耳の迷路

 耳鳴りが響くと、ふと思いだす事がある、あの日あの時、家族全員で見送りにでかけた、隣にある県の飛行場、祖父、祖母、巨大な乗り物が飛び立つときのの轟音が今も私の耳に、記憶の海に寂しくさざなみのように静かに響きを残している、だからこそ私はいつまでも、その耳鳴りと、いつまでも決別できずにいるのではないのかと、ふと考える事がある。

 ふと考える事がある、あの日に戻れたとしても、あの後何がおきて、何がかわったかなんて、結局変えようのないものだ。祖父と祖母はその後、病でなくなった、あれが最後に彼等とあった夏休み、小学四年生の時。

 祖父と祖母の存在は、きっと母にとっては、大きな存在で、私もまたきっとそうだと思う、こういうときっと母はばかにして笑うだろうけど、あのひ、あの飛行場の夢を何度もみた、あの場所でわかれて2ヵ月たらず、祖母と祖父の死を知らされた日、まさか同じ病で、同じ時期に亡くなるなんて、私にとっても、きっと母にとっても、二人の存在は、大きな安心のひとつだったはずなのに。

 けれどおじいさん、おばあさん、いまでも思い出す、私は一緒に暮らすのが嫌だった、だって私は田舎にある二人のあの家が好きだった。そしてこの街には、おじいちゃんとおばあちゃんはあわないと思った。だってこの街はコンクリートだらけ、緑は点々としているだけで、きっと寂しい思いをするだろうから、それと同時に、私は二人の長生きを決めつけていた。

 ただ、最後に、棺桶にいれたものを覚えている?私は二人と遊んだ趣味のジグゾーパズル、私は二人からもらったおこずかいをためた貯金箱をわって、なけなしのお金でパズルのピースをかった、それは飛行機のパズルだった。あれは棺桶に一緒にいれてもらった、だからそのほかに、私のもとには、三人とそして弟とつくったいくつかのパズルが残っているだけ、そのほかに、そのほかに、中学生になった今でも、私は頭がくらっと眩暈をおこすことがある、そして、私の耳には、あの日の飛行場の音と共に耳鳴りが傷跡のように残っています、やめてほしいとはいわない、ただ時と場所をえらべたなら、ふと悲しい思いになりたくないときに、悲しい思いを取り戻さなくてすむ、なんて思う事もある、きっと耳鳴りは、二人のせいではないけれど。

耳の迷路

耳の迷路

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-26

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