すずらんめそっど
かえるにされる
普段と少しだけ違う帰り道。ノリの軽い私たちにはそぐわない、深さのある日没の街。夜特有の、冷えた風の匂い。立ち並ぶ街灯が、私たちの後ろへ伸ばす影。
普段より少し遅い時間に帰っているというだけで、そこはもう特別な帰り道になっていた。
私は特段成績が良いわけではなかったけれど、赤点を取ったことは一度もなかった。というよりも、クラスで赤点を取ったことがあるのは、私の隣を歩いている、森木佳香もりきよしか、ただひとりだけだ。今日こんなに帰りが遅くなったのも、佳香の補習を待っていてあげた、という、ただそれだけのことだった。
佳香は勉強が苦手だ。というよりも、学校生活に不向きだった。
ある日、机に全体重を預けながら、「十二時間は寝ないと眠たくて眠たくて」と言い放った彼女は、その言葉にたがわず、授業中時々振り返ってみると、いつも必ず眠りの世界の中にいた。立てた教科書を両手で保持したまま机に突っ伏して寝ている姿。教科書で顔を隠しているが、もちろんそれでごまかせるはずもなく、夏休み明けからは、教壇の前に「特別席」を設けられ、席替えをしても佳香だけはその場所に固定されることが決まった。
だが不思議なことに、その席へ「移住」してから彼女の居眠り癖はかえって加速的に進行した。というのも「灯台もとくらし」で、教壇の陰にあるその席は死角になっていて、クラス全員に眠りを確認されながらも、当の教師から起こされる頻度は激減してしまったのだった。それからはいちいち振り返ることをせずとも、本当に朝から昼までずっと眠り続けていることを知った。当の本人はあっけらかんと「眠り姫」だとうそぶいて、その愛称をできれば浸透させたかったようだったけれど、誰もその名前で呼んでくれる人はいなかった。それもそのはずで、眠っていることなんかより、毎回赤点を取る成績の悪さのほうが評判で、「また佳香(が赤点だ)」というのがおそらく由来らしい、男子がからかって、「またよし」というニックネームで呼び始め、それが真っ先に浸透してしまった。佳香は「格好悪いよね」といかにも不満げに漏らすけれど、赤点を取ること自体が格好悪いのだから、多少は仕方ないんじゃないだろうか、とおもう。それに、分かりやすい名前だと思う、たしかに格好悪いけど。
「またお母さんに怒られる、沙織ちゃんも赤点付き合ってくれればいいのに」
「赤点付き合うって……、」その発想に二の句が告げなかった。
佳香も私も、読書好きという共通点はあったけれど、それ以外の点では全く似ていなかった。
先週定期試験が返却されて、点数の見せ合いをしたときには、また佳香の補習を待つ日々のはじまりかあ、と覚悟は決まっていたこともあり、「本あるし、待ってるよ」とわざわざ文庫本を見せびらかしながら言ってしまったのが運の尽きだった。今日は予定より補習が一時間長引き、私の待つ教室へ覗きにきた佳香は、さすがにもう帰ってしまったと思っていたのか、申し訳無さそうな顔をして駆け寄って来た。運動神経が悪くて、どたどたと少し大股で走る、その姿がおかしくて、私はつい笑いそうになった。それでもそんな表情は隠して、
「私だけ帰るわけにいかないでしょ、」少し怒っているみたいな装いで、いそいで鞄を持って、急かすように席を立った。
「いやあ、ね、覚えるのってほんとう大変だよね」と切り出した彼女によると、酷な話だとは思うけれど、満点を取るまで帰してもらえないという決まりで延々とテストを受けさせられていたのだという。「まあ、最後は先生が折れてくれたんだけど、」という言葉を聞く限り、結局満点は取れずじまいだったらしい。
「佳香、頭悪くないでしょ、ただあまりに不真面目なだけで」
「そう言ってくれるのは、嬉しいんだけど」と言いながら、佳香は照れたように歩幅を大きくして歩いた。
「照れるところじゃないよ、『怠惰』、七つの大罪のひとつだから」右前を歩く佳香の肩を、軽く叩きながら言った。
「そのままじゃ、いつか蛙にされるよ、」特に意味もなくそう言った。
「蛙にされるって、」どういうこと、と言いたげに呟いた後、佳香は歩きのテンポを落とし、私達はまた横並びに戻った。
少しの沈黙があった。なんとなく佳香のゆったりとした会話のスピードに合わせる気持ちになっていた。
もりきよしか
「そういえば、さっき、なに読んでたの?」
佳香がふと尋ねる。
「アンデルセン童話、知ってるでしょ、」
私は鞄の中を漁りながら、さっきも見せた文庫本を手渡した。
「アンデルセン、か」
あまりピンとこない感じに言葉を濁して、
「蛙にされるって、アンデルセンのことだったの?」
と思い出したように聞いた。
私はつい笑いながら、
