怪奇名探偵

 私は名探偵だ、探偵という職業柄、瞬間的に思いついた事を手帳にメモをする事がある、手帳は胸元の裏側のポケットにいつもはいっていて、取り出しやすく、それでいてスリにも合わない工夫をしている。念には念を入れよ、治安の悪い場所に行った時の用心のためだ。だがときたま、この箇条書きの組み合わせを使ってとりとめのない空想を書きたくなる時がある、依頼があまりに難しいとき、ヘマをして文字がかすれて読めないとき、腹立ちまぎれに怪文や、組み合わせた怪奇小説を書くことがある。ただ遊んでいる、といえば遊んでいるのだが、探偵にはそうした遊びが必要だ、そうするうちに細かい事件の残り香にたどり着く、そのうち自分のやるべき事を思いついたり、思い出したりするものなのだ。
 そう、何でもそうだが集中しすぎているときは別の事のほうに目が向いてむしろそのほうがうまくいったりする、だから副業で小説を書いて、それをぼちぼちつてを頼って雑誌に掲載している。
 なんでもそうだから、好き嫌いではなく、集中してしまうとどうしても人間は心の壁にぶつかる、何に立ち向かうときも、二つ逃げ場があり、二つ趣味がある、それだけでどこか心が楽になるのだ。まずはそれを試してみると、あまりにも力が入りすぎている目の前の出来事が理解できるはずだ。

怪奇名探偵

怪奇名探偵

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-02

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