地底外生命

 エラのある顔、からからとした皮膚の地底人は確かに存在した。地底世界の空洞に、透明な膜の張られた世界があって、そこでは未だに地球人の文明も知らず、地底人の文明によって形作られた独自の生活が繰り広げられている。

「我々の住む地底世界の外には、延々と薄暗い砂の世界がひろがっている、人間という生物は、人間の暮す世界は、何処までも無限に続く砂の中に埋もれている」
 
 こんな誤った世界の解釈も、ここでは普通の事、彼等はいまだに地上も宇宙も空もしらない。この世界と地上世界とのかかわりはほとんどないが、この世界を砂の地底世界、と呼ぶ人もいるが、名前はない。丁度30年前のこと、ある探索隊がその地下世界への突入を試みた、そのころから地下世界は、ある程度優秀なその種の学者のみに知られていて、その伝説的な、カルト的な人気のため、変わった学者たちが探査にでかけようともくろんだ。すぐに探索隊が編成され、最新の地底探査船で、数十人の乗組員をのせその地下世界へと侵入をこころみた。その潜航途中で、突如としてその深度にしては多すぎる圧力を受け、地底探査船は、一部の乗組員室がおしつぶされてしまった。船長含めその中でまだ生残ったものたちのてにより、亡くなった乗組員の形式だけの葬送はおこなわれ、その生残りは、しばらくまだ潜航をつづけたが、やがて地上へひきかえそうとするとき、偶然透明な膜——彼が手記に記す透明なバリア——の中に入り込んだ。それが地底世界の入口だった。

 彼等の乗った探査船がその地におりたつとぽっかりとあいた空洞のような世界が、とても地下とは思えないほどの巨大な、ひとつの国と言っていいほど莫大な空間と土地が広がっていた、どこから光があたっているのか、火はあったがそれよりもその中、空洞一面から発光しているような雰囲気があった、降り立った乗組員が、それが伝説として存在していただけの地底世界だと感動していると、近くから人影が近づいてきて、——それはエラのある、変わった形の、それでも地球人によく似た姿の人間たちだったが——
 彼等は、地底人は、それが初めて地球人との出会いだったらしく、侵略だ、外なる世界からの侵略だ、宇宙からの侵略だとさびまわった、しばらくは彼らの船のまわりは、地底人たちにかこまれてすさまじい騒ぎにまきこまれた。

 その後船の船長が、責任者が呼んでいる、と一人の地底人に案内されて、一人船外へついてでていった。それからしばらくして、彼はもどり、もう大丈夫だと船員をおちつかせた、そのおかげでさわぎがおさまるころ。しばらくして船員たちも船外へ出る事をゆるされ、奥へ通された、それは街の中心にある教会のような場所、大きな城のようにも見える建物の中だった。そこで彼らはその地底の街の市長を名乗るものと出会い、大広間にとおされ、食事や踊り、歌などを披露され、手厚くもてなされた。
 (なぜ我々と同じ言葉を話すのか)
 船員たちは気にかかってはいたが、地底人はまるでそんな事は気にせず、しばらくすると一行は彼等の市長と名乗るものの住居へと案内される、移動でまた外へでたが、地底世界の地面は思ったよりからからとしていて、まるで砂漠地帯のようだった。砂漠地帯をしばらくいくと、オアシスのような湖があり、その奥に又小さな城があり、中へとおされた、初めの城はたくさんの守衛がいたが、市長の住居の守衛は2、3人ほどしかいなかった、市長という人は、変わった人で、そのほかの人のように地底の外の暮らしに理解がないわけではなかった。話をすると全て本当の様に信じた、飛行機の仕組みを説明するも、なぜだかここではその話は全く理解されない、船員が紙飛行機をつかってとばしても、あまりうまくはとばなかった、市長いわく、
「ここは、地上の都合は通じない、神の世界だ、我々はまだ神と共に生きている」
と一人でに納得する、それには地上人は誰も納得しなかったが、船長だけはなぜか納得していた。それもそのはず、船員は本当にその地底世界が神の世界か、空想の産物ではないかとおもえた、というのも、ここにくるまでに、あるいは通された大広間の中には、家具類は地上世界ににたものばかりだったが、そのかわり見たことのない神の像や、聞いたこともない神話の絵画がいくつもあったからだ。しばらくおいてもらっていたものの、船員の体調が回復すると、やはり地上世界に戻ることになった、地底人たちは容姿は違うし、最後まで何かと疑心暗鬼な様子ではあったが、地底の街にいる間ずっと世話をしてくれていた。だから船員たちは、船の中のいらない食料だの何だのをわたした、彼等はそれを珍しそうにみつめ、とても喜んだ様子だった。

 後になって知られたことだが、その船の船長は、初めに降り立ったとき、交渉と銘打って、色々と人体をいじくりまわされたそうだった、といっても、改造されたということではなく、色々な実験や肉体の検査をうけたそうだ、本当は彼等が信用されたのは、その船長のおかげだったというわけだ。
船長はあのあと一人、あの大きな教会のような城のような場所の地下へとおされ、手術着のようなものにきがえさせられ、機械類をほほやからだのあちこちにつけられ、船員のため、といわれ、いやいやながら色々な実験をうけ、地底世界の機械類で診断をうけた、しばらくすると、医者らしき人から
「もう信用してやるよ」

といわれた。そして彼はこの地底世界で、地底人による地球人の研究が行われたど気づき、実際それは、地底人学者からすると、彼や探査隊のみんながそれからの自由を許されたのは、生態のすべてを、そこでであった地底生物の科学者に研究しつくされてからだった、その医者らしき研究者は女性で、それほど手荒な事はされなかったようだし、それも美しい女性だったらしく、いい思い出と船長はいう、しかし、あれからというもの、地球人側でまだにだれ一人としてあの地底世界に入り込んだ人はいない。つまりこの話はまだ伝説のままなのである。

地底外生命

地底外生命

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-20

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