「いや、それはグリムだよ、」
と言った。
童話を読んでみようと思ったとき、まっさきに読んだのがグリム童話だった。赤ずきんとか、ヘンゼルとグレーテルみたいに、知っている話がいくつも入っていたけれど、それよりも一番印象に残ったのは、「かえるの王さま」という話だった。
有名な「白雪姫」は、毒りんごを食べさせられたお姫様が王子様の口づけで目を覚ましてハッピーエンドだなんて改ざんされているけれど、本当は口づけで生き返ったわけではない。
王子様が昏睡しているお姫様を見つけて、その美しさに死体でも良いからと城へ持ち帰ろうと家来たちに棺を運ばせていたら、家来の一人が不意に切り株につまづいて、棺が揺れた勢いでお姫様が毒りんごのかけらを吐き出した、という結構とんでもないお話だ。
ところが「かえるの王さま」の場合は、偉そうな口を利く蛙に腹を立てた王女が、むんずと掴んで思いっきり壁に叩きつけたところ、その衝撃で呪いが解け、素敵な王子様になるという、それ以上にとんでもない話だった。
しばらくぱらぱらページを捲っていた佳香は、
「今度、貸してね」
と、私に文庫本を返して、なにか考えるように、すこし歩くスピードを落としたかと思うと、
「そういえば、見て」
急いで鞄を漁り、三枚ほどのコピー用紙を差し出した。
「あ、書いたの。久々だね、」
私はいつもどおり受け取り、さっそく内容を読み始める。
佳香とは昔から時々、小説らしいものを書いて見せあった。いつからそうなったのかわからないけれど、こんなふうな帰り道に渡すのがお決まりだった。歩きながらだと、なんとなく読んでもらうことの恥ずかしさが薄れるような気がした。
私はいつも童話やファンタジー作品を読んで、それを自分なりにアレンジして書いていた。実際、それ以外にはあまり本を読まなくて、佳香のほうが何倍も本を持っていた。
佳香はいつも、自分の身の回りであったことを、ときにはギャグみたいに、ときには私小説っぽく、ときにはミステリー風に書いていた。
「誤字多いけど、それ以外はいいと思う」
からかうように言った後、佳香の表情を伺うと、
「でも、私、自分のことしか書けないから」と、照れ半分、真面目半分のような表情をして俯いた。
「たしかにちょっと、心理描写が多すぎるかな、いつもどおりといえば、そうだけど」
私は原稿を返しながら言った。
「やっぱり、そう思う?」
佳香は自分の書いた小説をぱらぱらと見ながら、
「自分のこと、書くからだめなんだと思うんだ、」と、自分に言い聞かせるように呟いた。
「沙織ちゃんのみたいに、ちゃんと主人公を、自分じゃないキャラクターにしないと、って思う」
佳香は困っているときも、怒っているときも、ゆったりしたテンポの口調をほとんど崩さなかった。
「でも、自分のこと、書いてるところがいいんじゃないかな」
そう言いながら、少し投げやりなアドバイスになってしまったような気がして、
「会話文を増やすとか、」と付け足した。
「今考えてるのは、自分じゃない、誰か、身近な人に乗り移って、その人はこんな風に見たり聞いたり、考えたり感じたりしてるだろう、ってことを書こうかなって」
もう心が決まっているように、はっきりとした言葉で言った後、
「会話文を増やすのも、ありかもね、」と笑った。
「実はもう何度も試してるんだ」
佳香はもう一度視線を足元へ移し、蹴りあげるような歩き方をしはじめた。
「そうだったんだ、それで勉強がおろそかになってたの、まさか」
茶化すように言うと、佳香はそれをまったく無視して、
「でも、あんまり長く書けなくて、結局いつものに戻っちゃうんだよね、」
諦めたように言った。
「この前なんか、小説が書けないってことを、小説の中で書いちゃったもん」
「それ見せてよ」
「ぜったい、やだよ」
佳香はすねたように斜め上空を見上げたかと思うと、なにか思うところのあるように、私の顔をじっと見た。
私の書く話は、少し朗らかすぎる、と前に佳香に言われたことがあって、でも、それを聞いたとき、なんだか嬉しい気分になった。
私は、自分の書いているものは、ほとんど童話で、小説とは呼べないな、と思っていた。
自分の書いたものをなんと呼べばいいのかわからなくて、いつでも「お話」と呼んでいた。佳香が「小説が書けない」と言っているのを聞いて、佳香はちゃんと「小説」を書いているよ、と思った。
「佳香の小説は、少し出来すぎだよ」
思いついたように言うと、
「出来は悪いよ」
佳香は真面目なトーンでそう言った。
私達は本当に似ていない。なにを良いと感じるか、とか、驚くほど似ていない。しみじみ、そう思いながら歩いていると、少し後ろを歩いていた佳香が突然立ち止まり、
