hashiru

 キュッ
 ガタが着ている膝にサポーターを装着する。 
 膝が楽になるのを感じる。
 その上からジャージを履く、流石に流行の短パンタイツはなんか恥ずかしい。
 よし。
 スニーカーを履くと俺はドアを開け外に出た。

「はっはっはっは」
 俺は走っている。
 意味は無い。
 価値も無い。
 別に俺は青春に燃える中高生じゃないし。
 若々しさが必要な職場のリーダーでもない。
 カッコを付ける恋人が居るわけでもないし、家族が居るわけでもない。
 でも走る。
 ただ走る。

 一円の利益にも成らない。
 ダイエットをして持てたいわけでもない。
 ランニング仲間が欲しいわけでもない。
 健康になりたいわけでもない。
 どうせ生きていても何の価値も無い人生だし。
 この歳で平も平も負け組人生だし。
 そう何の価値も意味も無く。
 俺は走る。
 ただ走る。

 タイムを競うわけでも。
 競争するわけでもない。
 走る。
 ただ走る。

 苦しい。
 汗がシャツにべとつき気持ち悪い。
 走った反動で足でなく上半身に反動が来て肩が痛くなってきた。
 でも足は止めない。
 
 意味も無く。
 価値も無く。
 走る為に走る。
 俺は多分世界で一番純粋に走っている。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-11

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