天性作家

つまらない。つまらないお化けが来た。
定期的に来るのだ。つまらないお化け。
私の頭の中の脳味噌に寄生して、離れようとしない。
やることはあるのに、何にも興味が湧かない。
つまらないお化けは、私の脳味噌に寄生して
何でもつまらないものに変えてしまう。いや。
そもそも私の性格が、つまらないものなのかも知れない。
何でも、何に対しても興味を抱くことができない。
世界が頭の中が世界が、つまらないものに思えて仕方ない。
だからと言って、私の性格も私の世界も、醜悪なものではないけれど。
私は、楽しいのだ。それでいて、つまらないのだ。
キラキラと輝く興味の湧くものがない。依存できる対象がない。
ただ生まれたら死ぬだけ。異論はない。けれど、どうすればいい。
この有り余った時間を、何処に費やせばいい?
そうやって、今日も私は睡眠をとるのだ。寝る子は育つ。
ということだし、損はないだろう。
そうやって、私は布団を被る。そうやって、この文章を打つ。
それだけが、生き甲斐でやりがいで、満足できる行為だ。
目を細めながら、画面の中を覗き込む。次の文章は、どうしようか。
どんな形の文字を置こうか。どうすれば、
綺麗な文章に収まるのだろうか。そればかりを、
頭の中で巡り巡らせる。
文字が頭の中で整頓された状態で、浮かび上がる。
私はそれを、ひとつひとつ摘み取る。そして、並べる。
美しくおさまったら、嬉しくて笑う。
それが、何度も何度も繰り返されて、私の時間が積みあがっていく。
私は、手を動かすのを止めた。
何故だか、唐突に放り出したい気分に駆られたのだ。全てを。
「こんな人生に何がある、こんな人生に何がある。」
とぶつぶつと呟きながら、布団の中から這い出して、
寝床の周囲を意味もなくただただ歩き回った。
そして、唐突に、思い出したというように顔を上げて、
はっと呼吸を止めた。
私は、しなければならないことがある。何故だか脅迫的にそう感じて、
私は、確信的にそう思った。(しなければならないことがある)
そうやって、胸の中で何度も自らの言葉を反芻しつくした後、
どうすればいいかを、具体的にイメージし始めた。
イメージは、どんどん膨れ上がる。場面が流れ出して、止められない。
そうして、長い間至福とも呼べる時間を費やして、
私は、結局元の鞘に納まった。
結局、布団の中に潜り込んだ。


(明日は、何をしようか・・・)
私と言う人間は、結局は変わらないのだ。

天性作家

天性作家

惰性で生きているような人間を、描きたいと思ったらこうなりました。 自画像にも近いものかもしれません。 読んで頂けると、幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-01

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