「ほら、これ、奇跡!」
と、いたって真面目な顔で私に何かを促した。
近寄って見て、ひと目で納得した私は、
「奇跡って……」
と言いながらあっさりと踵を返し、帰宅を再開することにした。
佳香は急いで私に並びながら、
「奇跡だって、奇跡」
と、どうしてこの興奮が私には伝わらないのだろう、という疑問形を漂わせながら、説得でもするように「奇跡」という言葉を繰り返した。
電柱には「森清歯科」と書かれた広告が貼ってあって、佳香はそのふりがなを指さしていたのだった。
「だって、もりきよしか、だよ、」
ただのダジャレ、とでも言おうと思ったけど、面白がるというよりも真面目な顔で「奇跡」と言い張る彼女を見ていると、熱心に否定するのもおかしな気がしはじめていて、私は「どうだろうね、」とただはぐらかした。
もやもやした
「もりきよしか……ね」
くだらないダジャレが妙に印象に残っていた。たしかにくだらないけれど、奇跡に近い出来事であることに違いはない。自分の名前と全く同じ歯医者に出会うなんて。でもその奇跡的な確率と起こったことによって得たもののギャップの大きさがおかしくてたまらなかった。わたしはひとりで噴き出して、自分の名前だったら、と考えていた。「もりきさおりしか」。そんな歯医者はないなー、と思いながら、歯科というよりも鹿のイメージが頭のなかに浮かんできた。「森木沙織鹿」。それからぼうっと浴槽に浸かりながら、次にどんな「お話」を書こうかな、と少し真面目になって考えていた。
教室で佳香を待ちながら読んだなかで、「マッチ売りの少女」がずっと気にかかっている。
瀕死の女の子がマッチを擦りながら、いろんな幻影を見て慰められるシーンや、女の子が幸せそうな微笑みを浮かべて死んでしまった後、周囲にひとだかりが出来て、「かわいそうに、マッチで身体を温めようとしたんだ」と騒いでいるシーンは子供の頃絵本で読んだ記憶どおりだったけれど、「少女が不思議な幻影を見ていたことは、誰もしらないのです。また、新しい一年が始まりました。」という一文で物語が終わっていて、その一文が、なんだかとてもショッキングに感じられた。
この物語を書いたアンデルセンという人は、少女をかわいそうだと言いたいのか、それとも幸せな幻想に包まれて死んでいけたことで、最後には救われたんだと言いたいのか、最後の一文は、そのどちらも違うよ、と言っているように感じられる。この物語を読んでいるあなたも、死んだ少女の周りに集まっている野次馬と同じで、少女が救われたかどうかなんてことは、もはや分からないに決まってるでしょ、と突き離しているような。それが奇妙に爽やか、というか、あっさり書かれていて、「また、新しい一年が始まりました。」なんて、ある意味で残酷だけれど、ある意味では冗談みたいで、そんなに簡単な文章に過ぎないのに、しばらくがやがや騒いでいた人たちが、そろそろ日常に戻るか、という感じで散り散りになって、家に帰って新年を祝っている、そんな光景を描いているように見えた。
不幸でも幸福でも、孤独なのは同じなんだよ、そんな宣告を聞いたような気がする。
もし私が同じテーマを扱うとして、どんな物語が書けるだろう。
そのことをずっと考えていたけれど、なにひとつ思いつかなかった。
きっと佳香なら書けるような気がする。
私の書く話は、きっと、朗らかすぎるのだと思う。
どうして佳香に書けるのに、私には書けないんだろう。
いろいろな想いが頭の中で巡って、そのひとつひとつが、私の答えを待たずにどんどん移り変わってしまう。
それがすごくもどかしくて、私は浴槽にゆっくり顔まで沈めた。
突然世界の音がなくなって、かわりに、女の人が低い声で「おー」と言っているような、水中の音が鳴っている。
身体の浮き上がろうとする力を感じる。
私はぱっと顔を上げて、顔についた水滴を右手で拭った。
身体がずいぶん温もってきているのを感じる。もしかすると、それで頭がうまく働かないのかもしれない。
物語を書くって、なんだろうと思った。アンデルセンさんは、「マッチ売りの少女」の物語を書いて、どうなったんだろう、なにか良いことがあったのだろうか。少し変な考えかもしれないけれど、何のために物語を書くんだろう。
きっと私が疎外感を感じたように、マッチ売りの少女を書いたアンデルセンさん自身も、少女の心の中には入っていけなかったのだろうと思う。でないと、「また、新しい一年が始まりました。」だなんて冷静な声で言えないはずだ。自分の書いた物語の主人公が、自分の知らないところへ死んでいってしまったから、その悲しみ、それとも悔しさ、あるいは寂しさ?とにかく切なくなって、物語を読む人全員に、少女はわたしたちの知らないところへ行ってしまいましたよ、という意味で、最後の一文を書かなきゃならなくなったんだと思う。そんな気がする。きっとそうだ。
