いぬかぶり 第10話
お久しぶりです。
いつぶりでしょうか。だいぶ間が空きました。
その間やっていたことは…スポーツをしていました。
暑い日が続いていたので、外でのスポーツは大変でした。
今年の夏休みは怪我をしないと言って、しなくて済みました。
でも、怪我って不思議ですよね。
ちゃんと治さないと、後から面倒なことになるのですね。
ちなみに、私の体の一部が痛みます(笑)
そんな無駄話を書いていても仕方ありませんね。
これまで読んでくださった方、ありがとうございます。
まだまだ、拙い文章だと思いますが、付き合ってくださるとうれしいです。
では、いぬかぶり 第10話 を楽しんでください。
「君は多田君とはどんな関係なのかい?あいつにあんな年が離れた友人ができるわけがないから、気になったよ。」
会議室で佐藤と社長は向かいあっていた。手元には、入ってきたときに女性社員が持ってきたお茶がある。(この人が社長?)これが佐藤の社長に対する第一印象。彼にとって、社長はもっと年を取った存在だったため、カロームの社長は新鮮だった。
「えーっと、多田さんとは、通っている喫茶店で仲良くなりました。」
社長は目を大きくした。
「え!?あいつが人と仲良くすることあんのか?」
ありえないと言わんばかりに手を振る。佐藤はこの社長と多田の間にどんな関係があるのか気になったが、とりあえず黙ってみることにする。
「なあ、佐藤君…だっけ?あいつ、その店でどんな感じなんだ?」
社長は身を乗り出して、佐藤の方を見る。
「えーっ…店によく来る人とは仲良くやっている感じです。僕自身、あの店に来てそんなに長くないので・・・。」
「そうかい。…あ、ちゃんと仕事の話をしなきゃいけないんだったね。」
そういって、社長はわきの書類ケースからいろいろ取り出してきた。
「そう、君にやって欲しいのは謝罪係だ。ひたすら、相手の機嫌を現状以上に悪くしないように謝るだけ。」
「…?もう少し、詳しくお願いします。」
社長は困ったような顔をしながら、話し始めた。
「うちのタレントで売り出している奴に犬飼って言う奴がいるんだ。で、そいつが結構発言がきついんだ。犬飼直里って言う人なんだけどね。ロケをしたところってたいてい取材を受けた人の機嫌が悪くなるんだ。こっちで、謝罪はしていたんだけど、やってたマネージャーが体調を崩しちゃって…。その人のハートが弱かったのか、耐えられなかったみたいなんだ。そこで、君はマネージャー業はやらなくていいから謝ってほしいんだ。ひたすら。」
「謝る…だけですか?」
「そうだよ。」
当たり前のような表情をして社長は頷く。
「大丈夫だ、安心したまえ。普通の社員と対等、もしくはそれ以上の収入を保証するよ。結構精神的疲労がきつい仕事らしいからね。」
佐藤は今の自分の状況を考える。(こんな社会状況の中でこんなに楽に仕事が転がっていることなんてあるのだろうか。この話を逃した後に簡単に仕事を見つけることができるのだろうか…。しかし、少し精神的にきつい仕事だという。耐えられるのだろか。まぁ、高校時代の部活で散々な目にあってきているから、耐えられる自身がある。ましてや、前の仕事と比べたらどうだろう。人のことを影から監視し続けることよりかは幾分ましなのではないか。昼夜問わず仕事が来るところよりかは、ましなのではないか。)
「私でよろしかったら、よろしくお願いします。」
いろいろ思考をめぐらせた末に佐藤は社長に頭を下げていた。
「本当かい!?」
社長は目を輝かせて、佐藤に握手を求めていた。それにこたえる佐藤。
「本当に助かったよ、佐藤君。君が来なければ、明日からの仕事はどうしようか悩んでいたところなんだよ。いやー、助かった、助かった。」
「で、犬飼さんってどんな人ですか?」
「こんにちは。」
杏がRosaに入ってくる。まっすぐカウンターの向こうのカーテンへ向かう。お母さんはまっすぐカーテンの方に向かっていった杏を見る。多田は静かに見る。酒井は一切杏の方に興味を示さない。杏はすぐにエプロンをしてすぐにカウンターの方に戻ってくる。
「杏さんこんにちは。」
高波が遠くのテーブルから杏に声を掛ける。杏はちらりと高波の方を見るだけ。
「杏ちゃんはやっぱりお客さんには興味ないのよね…。ものすごくかわいいのにね…。」
杏は静かに、カウンターの向こうの杏がよく使っている椅子に座っている。杏の手元には文庫本がある。お母さんは、杏の様子見て呟く。
「この子プライベートが一切見えないのよ。酒井君、こんな子どう思うかしら?」
酒井は自分の手元にあったパンケーキから顔をあげる。
「さあ…。少なくとも、変な趣味を丸出しにしている人間よりかは幾分かましなのではないかと思います。」
そういって、パンケーキに意識を戻す。
「そういえば、私あなた方の普段の仕事の様子を一切見たことないのよね…。普段どんな感じで過ごしているかって、一切聞かないのよね。どんな感じなの?」
高波の方に聞くお母さん。
「全員でルームシェアしているんでしたっけ。」
杏が文庫本から一切視線をそらすことなく会話に参加する。高波は煙草を吸いながら、カウンターの方にこたえる。
「確かに、ルームシェアしていますね。ただし、全員が自由な人なので大変ですけど。」
近くに座っていた酒井が突然ゲーム機を取り出して遊び始める。高波も同じようにゲーム機を取り出して遊び始める。
「高波さん、レベルいくつまで行けました?昨日、僕レベル22まで上げることができたんですよ。1時過ぎまでかかっちゃったんですけどね。」
「ちゃんと、仕事に支障が来ないようにしてるよね?―俺は、今ちょうどレベル20まで上げたところだね。」
「じゃあ、今からあっちから行きますね、藪の方から。」
「了解。」
杏とお母さんはその二人の様子をカウンターの向こうから見つめる。
「いつもの二人ってこんな感じなのかしらね。」
お母さんは小さく笑う。杏はその横で少し頷いていた。
「なんだ?見知らぬ奴が急に入ってきたぞ?しかもめっちゃ強い!!」
酒井が急に笑い始める。少し視線をそらすと、同じゲーム機を操作している多田の姿が見えた。
「行くよー、俺行っちゃうよ~。…あぁ~、無茶苦茶にやられた~。」
高波と酒井は二人で大爆笑。向こうに小さくガッツポーズをする多田の姿。
「多田さんこそ、こんな交流を持つ機会があるのでしたら、ちゃんと交流すればいいのに…。」
「顔見せ、声出し、正体の追及、すべてNGですか…。」
犬飼に関する細かい資料を見ながら、佐藤は溜息をつく。(これじゃあ、どんな人だかって一切わからないじゃないか。)
「犬飼さんに関係するスタッフさんに対しても同じ対応なんですか?」
佐藤は目の前に座っている社長に尋ねる。
「そうだよ。社長である私でさえ顔も声も本名も聞いたことがないからね。何人かが無理やり正体を社内で暴こうとしたらしいんだが、全員ひどい目にあったと話している。彼女は格闘技、護身術にたけていると思われる。本人も正体を暴こうとするとひどい目に合う旨のことは話していたしなぁ。」
「なんで、そのような人がメディアで働くことができているのでしょうか。普通はできないと思うのですが。」
「知らん。そんな事。私は彼女の働きたいという要望にできるだけ答えているだけなんだ。それでメディアでは上手くいっているから、文句をつける必要がないと思う。…たぶん、君はなぜスタッフなどが犬飼の問題発言を止める様に指導しないのかを不思議に思っているのだろう。」
図星だったらしく、手を組みなおす佐藤。
「それはだね、本人たちが望むようにやっているのが最高なのではないかと思うのだからだよ。本人の要望ならば当人が仕事に完全に打ち込むことができるのではないかと。…まあ、これはあくまで僕の信念に過ぎないけどね。」
社長の向こうにかかっている時計を見てみる。1時間たっていたようだ。
「疲れたかね。さすがに会社の最高責任者と1時間も1対1で話すのは大変だよね。じゃあ、明日の仕事の時間を伝えよう。ちょっと待ってくれ。」
そういって社長は手元の電話でマネージャーを呼び出す。
「いま、マネージャーに来てもらうから。本来ならば、明日から仕事だなんてことはないのだが、この場合は特別な。」
佐藤にウィンクする社長。反応に困る佐藤。
そのときドアが開いて、一人の女性マネージャーが出てきた。
「…私服?」
あまりにもラフな格好をしている女性マネージャーを見て、佐藤は思わずつぶやく。
「この会社では仕事先に向かう以外はどんな格好をしていても良いことにしているのだよ.
佐藤君もこれから、このルールにのっとっていいよ。」
「社長、犬飼のスケジュールの件ですか。」
メタルフレームのメガネが少し冷徹な印象を与えるマネージャーが社長に横から話しかける。
「そうだそうだ。明日の犬飼君のスケジュール…って、ほら、彼がこれから犬飼君の“後処理”係になる佐藤晴彦君だ。」
「お願いします。犬飼直里のマネージャーの舟木智子といいます。よろしくお願いします。」
すっと、名刺を差し出してくる。名刺には、名前や連絡先が書いてあるのだが、端っこの方に小さな猫の絵が描かれているのが印象的だった。
「よろしくお願いします。私は、佐藤晴彦と申します。以前は、個人委託警備会社で警備員として働いていました。至らぬ点があると思いますが、これからよろしくお願いします。」
「よろしく。」
舟木と佐藤が手を取る。微笑みかける舟木を見て、佐藤も舟木に小さく微笑みかけた。
ドアのノックの音が部屋に鳴り響く。
「はいりたまえ。」
入ってきたのは犬の被り物をした女性だった。
いぬかぶり 第10話
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
(今、家の柴犬が寝転がった状態でこちらを見つめています。)
大学生活が始まりました。本業に復帰です。
夏休み明けは、いつも…何歳になっても楽しいものですね。
久々に会う友だちたち、変わらずレポートが手元にたまってゆく生活。
この話の更新もどのようなペースでできるかは、まだわかりませんが、できる限りやろうと思っていたり。
ちなみに、今日もこれから授業です。
奇跡的に午後からになりました。
…単純に取れそうな授業がなかっただけですが。
相変わらず、無駄話を書いているあとがきですみませんでした。
次の話の時にもう一度会えることを楽しみにしています。
読んでくださり、ありがとうございました。