ」と 深く考えた事はなかったのですが、数年前、私自身が祖父母の年齢を越えて、 ふと疑問に思いました。 『なぜ祖父母は三十代の若さで死ななければならなかったのか』 改めて新聞、書籍、WEBサイト、そして空襲の体験記を通して『大東亜戦争(太平洋戦争)』を 勉強し直し三年越しで作品を仕上げました。 私たちが学校で教えられなかった『大東亜戦争(太平洋戦争)』の知られざる事実について、 中学三年生の少女の疑問を同級生の保守派の少年が解消するという形で物語を描いています。 興味のある方、以前から疑問を持たれていた方、なぜ改憲しなければならないのか疑問に思っている方などなど、 多くの皆さまに一読いただけますと幸いです。

  • 小説
  • 中編
  • 青春
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
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