アンデルセンさんはきっと、その物語を読んだ私達を道連れにしなくてはならなかったほど、追い詰められていたんだろう。
そう考えると、私はそこまで追い詰められて何かを書いたことがない。
私の書く物語が朗らかすぎるって、きっとそういうことなんだろう。
ふっと、さっきまでずっと頭の中を巡っていたもやもやした疑問がぱーっとはれたような気がした。そのかわりに、また別の、それももっと大きな雲が、わたしの頭上を覆っているような気がした。
私が次に書く物語には、最後にそんな一言、自分を含めた全員を物語から切り離すような一言を書いてみたいと思った。
やさしさとは
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すずらんめそっど 作者:高坂 線
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4/7
しぶあたらしい
先生がチョークを走らせている、まるで渋谷の交差点を大量の人が横切る雑踏のような音が響いている。その薄明るい暗闇の中に、「ヘレニズム」というひとつの言葉が、はっきりとした明朝体で浮かんでいた。つまり気が付かない間に私はまぶたを閉じたまま、覚醒と眠りの狭間の世界にいた。しばらくはそうやって寝ちゃいけないという気持ちと眠たくてたまらないという気持ちの葛藤の中にいた。はずだったけれど、ふと気が付いたときには、世界史の授業をすでに遥かに通り過ぎ、その次の現代文の授業まで終わりになろうとしているのにはさすがにびっくりした。睡眠の秋という言葉があるけれど、気持ちよくてうとうとしていたわけじゃなくて、本当に時空転移したみたいにわたしははっと目を覚ました。いつの間にか教室はしーんと静まり返り、ペンを走らせる音だけが響いている。
わたしはとっさに、というとおかしいけれど、無意識に佳香のほうを見た。佳香は珍しく目を覚ましたままプリントに向かって四苦八苦している。あのプリント、と思いながら自分の席を見ると、「俳句提出用プリント」とぶっきらぼうに書かれたプリントが、たしかに私の席にも配られていた。黒板を見ると、もう板書は消されてしまった後らしく、上野先生はのんびりノートパソコンを触っている。
しばらくするとさすがに落ち着いてきて、寝ぼけた頭で、俳句か、俳句?と考えていたけれど、脳裏にはなぜか「ヘレニズム」という謎の言葉がこびりついていて、問題なのはそれが何を意味する言葉なのかわからないことだった。
私はしばらく頭がうまく働かない状態でプリントを見つめていたけれど、少しずつ寝ぼけた意識がはっきりしてきていることに気がついた。机に肘をつきながら、ずっと書こうと思っていた、思っていたけれど書くことのできないでいる「お話」のことを考えていた。かわいい女の子の浮浪者のお話だ。
この「お話」を書こうと思ったのは、学校からの帰り道にあるタバコ屋さんの自動販売機のことが頭から離れなくなった日、ふとその自動販売機の下の小銭をあさっている女の子の姿が脳裏にふっと浮かんだことがきっかけだった。ただ、それがすごく良い、と思った。でもどういう物語に仕立てあげればいいのかよく分からなくて、ただ冒頭の一文だけ書いたまま筆が止まってしまっていた。「どれだけデパートを探し歩いても欲しいものなんか何一つ見当たらないみたいに、お金が足りなかった。」そのあと女の子はおそらくいろんな自動販売機を巡り歩いてお金を貯めて日々を生き抜いて行くんだろうと思う。五百円玉を見つけたときにはカフェに入ってみたりなんかして、その姿や生活はありありと思い浮かぶのだけれど、物語として書くためには、どう書けばいいのかわからない。だって、その世界では事件はなにも起こらないし、起こっちゃいけないんだから。もし腹の出た初老のパトロンなんかがふと現れでもしたらそんなに台無しなことってあるだろうか。女の子は浮浪者でありながら、喜びも悲しみも等身大のまま、その淡い色の世界の中で生きていくんだ。そのことを思うとわたしはまぶたを閉じてうっとりとした気持ちになる。素敵な世界、素敵な人格、でもそれを書くことができないことに突き当たって納得行かない気分になる。でも今の問題はそんなことより先に、「俳句提出用プリント」のことだった。
自動販売機、と指を折って数えてみた。自動の三文字と販売機の五文字に分ければ文末に持ってこれそうだ。自動販売機といえば雨、傘、夜、あるいは夕方、夕焼け、たかる虫、などの連想が思い浮かぶ。その中で穏当なのは夕焼けかな、と思う。「夕焼けや ほにゃらら自動販売機」まで出来た。あとはほにゃらら、を埋めるだけ。それなら考える必要はもうない。なぜって自動販売機、夕焼け、と来ると残りは決まっているからだ。「夕焼けや少女と自動販売機」これでいい。私はふっと目を開けて今考えたことをシャーペンで書き込んだ。自分の字をじっと見つめて、何かのタイトルみたいだなと思いつつ、駄作だろうがなんだろうが、誰にも文句を言う資格はないだろう、と思ってもう一度目を閉じた。さっきまではずっと夕焼けと自動販売機のイメージが思い浮かんでいたのに、いま唐突に目の奥に広がる青空が見えてびっくりして、もう一度目を開けた。
ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。
四時限目も終わったことだし、と思ってさっそく弁当箱を探していると、瑞穂が私をじっと見つめていることに気がついた。
「今日朝からずっと寝てたよね」
「なんか、妙に眠たくて」
瑞穂はただにやり、とした。
私は瑞穂が怒った姿をこれまでに一度も見たことがない、温厚で良好な人格であることを知っていたけれど、口に出さないところで毒が吐き出されているような恐ろしさを少し感じていた。それは陰口をたたく、などという意味ではなく、もしかしたら彼女のなかで何度も何度もわたしや他のひとたちの愚かさを指摘する真実の言葉が吐き出されているんじゃないか、という不安があって、そしてきっとそれは当たっているだろうと確信に近い思いを抱かせるまなざし、を私は瑞穂に見てしまう。もちろんそれは、もしその読みが当たっていたとしても、私の性格が悪いせいで生まれた勘ぐりにすぎない。
どこからか、という唐突さでふっと佳香が現れて、
「今日はわたしは寝なかったよ」と冗談めかして言いながら、隣の席の椅子をちょっと拝借して、私の横に座った。
「睡眠の秋なのに」
と、まるで眠らなかった佳香が悪いような言い方で言ってみた。
「佳香の影に隠れてるけど、実は沙織も結構寝てるよね」
「そういう遺伝子なのかもしれない」
私はわざと真面目なトーンで言った。
「ええ、じゃあもう直らないってこと?」
佳香のほうもわざとらしく驚いてみせた。
「絶望的な姉妹だね」
「眠たい時は寝るのが一番なんじゃないかって思うよ」
「うちの学校の先生優しいからね」
すると瑞穂がふっと真剣な口調で、
「放っておくことばかりが優しさとは限らないよ」と、佳香に釘を刺すように言った。
とはいえ瑞穂が真剣な口調でなにか言う時というのは、かならず冗談だということを知っている佳香はすかさず、
「愛の形はさまざま、ということだね」と、いかにも適当な言葉で返した。
とはいえ佳香が赤点を取り続けているのは、やっぱりその「優しさ」のせいなんじゃないかと言おうとしたけれど、いちおう心のなかでつぶやくに留めておいた。
さて、と思い弁当箱の蓋をあけながらふと目をやると、瑞穂も佳香も、また私自身も当たり前のように例の「俳句提出用プリント」の上で弁当箱を広げていることに気がついた。
あわててプリントを引き抜くと、いかにもはっと気がついたように、
「え、なに書いたの?見せて」と食いついてくる瑞穂。
「なにって、俳句だよ」と、わたしはなぜということもなく少し照れくさい気持ちになった。
「俳句。見せて」
「見せるようなもんじゃないから」
私はさっと机の中に隠した。すると瑞穂はにやりと笑いながらひとこと、
「隠したほうが恥ずかしくなるよ」
わたしはうっ、と思った。
「どうせわかることだもんね」
佳香がひとごとだと思って口を挟んできた。
「今見せておいたほうが気楽だよ」
瑞穂がしたたかに追撃してくる。
とはいえ、確かにいずれ見せるんだよなあ、と思ったわたしはしぶしぶプリントを二人の弁当のうえにかざした。
「夕焼けや、少女と自動販売機」
はっきりした声で佳香が読み上げると、瑞穂はうーんと軽い唸り声をあげたあと、
「渋新しいね」と言った。
「しぶあたらしい?」
「そう」
「どういう意味?」
「夕焼け、は渋い。自動販売機は新しい。」
「よって、渋新しいね。」
「渋新しいのかー」と何か妙に納得したように言う佳香。
「のかー、って、渋新しい、って表現でいいのかな」とやや不満げに言うと瑞穂は
「うーん、ほとんど褒め言葉だよ」と返してきた。
私はつい、「ほとんどって」と笑った。
