自由のない生活。

 何にしばられているのだろう、既視感だろうか、規律だろうか、あるいは人があべこべにいう役立たずな知ったかぶりだろうか。ともかく息苦しかった。
 私は2、3日外国へ旅へ出る事にした。ぶるるんぶるるんゆられて飛行機から電車、電車から車へ移動手段をとっかえひっかえした。

 つい先日まで目の下のクマや疲れのせいかむくんだ表情をしていたが、旅行三日目ともなると私の顔は晴れやかに変わっていた。あまり名前の有名じゃない国の有名じゃない広場へ、ツアーは人気がないのでいくらか安くすんでいた。私が最も注目するのは旅先で出会う人もそうだが、それよりも私は少しひねくれたところがあるので、その国の動植物に興味をもった、ガイドさんにあれは何かときいてはメモを取る、軽くスケッチをとる、上手なほうではないが特徴だけはのがさないようにする、そんな事で気が安らぐか、とガイドさんにしかられたが、私は天性からこういう性質の人間だ、何かに熱中しているほど、何かを忘れる、ただ目の前にあるものがいつも違うだけ。

 疲れ、というけれど、疲れとは何か、自由とはいうけれど自由とは何か、私は旅先にきてまで私のままでいたし、そうでない部分はそうでないようにとりつくろって、無様に人のマネをしていただけだ、きっとあと数週間、変わることもあるけれど変わらないこともあるのだろう。しかし私の顔がはれやかだから、私はすでにきがついていた。私の人生を、私の生活を、人とは違う部分をときたま思い出すこと、久しぶりに旅をしてそれが一番の自由だと気がついた。

自由のない生活。

自由のない生活。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-22

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