ねごと

時々不安になる。将来のこととか、兄弟のこと。親や友人、実家や思い出の場所や物。それら全部がまだ残ってるのか、子供じみた感傷で思い悩む。
全部永遠だったらいいのに。

家族が増えた。弟や妹ではなく、義姉が出来た。嬉しそうに笑う兄姉を見て、ここに自分は要らないんだと思った。最初からいなければよかったな。

愛し合って俺が生まれた。愛がなくても産まれたろうけど、幸運なことに祝福されてきた。ただ残念ながら、俺はずっと役不足を感じていた。ここにハマるべき弟は俺じゃない方が良いと、俺だけが知ってる。

夢の中で何度か周囲の風景になったことがある。他人に干渉出来ないけれど、全てをそこから見ていられる。嬉しいことも、悲しいことも、全部わかってあげられる。けどそれは俺じゃなくていい。俺はただ漂う雲にでもなってればよかったんだ。

日が増すごとに自分の必要性が無くなってきた。小さい頃に相談したらそれは大きくなるにつれて解決すると教えられた。このままでは自滅しそうだ。これが解決なのか?

要らない。俺だけが不必要だ。俺がいなければ人一人分の空きが出来る。電車のスペースが空く、俺の分の生活費が浮く。俺の世話が要らない。金もいらない。靴も歯ブラシも制服も服も俺のものが、全て要らない。違う。俺だけが不必要なんだ。

歯車みたいな社会が、擦り合わせようと近づいてくる。だが気の毒だ。俺は噛み合わない屑鉄に過ぎない。それは要らぬ労働だ。つまり、俺の存在が邪魔になっている。

大人しくしてる分周りに迷惑はかからないだろう。いや、俺が登校するからあの子が席を移動しなければならない。また俺が邪魔だ。本を読むのが作業になった。暇つぶしが暇を潰せなくなったら、何をしてればいい?どこを見てればいい?俺は、何処に居ればいい?

俺の話で人を笑わせられる。それは本来起こりえない余剰分の幸せだろう。だから、いてもいなくても変わらないのは事実だ。誰からも嫌われているあいつの方が、俺より必要だ。俺の存在意義は消えた。

空を見上げる。星が見えない。街灯はそれ程明るくないから、雲がかかっているんだろう。月明りが申し訳なさそうに雲から透けて見えた。ごめんな。俺が見たばっかりに。月の方が俺より大事だ。

一人に慣れ過ぎた。辛くもなんともないが、虚しい。痛みはない。穴が空いただけだ。一生埋まらない穴が。それでも生きてなきゃだめなのか

ねごと

死にたい奴らはもう死んでしまった。
死に切れない俺が残って、今日も死にたがる。
どうせ死なないくせに

ねごと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-06

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