瑞穂はすこし、といってもわざとらしく、真面目な顔をしながら、「私は俳句マスターだからね」と言ったあと、「とはいえ私の作品はまだ見せません。」と、先手を打ってわれわれ素人たちが次に言ってくるだろう要求を退けた。わたしは「えー、自分だけずるいよ」と言おうとしたけれど、その前に佳香が「先生、沙織の俳句の添削をお願いします」とこちらもわざとらしく生徒を演じながら言った。
添削、と思いながら、特段嫌なわけでもなかったから、瑞穂が何をいうのかに耳を傾けることにした。
「俳句には動作があったほうがいいね。蛙が水に『飛び込む』とか、『咳をして』も一人とか。」と至極まっとうなことを言い出した。
佳香とふたりで「なるほど」、と感心しながら、他の名句にも動作って入ってたっけ、と記憶を探りながら『五月雨を集めてはやし最上川』、などと考えていると、
「だから、『夕焼けやポカリスエットを買う少女』みたいな?」とふざけた調子で言い始めたので、佳香がすかさず「ポカリスエットかー」と笑った。わたしは心のなかで、その句を作った時のイメージを訂正していたけれど、声に出しては言わずに、佳香と一緒に笑った。
いまっぽいよ
なんとなく会話が途切れたのをきっかけに、
「それで、俳句はできたの?」と尋ねてみた。
瑞穂は見せない宣言をしていたから、当然佳香に言っていたのだけれど、当の佳香は自分が言われているということにしばらく気が付かないままお弁当を食べ続けていた。負けずにじーっと見つめていると、わたしの顔をみてはっと気がついたように「あっ、わたしか」とつぶやいた。
「一応できたよ、」と答えたから、わたしはすかさず、「見せて」と言った。いいよ、とすんなり見せてくれるだろうと思っていたけれど、意外にも佳香は「ええー、」と軽い拒絶を表明した。
「あれ、なんか恥ずかしい感じの?」
「そういうわけじゃないんだけど」
「じゃあ見せてよ」
佳香は「まあ、そうなるよね」と照れた声で返し、すこしためらっていたものの、しぶしぶ自分の席のプリントを取ってきた。
机の上のお弁当を隅に回避して、机に置かれたプリントをわたしと瑞穂のふたりで眺めた。
「秋の日の木の葉波打ち風光る」
「『風光る』って、春の季語じゃなかったっけ」と、頼んで見せてもらった立場でありながらも遠慮なく言うと、
「でも、季語っぽくないよね、俳句って古臭い言葉ばっかりだけど、『風光る』って言葉はいまっぽいよ」
「わかる」と瑞穂が同意したあと、「いいんだよ、季語なんて」とフォローした。
「いいんですか、先生、適当なこと言って」わたしはふざけながら言った。
「でも、ほら、波打ちってちゃんと動作入ってるし」
「ほんとだ、」と佳香は少し嬉しそうに笑った。
すると突然瑞穂があわてた声を出して、
「こぼしてる、こぼしてる、」と両手を皿の形にして佳香の水筒の下に差し出した。
恥をしのんで晒した自作の俳句の評論に気を取られ、佳香はお茶が溢れているのに気が付かないまま注ぎつづけていた。
瑞穂に指摘されてからも、十分長い時間と感じられるほどしばらくお茶を溢しつづけていた佳香は、突然目が覚めたかのように「あっ」と言いながらぱっと立ち上がった。スカートに溜まっていた分がぱしゃっと床にこぼれた。
瑞穂はどこから出してきたのか手際よくタオルで濡れたスカートを拭いてあげながら、
「ほら、雑巾雑巾」とわたしをみながら掃除を指示した。あまりの手際良さに、言葉もなく素直に従って、自分の雑巾を取ってきて床を拭きながら、
「どのくらい濡れた?」と聞いた。
「それほどだったよ。」佳香は妙にさっぱりと言った。さっきの間抜けさとの対比がおもしろくなって、つい笑ってしまった。
「なに笑ってるの」今度は恥ずかしさと少し怒った感情まじりの小さな声で佳香がささやいた。
ちょっとしたアクシデントはまるで風が吹いただけのようにあっさり収まり、腰を落ち着け直したわたしは、さっきは何の話をしていたんだっけ、と思い出しながら、
「そういえば歳時記、あったよね」と教室の後ろの本棚を見ながら言った。国語辞書や和訳辞書とともに並んでいたはずだったけど、見つからずに二人の方を振り向くと、ようやく落ち着きを取り戻した佳香が一息置いたあと、「あっ、犯人わたしです」と言った。
「教室で回してたんだけど、結局わたしがずっと止めてた」
「悪人め」瑞穂が軽く言った。
教壇のすぐ前の佳香用特別席を見ながら、たしかに歳時記が置かれているのが確認できた。「持ってきてよ」と言うと、佳香は「あ、そうだね」と言って意外なほどすぐ席をたち、スムーズに分厚い本を手渡してきた。
ちょっとぱらぱらめくってみたあと、意地悪をする意味でもなく自然に「風光る」の項を開き、
「春風がきらきらと光り輝くように感じられることをいう。」と読み上げた。
「やっぱり、春風だって」佳香の表情をぱっとみると、自然な表情で、
