迷走兎

yumieisuke

 白いベッドの手前、目の前で混沌と意識がある映像を繰り返しているしている。目がさめたばかり、記憶が宙でよみがえる、現実よりも幻想が、寝起きの頭を駆け巡る。
 同じ大きな一本道をいく兎、ぐるぐると回っている、右から左へ、まるで横スクロールアクション・ゲームのよう。左から右へ大きくなる道。私はそのすぐ脇の手前の脇道にいて、ぼーっとそちらをみて、大きな岩にこしをかけ、佇んでいる。そのうち私は見ている事に飽きてきて、兎にむかい、こっちへおいで、とさそう、そうしても、兎はちらっとこちらを見るものの、私に少しもちかづいてはこない。また左から右へ繰り返す、いつも道の右の方へいきしばらく進むけれど、地平線に消える、しばらくすると、また左からもどってくる。

 同じ道がループしている。荒野のような場所、季節のせいか枯れかけた草木、こっちにきちゃだめだよ、いつのまにか右側の道は二手にわかれ、二股の分かれ道の前で、うさぎはこちらを向いてつぶやいた、決めるのは自分だよ、またそうしてつぶやいた、この兎には見覚えがある、例の童話のうさぎだろうか、懐中時計をて手にもって、帽子をかぶったうさぎだった。

 やがて世界はもっといろいろないびつな形にあふれてきた、針のような山の影、はりぼてのような夕日、いくつものビルや建物の影、大小さまざま自由な観客の影、人もいれば様々な種類の動物もいた。ゆがんだ背景に見えるのは、ヒステリーを起こす母親の顔だ。私は人にいつもおびえている、なにより母におびえているのだ。母はあれからずっと、自己中心的だ、それは仕方がない事だから、そう思う、だけど、私はどこか母を重荷におもって、そう思いたくないと考えているけど、それでも私は気遣う事ができない、どこかで、いつも休んでいたい。だから私は、ときたま私でない私を演じているのだ、うさぎは奴隷だ、つくりかけた私の残骸、中途半端に、人格にもなりきれず、彼はさっきの道ではなく、牢屋の中で赤い目をこちらぬむけている、いやに鮮明な真っ赤な瞳、痛い目に合う兎の姿が見える、母は私を押しつぶそうとする、だから私は兎を牢にとじこめた、兎は奴隷、私の奴隷。

 私は病院のベッドでで目を覚ました、足は包帯でぐるぐるまきだ。そうだ、今朝大事故にでたたのだった、昨日の記憶といえば、いやなものだったから、今日こんな目にあってくれてよかったと思う。昨日父は私を叱った、近頃なにかと、私が母の病の原因を気にしすぎ、つきとめようとしすぎるからだ、母は母で病んでいる、だけど、それは私のせいじゃない。それなのに自分のせいにしたりして、昨日私は、母の心がいつもより荒れている気がした、そういう日は、私の心も大荒れだ。だから私は、元の母親が愛おしくなり、いつになったら戻ってくるのか、いい子にするから、なんて食事の終わった母にいいきかせていた。そうすると丁度運悪く、そこへ父が仕事から帰ってきた、リビングの高いテーブルから、すぐよこの低いテーブル、テレビが前にあり、ソファーのあるテーブルへ、そこへ坐ってまて、といって私に圧力をかけた、私はすぐ座り、すっかりおとなしくなっていた。

 父の話はこうだった、母が少し気分の浮き沈みがはげしい、それは確かでどうしようもない事だ、それを自分のせいにするのをやめろ。きみは小さな失敗を気にしすぎる、と。
 確かにそれはそれを指摘されて、それも他人に教えられてもっとショックで、私は今朝から頭がぼやけていた、母は昔、私をもっとほめたのに、気が利く子だね、と、それが突然変わってしまった、今や私も高校生、多感な時期だ、その高校に上がるまえに、母は心の、ヒステリーや気分の上がり下がりが激しい病気にかかった。
 私はたしかに明らかに反抗した時期があった、母も父も、私のせいではないという。そして実際に、私のせいではないと思うけれど、それを私のせいにして何が悪い、そうすれば母は戻ってくると、まだ望みが残るというのに、昨日だってそうだ、私は童話を読んだ、独りぼっちのときは小さなころから、私は童話を読んだ、何もうまくいかない現実より、童話の世界が好きだった、徹夜して分析することもあった。私はきっと悪い事をして、それがこんな形にもどってきたんだ、そうでなければ、なぜ母が。

 今朝も徹夜で視界がゆがんでみえていて、なんでだか、なぜだろう、あの夢の世界に迷い込んだのだ、白黒の横断歩道をわたって、車道に飛び出した覚えもないのに、疲れか、見えないはずの見える兎が私をよんだ、そして現実と理想の境目がみえなくなったから、私はそちらに飛び出した。これは私のつくった童話なのか、これを読んだら、きをつけたほうがいい、甘いゆめばかりみていて、いきなりそれが現実に変ったって、どこからがそれがいい夢か悪い夢なのかなんて、誰にもわからないのだから。

迷走兎

迷走兎

アリス×ホラー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted