求めていた俺 sequel

メズタッキン

第四部 「覚醒のズメ子編」

二十四話 夜明け


「(一対一での戦いは俺の領域だ!もしズメ子に触れられたら最後、俺自身もズメ子になっちまう。そしてこちらもヤツのお面に触れることは出来ない。 だから狙う場所はただ一つ、ヤツの胴体だ)」

ジリジリ・・・・

”一度触れられたらタブー“ の力を持つ桐生とズメ子。 両者が睨み合う。


“僕は・・三枝一真・・お願い・・僕を・・この呪いから・・・救って・・・”


その時、桐生の頭の中に直接声が流れ込んできた。まるで何者かが意識の中に入り込んで囁いてるかのようだ。

「三枝一真・・?」

相手の意識に介入して囁く力がズメ子にある事よりも、桐生が気にしていたのはその三枝一真という名前だった。

「そうか、ズメ子の正体はやはりお前だったか・・」

「やはり? 桐生、コイツのこと知ってるのか?」

「ああ。」

マナトの問いに即答する桐生。

「三枝くんは俺の隣のクラスでな。一年くらい前から理不尽ないじめを受けていたのをキッカケに不登校が続いていたんだ。結構有名な話だが、陰キャのマナトは知らないだろうな」

「余計なお世話だ!」

「何となく予想はしてたんだ。ズメ子が生徒を襲うという噂が広まり始めた時期と、三枝くんが学校に来なくなった時期が妙に一致するからだ。」


“ 僕を・・知っている・・のか・・?“

桐生の意識の中に再び三枝の声が響く。

「三枝くん。大方君は自分をいじめてきた奴らに復讐がしたくて” 呪怨の面“ に触れてしまったんだろう?」

” ・・・・“

ズメ子(三枝一真)はしばらくの間は動こうとはしなかった。

「ズメ子は ”お面を被った者の最も強き願いを叶えるためだけに行動する“ 生き物だ。だとしたら、”俺たち人間襲うこと“ が君の本当の望みなのか?」

“そう・・だ・・僕は・・・憎き人間を・・葬るため・・・ “

「ちがうね」

” !? “

三枝の心の叫びが桐生の一言によって遮られた。

「君の本当の願いは、人を襲うことなんかじゃない。 “友達が欲しかっただけ”なんだ。違うかな?」

「ハッハッハッハッ!!(ち、違う!!)」

ズメ子(三枝一真)は真っ向から否定するように、桐生に襲いかかる。

スッ

そして桐生はズメ子の突進をギリギリまで引きつけてこれを避ける。

「否定したい気持ちも分かる。でもそれは君の本心じゃない。もし本当に人を襲いたいだけだったら、行動範囲はこの学校内だけに留まらなかったはずだ。 外の街に出れば人間なんてわんさかいるからな。」

“ それは・・・”

そして桐生は一つの結論を導き出した。

「君は自分と同じ仲間が欲しかっただけじゃないのか?」


そう。桐生の言う通り、ズメ子がこれまで『この』学校内だけに出没していたのも、桐生達を校舎の外から逃げ出せないよう空間を歪めたのも、 全ては三枝と同じ新しいズメ子(仲間)を作るため。

「君は人間を捨ててまで自分を認めて欲しかった。未知の領域に足を踏み入れてしまった。 でもそれは君自身が選んだ選択で、君自身が背負っていかなくちゃならない責任なんだ」

「ハッハッ(うぅ・・)」

桐生に核心をつかれ、ズメ子が一瞬たじろぐ。




「ふぅ・・・疲れたぁ」

サファイは排気ダクトの中を登り、出口の煙突を抜けて見事に屋上へと脱出していた。そのままフェンスを破って真下に位置する中庭全体を俯瞰する。 すると、例の目的物である
白い百葉箱(祠) は意外にも早く発見できた。

「あった、あれだな!」

フワッ。

そしてサファイは躊躇なく屋上から身体を投げ出し、真下に見える呪われた祠に向かって一直線に落下する。

「必殺、“海神ノ舞”(ワダツミノマイ)!!!」

落下中にサファイは全長約25メートルの巨大な龍の外見をした海の化身を召喚した。そのサイズは、現存する最大の動物種であるシロナガスクジラに匹敵する。

『グォオオオオオオオオオオ!!!!!!』

ドンッッ、ズガガガガガガガガガガーーーーーーン!!!!!!!!!!!

龍の化身は莫大な咆哮を上げながら“祠ごと飲み込み“ 、そのまま中庭の大地を丸ごとメチャクチャに抉り取った。

スタッ。

サファイが地面に着地すると同時に龍の化身は空中分解して消えた。

「あっちゃー・・。祠は簡単に破壊できたけど、手加減ミスっちゃったなこりゃ。」

サファイが中庭を荒らした事が学園側にバレて退学処分にされるのも時間の問題である。

そしてサファイが祠を破壊した事によって、
その効果は早速ズメ子にも反映した。




「ハッハッハッ!? (うぅ!?く、苦しい・・)」

呪いの力の供給源が断絶されたズメ子が頭を抱えてうずくまる。

苦しみにもがくズメ子を桐生が見下ろす。

「どうやらサファイのやつがやってくれたようだな」

「ハッハッハッ・・(お前ッ。よ、よくも・・) 」

三枝一真は能面越しに桐生を睨みつける。

「悔しいか? 君をそんな目に合わせた俺たちが。もしそう思うんなら君はまだ立派な人間“三枝一真” だよ。」

「ハッハッハ・・(なるほどね・・。君には脱帽だよ。怪物である僕をここまで追い詰めるなんて。」

「俺だけじゃないよ」

「ハッハッ(え・・・?)」

能面に包まれているため顔は確認できないが、ズメ子(三枝一真)は明らかに動揺していた。

「最初にコウスケが別行動してくれたから俺たちがここに閉じ込められているという事実を知る事ができた。サファイが祠を壊してくれたから、そして江原さんやマナトのサポートがあったから君に勝利する事が出来た。」

