10月・11月の短歌(2018年)
麦わらを被ればそこはどこであれ貴方を待ちわびている海辺
サン・テグジュペリが心に棲みついてしまった 実害はないけれど
たまごっち的な感じで脳内で撲殺天使を育てる遊び
そうやって自己剽窃をくりかえすようにSuicaにチャージする日々
だがそれは謂わば「ほんやくコンニャク」を用いるための「食べる」プロセス
逃げのびた終電たちが笑いあう秘密の駅が最果てにある
でもたぶんのんのんびよりりぴーとの世界にだって貧困はあるよ
生活の3分の2が恥部なので秩父にシンパシーを感じる
似たようなファイルだらけで最新の〈私.jpg〉はどこへやら
アイドルになれないままで僕たちは、普通に戻ることもできない
ねえ、僕のヨルムンガンド。この海をぼくらの祖国ごと飲み干して
#せと打って出てきたものが欲しければ我を倒して奪ってみせよ
破滅へと続く梯子の中ほどの中ボスとしてたたずんでいる
潮騒を首からさげたちょきんぎょに貯める力を持つ女の子
ぬばたまという語以外は憲兵の手で黒塗りにされる歌会
はつ恋を紐解くようになめらかにぷっちんされるぷっちんプリン
あいみょんの鼻をなぞったおれのゆびさきはポエムに侵食されて
手紙魔はとうに卒業したまみのただの大人としての日常
10月・11月の短歌(2018年)