信じられない

犬棒あたる

 ヘビ、ネズミ、カラス、イヌ、ネコ、カエル。
村の若者たちは食べ物の話をよくしていた。
子供の私はこれらを食することはなかったが、イナゴは食べた。昆虫をイメージせずに食料と思えば美味しく食べられた。
我が家のビタミン摂取は狭い畑と山菜、野草で何とかなったが、イナゴの季節以外は動物性タンパク質に困った。だから、父母にたまにお金が入った時のサンマは御馳走だった。食事の終わりには食卓から小さい囲炉裏に移って、兄達はサンマの残った骨と頭をこんがりと焼きなおして食べた。私と弟は兄達の間に入って銀杏や栗をやいた。そして4人は雑多な話をしながら一時を楽しんだ。
 私はこんな経験をしたこともある。
ある日、父が私に蝉を取ってこさせ、アルコールランプで炙って私に食べさせようとした。私はびっくりしたが父の気持を直感的に察知し、抵抗することなくカリカリとかんだ。子供の育ちを心配して、こんなことをする父は哀れだった。それ以来父は二度としなかったが、この出来事を私は忘れることが出来ない。
あとになって考えた。私と父にこんな思いをさせたのは一体誰だ。
戦争だ。戦争が悪いのだ。
 幸いに今の食糧事情は良くなって来た。米一粒を無駄にせず、ゴミ箱から腐ったトマトを拾い、かびた餅を食べた時代は遠ざかった。テレビは料理番組、太った芸能人、かと思えばダイエット、健康体操を示して、我々にうまい物を食べながら運動し、長生き人生を楽しもうと言っている様だ。これで最後は「コロリ」と逝ければ結構なのだが。
また、私は価格が下がるのを抑えるために廃棄される過剰生産物を見るとため息が出る。安く買えれば、助かる人は何時の世でもいると思うからだ。
 自然災害時にはスーパー、コンビニの品がすぐ無くなる。人為災害(戦争)となればもっと深刻だ。インフレを伴って、物だけでなく、命、幸福まで無くなり、そのあとには悲劇、不幸の爪あとが残る。経済混乱で笑うのは一部の「賢い」人だけで、大部分の人々は涙を流す。
誰しも子や孫に悲惨な経験はさせたくない。しかし油断大敵、戦争は有史以来際限なく繰り返されている。我が国に二度と戦争は起きない、起こさない等という話は信じたくても、私には信じられない。  2018/10/26

信じられない