「でも、ほら、」と窓の外を指さした。
ふと見ると、まず外の眩しさに驚いた。瞳孔が急激に収縮するのが分かったような気がした。意識していなかったけれど、蛍光灯がついていなくて、教室全体が薄暗かった。もう一度、窓の外を眺めると、まだ空は一面曇っているけれど、雲の向こう側にある太陽の跡がはっきりと見えた。窓の近くでは今朝降った雨が木の葉に水滴として残り、それが穏やかな風に揺すられて、たしかにきらきら光っている。
「風光る、ね」とわたしが言うと、その言葉を継ぐように、
「水滴光るって感じかな」と瑞穂が言った。
佳香は難しそうに、「うーん」と言いながら冷たいはずのお茶をずずず、と音をたてて啜ったあと、そのまま窓の外をじっと見ている。何を見ているのか気になってわたしも再度窓の方向を振り返ると、佳香は「あれ、」と言って、さっきと同じ様に窓の方向を指さした。
わたしと瑞穂はじいっと窓の外に注目したけれど、何を指さしているのかわからなかった。
もう一度佳香の顔をみると、いたって真面目な顔で、
「窓、結構汚いね」と言った。
めそっどとは
水曜日の放課後は週に二度しかない文芸部の活動日で、部室前を訪れると数日ぶりとはいえ、いちいち初めてこの扉を開いたときを思い出すような、新鮮な思いがする。そう思えば、佳香と瑞穂と三人で訪れているのに、いつでも私が扉を開けているような気がする。わたしはこの関係の中でそういう立ち位置の存在なのか。とはいっても、それが結局どういう立ち位置なのかはよくわからないけれど。
今日もどこか恐る恐る扉を押すと、樋之津先輩が一人で暇そうに頭の後ろで手を組んでいた。一年生が三人雪崩れ込むと、やっぱりガラッと空気が変わるような感じがあって、扉が開いた一瞬の気の抜けた先輩の顔がなんとなく脳裏に残った。
「おはようございます」
「うんおはよう」
「先輩寂しそうですね」と早速瑞穂が言った。
「寂しいとはなんだ」と先輩は、怒ったわけではなく、可愛い後輩の挑戦を受けるような気の良い顔で、
「一人は優雅さの頂点なんだよ」と意味の取りづらいことを言った。その後早速補足するように、
「二人三人と人数が増えるほど窮屈になる」と右肩下がりを表すようなジェスチャー混じりで言った。
「寂しいこと言わないでくださいよ」
「まあ可愛い一年生諸君は人の数に入らないから安心していいよ」
「なんと」
「冗談、冗談」
佳香は部室に入るなり、手癖のように窓を開けたが、運動部の掛け声が部室に響くと慌てて閉じた。そして窓の外をじいっと見つめたあと、何もなかったかのように鞄を椅子の隣に置いた。樋之津先輩は佳香の所作をぼんやりと目で追っていたが、何もなかったかのように
「ところで君たち、もう秋の風が吹いているよ、」と言った。婉曲法を濫用する先輩の癖はともかく、言いたいことは私達にはすぐに伝わった。10月の二週目には提出しなければならない文芸部誌の原稿を、三人共まだ提出できるめどが立っていなかった。瑞穂はもう何回も「プロットさえ書ければあっと言う間なんですけどね、」などと誤魔化していたし、佳香は短編を何本かストックしているはずだけど、具体的に提出している作品はなかった。わたしは完全にどんづまっていて、まさに「降りてくる」のを待っているような心境だった。
文芸部誌など趣味の創作だと言えばそうなるけれど、そこそこ歴史のある部誌であることもあり、顧問から「部を名乗り部室を使う権利を行使する以上のノルマ」を課されていた。なかなか書けないとぼやいてみたときには、「書く者には苦しい時代」みたいな話をして慰めてくれたけれど、そういう話とは少し違うような気はしたし、特にノルマを緩めてくれるわけでもなかった。とにかくわたしはただただ自分の怠惰癖に悩んでいるという自覚があったし、瑞穂も佳香もきっと同じだという気がしていた。
気づけば部室では四人ともしっかり腰を落ち着けて、すこしの沈黙が部内におとずれていた。特に作為もなく口火を切ったのはやはり年長の樋之津先輩だった。
「まあ、書けなくても『すずらん』には前例があるからね」
一息置いて、瑞穂が「まさに悪しき前例ですよね」と言った。
『すずらん』とは十月に出す方の部誌の名称で、もう一つ三月に出す『夜想曲』という部誌と区別されていた。それぞれ内容を変えるわけではないけれど、作品の質的には『夜想曲』のほうに力が入っていることが多かったようだ。受験勉強に追われると、かえって創作欲が沸くという逆説の恩恵なのだろうか。
「前例って、ひとごとみたいですね」と言ってみた。
「いや、偉業でしょ、わたしの」先輩はにやりと笑った。
「否定はしませんけどね」と返した。