そう。この戦いにおける『勝利』は、みんなで勝ち取ったものなのである。

「ハッハッハッ (君達には敵わないなぁ・・。) ハッハッハッハッ(1人で成し得ないことは、無理に1人で抱え込む必要は無かったんだね) 」

「・・さて、と。残念だけどそろそろお別れの時間みたいだ」


スゥ・・・と、三枝一真の下半身が爪先から徐々に透け始めていく。

「ハッハッハッ(ありがとう。君達と出会えて本当に良かった・・)ハッハッハッハッ(これできっと天国の母さんにも”初めて友達が出来た“ って、安心して報告できるよ)」

「なら良かった」


そして、三枝の体がとうとう首から下まで消滅したその時。一瞬だが”人間“三枝一真の肉声が聞こえた気がした。


“ところで君の名前をまだ聞いてなかったね”


「桐生だよ。よろしくな」

“ 桐生・・・覚えておく・・よ・・・・”



こうして、聖川東学園七不思議の一つ、“怪物”ズメ子は静かに闇の中へと消えていった。


「・・もっと早く会うべきだったのかもしれないな・・俺達 」


桐生は、もうそこには存在しない“友達”に告げた。


ブーッブーッブーッ

桐生のズボンのポケットからバイブ音が鳴った。

「おっ、サファイからだ。もしもし?こっちもなんとか無事に終わったぜ」

「お疲れ様。僕はもう正門で待ってるから、みんなも早く来てー」

「ああ、了解。」

ピッ (通話終了)

「なぁ桐生、」

マナトが訊ねた。

「お前、いつのまにか着信音の設定変えたんだな」

「はぁ〜」

桐生は一度大きな溜息をつき、呆れたように言った。

「・・・もうどうでもいいだろそんなこと」


午前5:30分。 朝日の光が聖川東学園校舎を照らす。 まるで今まで起こった事が夢のように思えるほど温かく、気持ちの良い朝だった。



「みんな遅いよー。はやくはやくー!」

「おう、待たせたな」



正門の前でサファイが両手を振って桐生達『3人』を迎えた。

「じゃ、帰ろっか」

そして『4人』揃ったところで横に並んで歩く。


「もう、肝試しはこりごりねー」

江原岬が白衣のポケットに手を突っ込んだまま言う。

「おっ?探検家の根性ってのはその程度のものだったんですかぁ?」

栗山マナトが江原をからかう。

「ムキーーーーッ。ほんと失礼ねぇ!ところで、あんたら歳上の女性に対してほんとに礼儀悪いのね」

「いでででで!!すいませんしたー」

江原がマナトのこめかみを握り拳でグリグリする。

「あ、そうだ。」

マナトの頭をグリグリしていた両手をパッと離して桐生達に携帯を差し出した。

「ん?江原さんどうしたんすか?」

「みんなの連絡先もらってなかったからチョーダイ!」


『3人』は江原のラインのQRコードを読み取り、連絡先を交換した。

「ありがとう!んじゃ私はこれから次の仕事があるから、おさきにしっつれーい♪」

そう言って探検家江原岬はクソ重たいリュックを背負いパタパタと走っていった。

若いなぁ。この場にいる『3人』全員が同じことを思っていた。


「僕は僕だ・・・お前は僕じゃない・・僕は僕だ・・お前は僕じゃない・・」

「それじゃあ僕たちもここらで解散するか!」

「僕は僕だ・・お前は僕じゃない・・」

「おい、誰だよさっきからブツブツ意味わからん独り言ってるの」

「僕を返せ、お前は僕じゃ・・・・え?どうかしたのかマナト?」

不意な異変にキョトンとするマナト。サファイまでもがその異変が起こった当人に視線を浴びせていた。


「お前今どうかしてたぞ・・・桐生」

「えっ? どうかしてたって?」

当の本人は謎の異変に全く気付いていなかったようだ。

「サファイも見たよな? 今の」

マナトがサファイの顔を見て確認する。

「あ、うん!ものすごく怖い顔してたよ」

「え、”俺“が?まさかぁ」

「・・・・・」

今は正気に戻っているようだが・・やはり幻覚でも見ていたのだろうか? マナトとサファイ、2人の間に無言と沈黙の空気が漂う。



後に桐生は知ることになる。今起きた一瞬の異変が、決して気のせいなどではなかったという事を。



そのころ。 聖川東学園校舎では・・・

「あの馬鹿共・・・俺のこと完全に忘れやがったな・・!」

存在を忘却された哀れな馬場コウスケが、ただ1人置き去りにされていた。

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  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-23

Copyrighted
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