洗脳王国
人々がサイバー空間に自分の感覚と意識を直接的につなげる事ができる未来、電脳アプリが流行していた。それは初めて人工知能によってつくられたアプリで、究極のリアリティをもった仮想空間だった。宣伝文句は、このアプリ内では、電脳空間での生活で100年の幸福の約束します。電脳世界に仮初の国をつくるアプリだった、原始的な生活からはじまり、内紛、戦争をへて本当の国として現実と同じように機能した、そしてユーザーから選ばれた電脳国王の誕生。
そこまではよかったが、あまりにも精巧な出来の為、依存症の様に、現実逃避のように没頭する人が続出。現実の不幸は消し去ることが出来ると喧伝し、多くの宗教が樹立、その間にも、アプリ内の施設、システムはすべて最適化して、現実よりも現実じみた世界観が完成しつつあった。
やがて、他のアプリの企業が、それらの電脳内宗教を洗脳だといいふらすも、ユーザー同士のコミュニケーションのため、電脳アプリ会社は関知せず。やがてまた別の企業が、人工知能をつかって新しいアプリを作る、リアリズムではなく、労働を免除された国のシミュレーションゲーム。そのアプリにも奇妙な宗教がいくつもうまれる。
「命は大事です」
「不幸は存在してはいけません」
「悪は存在してはいけません」
それらはすべて、偶然の否定。偶然を全て否定することは、現実すら否定すること、人は老いるし、命は終わる、人だけが理想の中に生きられるわけではない。なぜこれらのアプリの中に宗教がいくつも生れたか?電脳アプリ内の宗教は反動にどこに逃避して、どんな宗教をつくったか、アプリの中では誰もが理想を語り、同じ理想を持つ者と作られた世界を全うできた、そこでは不幸は存在しなかった、だから宗教は過激化し、変質し、多く誕生した、その宗教の信者たち、やがて彼等は、ほとんどが電脳世界での生活を主に全うする電脳信者となり、医療の発達における100年の命をまっとうしたという。
洗脳王国