モノマネ絵師

モノマネ絵師のはしくれ

 兄は姉と仲が良かった。
 小さな青い屋根の一軒家、仲がいい兄弟と両親だった、今では絵本にかいた世界のようにどこか幻想や幻覚じみていて遠い世界の出来事のよう。
 私はいつも兄を模倣した、才能も、しゃべり方も、そして姉を追い越そうとしていた。同性でありながら、姉には常に勝てる自信があった。姉は陸上が得意だった。姉に追いかけられた私は当然足が速かった。いつも私はばかにされて、そのせいかいつも姉に勝つ努力をこっそりずっと長い間、一人つづけていたのだ。
 私たち兄弟はケンカをする毎日、中途半端に険悪なときもありながらも、何でも話せるような仲だった、それが変わったのは、子どもの頃、両親の離婚がきっかけだ、それからもうずいぶん長い事あわない、たとえば親戚の葬式とか結婚式とか、そういう日意外はほとんど合わない。 

 離婚のきっかけは、少しずつの変化だという、ただ少しずつの不満の蓄積なのだと母は言う、ただ今でも詳しい事は知らないし分からない。ただ私たち子供がさとったのは、はじめに変った空気感をさとったのだと思う、食卓の空気が違う。夕食はいつも皆で食べるから、口数の変化はすぐに気がつく。その時の雰囲気は、家族全体の雰囲気になる、それから続いて兄弟もなぜだか、やけによそよそしくなった。
 両親は離婚によって、私たち兄弟をそれぞれのもとへわけた、好きな方についていけ、なんて話は、私には無理だった。私は母についていった。どちらかといえば母が好きだった私には、結局それでよかったのかもしれない。それから母も父もロボットのように一生懸命働いた。けれどきっとどちらについていっても不幸だったのだろう、たまにあう兄と姉は、段々と無表情になっていった。けれど母は私をそれから、自分よりなにより、一層強く愛するようになった、まるでそれは、寂しさを紛らわせるように、それがあまりに力なき、うっとおしいと思う事もあり、それは私の重しになったが、私はそれを重しと思わないようにした、それだけの素質と資質があったのかもしれない、父よりはいい、なぜなら父は、いつも私を嫌っていたから。
 父は私を嫌っていた、いいや、きっと憎んでいた。両親の離婚、それを機に私はそれを徐々に確信を固めていった。それまで兄と姉は一切そのことにふれずにいてくれたが、それはどうやら確からしいことだ。私はどうやら、母の浮気で生まれた子供らしかった。父は私を拒んだ、生まれる事をこばんだ、母は私を愛していた、その雰囲気は常に家庭内にあふれていて、私は母と二人になるまで、決してそのことを知らされていたわけではなかったが、両親ではないが、空気くらいはわかるものだ、そうじゃないかとうすうす思っていたのだ、私はそれに反発して、家族の中で、どんなに喧嘩をしてもあんなに親しく、兄弟をあいしたのかもしれい。

 私は今も兄のマネをして絵を描く、兄は普通のサラリーマンになったが、SNSで書いた絵を載せている。私は売れない画家をしている、誰もが捨て去るような、どうしようもない記憶とともに、あの日の痛みを一人感じ続けている、兄弟に感じる親しさというものを決してすてることがない、それは血のつながりを持つものへ感じる愛だ、捨てようと思えば捨てられるものだ、だが冷徹にならなければいけない、私は冷徹にならなかった。
 
 姉はもはや私をけなしている、しかし私はあの日あの場所と同じ場所にある。兄も私を兄弟として扱わなくなった、どこかであっても他人のふりをする、お互い、それが傷つかない方法だと、子どもの頃にしってしまった、それでも私は、父に疎まれ、母に愛される。私はその分楽なのだ、私自信の悩みより、二人の悩みのほうがきっと多い。多分この先も、家族愛というものは、私の中にある。両親どちらかが先に亡くなれば墓参りにいくし、実は、私だけが家族の愛をしっていて、いつの日も、いつまでも平等なのだ、だから私の書いた得意の絵、家族の絵はいつも売れる、そこに歪んだ愛は存在しない、私はいつもそこにある、父に奴隷のように扱われ、母に特別扱いされる日々、それでも私は愛をすてなかった。これからもそれを大事にしている、そこにあるのは、兄弟が抱くような無感心ではなく、強すぎるほどのつながりだ。

 かきたいものをかくとは、ぎりぎりの差がある。天才とばかとのさ、そこにいて苦悶し続けなければいけないものの差。
そのはざまにい続けなければ、流行を知り、流行の中に存在し続ける才能を持ち続ける事はありえない。そう、両親が分かれるあの日、それまで何も知らされなかったあの日、あの日の苦しみが、ずっと私を、生きる事が苦しい存在に押しとどめ続ける、だからこそ、私は常に、愛を知っているの。

モノマネ絵師

モノマネ絵師

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-26

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