去年の「すずらん」の表紙をめくると、まず次の文章から始まる。
「私が綿100%製掛け布団をめくり、綿100%製敷布団の上で身体を起こした時、外は24時間降水量30mm程度のパラパラ降りだった。」
ここまでならそれなりにひねくれた小説として読みうるかもしれないけれど、綿密な状況描写は次第に加速し、制服に着替えて朝食をとり始めるあたりになるとそれはそれはひどいものになった。
「わたしは8枚切りトーストの袋を留めるプラスティック製の『バッグ・クロージャー』を器用に取り除き中から1枚のトーストを取り出し、普段はコロッケやとんかつを温める用途に用いているオーブントースターの中に入れた。加熱時間は昔は3分にセットしていたが、最近は加熱部の調子が出ないのか、4分付近にセットしなければうまく焼き上げるまで行かない。とはいえツマミ部はアナログ的に無断階で調節可能であり、わたしはその適切な時間設定を見極めるのに少し繊細な考慮を組み入れていた。というのも雨が降っている日は湿度が高いためやや長めに時間を設定するとか、気温が高い日は少し短めに設定するといった複数要素を脳内で掛けあわせ最善の時間を割り出すよう努力するのだ。とはいえ変動する要素に気を取られすぎていてはかえってその日毎の振れ幅が大きく出過ぎ、安定した焼け具合を実現することができない。恒常的な基本設定と変動的な設定とのバランスを取ることこそが時間決定の肝だと言えるだろう――」
この小説は非常に濃厚な外見をしているが、そのストーリーの筋はとある少女が朝起きて家を出て学校で授業を受けるというだけの極めて空虚なものだ。というのも、この小説の構想自体、樋之津先輩が「今日私が起きてから学校に来て授業を受けている間に起こったことを出来るだけ綿密に描写しよう」というものだったのだから、中身を伴った起承転結が生じないのも無理はない。
「めそっど、かあ」と唐突につぶやいたのは佳香だった。
『めそっど』とは、樋之津先輩がすずらんで使用したあの執筆技法のことで、細部を平常の数十倍の倍率で描写することで、筋を考えるような苦労なしに文字数を稼ぐことができるという画期的な方法だった。
ふと、「あれ見た時、小学生のころ漢字を無理やりひらがなにしたり、段落を変えたりして文字数稼いでたこと思い出しました」と瑞穂がつぶやいた。
先輩はふっと瑞穂の顔を見て、今度は控えめに笑った。
「とはいえ、あれはあれで一作品なんだよ」と言った。
「 コンセプチュアルアートみたいなことですか」
「まあ、そうなるのか、な?」と、なぜか先輩はわたしのほうを見て言った。
「言い得て妙、って感じですけどね」とわたしは穏当なことを言った。
「昔さ、」と先輩が自然に語り始めた。
「渋谷とかの巨大な広告に映ってるウルトラマンサイズの女優さんの顔が不思議でたまらなかったんだよね。どうして現実のものよりも大きく映した写真がぼやけないのかって。」
「でもよく考えたら、現実の細部って無限なんだよ。人間が普段見てるようなものよりずっと拡大しても鮮明に見える。顕微鏡で覗けるみたいに。」
と真面目なトーンで言ったあと、ふと笑って、
「みたいな小説だよ」とあっさり締めた。
一年生組はなんとなく、「ほえー、」と言った感じで聞いていた。心のなかでどういうことを考えていたかは定かではないけれど。
「この件については別の言い方もできる。というかこれがあの『メソッド』の開発秘話なんだけど」と、少しの間を入れてまた話し始めた。
「能登くんが締め切り直前に八千字の小説をようやく完成させた時、まだまだ短すぎるって言ったらこう答えたんだよ、『この八千字は潜在する10万字を含みにした八千字なんだから』って。そのときに、じゃあその潜在した九万二千字を書いてって。」
『能登くん』とは最近あまり部室に顔を出さないけど、まだ文芸部に籍をおいてはいる私達のもうひとりの先輩だ。去年はなぜか新入部員が入らず、部員が樋之津先輩と能登先輩の二人きりになってしまったという。『すずらん』のノルマである三十万字は、四人で割ればひとり七万五千字で済むが、二人で割ると一人十五万字で、かなり大変だった。それがあのメソッド、「すずらんめそっど」を生み出す土壌だった。その能登先輩は新入部員である私達三人の顔を見届けるとふっと部活に来なくなってしまった。
「小説って変なんだよ。書くことが大切なのに、書けば書くほど読まれにくくなる。書き手のジレンマだね。」と、樋之津先輩がうわごとのように付け足した。瑞穂は何かうまいことをでも言おうとしているような素振りを見せていたけれど、喉に引っかかってうまく出てこないようだった。
すずらんめそっど
(続く)