不死の機械
私は人より育ちが遅かった、まわりはみんな優秀なのに、と悲観的になるほどに。けれど何十年も生きるうちに、そんな事は問題ないと思うようになった。私は何度も死にかけた、けれど幾度もそのときの科学によって復活を遂げた、私は何の才能も技能も持ち合わせてはいなかった、けれどいつしかそんな私を、人々はしぶとく生きているとほめた。私は運も不運も持ち合わせてはいなかった、けれど何もない平凡で退屈な日常だけはただあった、だから最近では、私はこれから人類が終わるまでその文明を見届ける役目を持つのではないかと思う。
手持無沙汰、そんなうわごとをつぶやいてみた、昨日より少しだけ、私には自由が芽生えた、私は博士につくられ何度となく故障し、そのたび修理されている。不出来な私だ、そんな私といつでも優しくつつみこみ私の創造主であるユラ博士は何度も私をよみがえらせている。なぜだろう?きいても博士はきっと答えない。それこそが博士が人である証拠、人はそういう不確定なものに依存し、他者や、自分意外のモノの中に、自分の魂を見出すというものなのだろう。
私は小さな研究施設の中、白く何もない壁の、台の上にのせられて、肋骨の間をいじくりまわされ、そして博士がほほ笑むのをみた。
「まったく、また事故にあうとは運の悪いやつだ、だがそれも愛嬌がある、お前はどこまでも人に好かれるアンドロイドだな」
天井のシミ、油のしみついた床、私の体の中を通る血管の代わりの配線、手のひらの大けが、何度も繰り返してきた現実、空想、連想、私は博士の手によって、今日もまた生まれ変わるのだろう。
不死の機械