第8話-7
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ビザンは至急、ポスハ、人間の言葉でヘルパーを意味する職業の人物を、口から吐き出す高速の水流で呼び出した。もちろん父の面倒を見てもらうためだ。
水流の到着からビザンの家へポスハがやってくるまでに、そう時間はかからなかった。常に大気しているポスハは、何度も家に来ているのでグザの状態も家の状況も理解していた。
白い見た目がほとんど変わらないティーフェ族の女性へ、ビザンは父の事を託すと、その足で水中の中へ凄まじい速度で飛び出していく。それは本当の海中生物の勢いである。
行きかうティーフェ族の間を泳ぎ抜ける。
彼の住む街は惑星ダゴルトでも最大の都市であり、政治システム、経済システムが置かれていた。観光客も多く、ティーフェ族の他にも様々な種族が水中都市を珍しがって見物に訪れていた。
急ぎ観光客の間を抜けたビザンが到着したのは、都市の中心部に位置する水分子を固めた水のドームである。
歩くことなく、直接、泳ぎのまま内部へ入ったミザンは、急ぎ、議会場へと入室した。
議会場は幾何学的な複雑な形をしており、無数のジェフフェ族の議員たちが、水中に浮かんで、ジェフフェ族議会議長サザイラを見ていた。
サザイラ議長は、頭の上に真珠の大きな被り物を乗せていた。まるでそれは人でのような形をしている。
「ジュヴィラ人の攻撃がまた行われたのですか」
驚きの色、紫を顔に上らせ、ビザンは水の議会場に叫ぶ。
議会は交渉する決議を下したはずなのに。心中で戸惑いの言葉をビザンは口にした。
ジュヴィラ人。彼らの進化は実にこの宇宙でもユニークなものであった。本来、有機的生命体として誕生する生物とはことなり、鉄分の多い惑星ゴルゴバで有機体と融合した鉄。そこから誕生した生命体は、進化の過程で巨大化を行い、今では全長が50メートルを超える巨大ヒューマノイド型生命体となり、その身体は金属と機械で構成された、本当に変わった種族となっていた。
ジュヴィラ人が文化圏を広げる銀河では、水資源が乏しく、ティーフェ族との水資源についての貿易協定が結ばれていたのだが、ジュヴィラ人の一部、特に軍部との繋がりのある政治集団が武力による水資源の確保を主張、軍部の一部が攻撃を行い、強引に水を持っていく、いわば強盗のようなことを国家的に行っていた。
もちろん再三、ジュヴィラ人への抗議と憤りをティーフェ族議会は伝えてきた。しかし最もジュヴィラ人文化圏に近い惑星ダゴルトは、定期的にこうして攻撃を受けることがあった。
「死者が4ガタ人に及んだ。水資源も相当量、持っていかれたと報告にはあった。ゲダル国はほぼ、壊滅状態だそうだ」
議長が落胆した様子でビザンに説明した。
ゲダル国は彼らが住む都市とは惑星の反対側に位置する国であり地球の数で4000人の死者が出たということになる。
ビザンは愕然としながらも、怒りに顔を染めた。
「これで何度目ですか。何度我々の種族が犠牲になれば、終わりになるのです」
激しくビザンは怒りを口にした。
だがティーフェ族議会が交渉すると決議した以上、下部組織としての意味しかないジェフフォ族議会にはなにもできることはなく、議員たちはただ沈黙のうちに水中を漂うしかなかった。
第8話-8へ続く
第8話-7