抜ける夢

 夢が、語る。
 「あしたもきてね、忘れものをしないように」
 何か重大な事をわすれているようだ、けれど全く見当がつかない、毎日の習慣をこなしているから、すでに就寝をして何も問題がないはずだ。夢は、自分の理想の異性の顔かたちをして、そして言葉遣い、長い髪、しぐさをもっていて、やっぱり同じようにうながす。
 「忘れ物をしないでね」
 興奮と快楽と、その繰り返しを感じる、そのあとに痛みが生まれる、滞る、現実はすべてうまくいっているはずなのだ。だから何も不満はない、不満でないのなら、この感覚はいったい何なんだ。何かがのどにひっかかっているようだ。
 
 何を不安に思う事があるのだろう、現実を、おびえる事など何もないはず。いいや、現実が不安なのだろうか、現実が不安なのは、毎日の事で、そんな事はなんでもないはず、ならば何が不安なのだろう、私は、いったい、だれのかげにおびえて……。

 「忘れ物をしないでね」
 不安、私は不安などないんだ、私は、ただ何かを求めている、強い欲求をもっている、私は誰かになりたかった、誰に?私はきっと、私になりたかった、私はきっとあなたになりたかった、あなたに代わってみたかった、でもなんで?それはきっと、あなたが知っている筈なのでしょう。
 「僕はね、ただ夢でありたかったのだ、単なる夢でいたかったのだ、それでも君は僕を起こそうとするだろう」
 「配役を間違えている、私は女よ」
 「いいや、君は僕だ、これは夢だ、真逆なのさ」


 ベッドで目を覚ます、かとおもいきやずるりと落ちたカーペットの上で、天井のシミをかぞえる、寝返りを打つ暇もなく、目覚まし時計のベルがなる。ああ、そうか、昨日、僕は異性がうらやましいとおもったのだ、そのしぐさ、その言葉遣い、そしてオシャレ、異性に好かれたいとおもった、それと同時に、違和感をもっていたのだ、それじゃあ、自分は今の自分は一体どうなるのかと、忘れものは、それのことだろうか?そんな風なぼやけた意識の中で、もう一度僕は、夢の奥の世界へ落ちていった。

抜ける夢

抜ける夢

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-31

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