宇宙人と人間
どすんどすんという砲弾らしき音と、ジュウと辺りが焦げるような兵器音。薄暗闇の洞窟、10以上の、いくつか牢屋が連なり並ぶ、とらわれた牢屋の中、ある人は落ち着きなく騒ぎたて、ある人は意気消沈し、またある人はこういうときこそ普段通り、冷静に落ち着いた対処が必要という。だが普通はそういうものだからといってもこの時点で、巻き込まれた人間は平常ではなく、普段通り、常識の通じない人々にそんな言葉をなげかけたところで効果は薄い、話しを聞かない人がほとんどだ。
「ここから逃げた方がいい」
「もう地球はだめだ」
「いいやここにとどまり機会をまとう」
牢屋の前には3人の見張り。ねとねとした粘液、軟体動物のような三頭身の怪物、その三角形の眼玉と、その目玉の間、少し下には、中央にむかってのびる歯をもつ口。人間というにはあまりにも多い触手のような手、一か月ほどまえから続く、地球への侵略、宇宙人たちの襲来、そして捕まった人々は捕虜として衣服をはぎとられ牢に入れられた。
その中の牢では、冷静にでいくつかのグループにわかれ、人類のための反逆の機会をうかがうものたちもいた、しかし他の牢、それまで普通に暮らしていた平穏な日常に生きていた人々は、この場合冷静ではいられず、まともな話し合いはできず、ただぶつかり合うだけだった、それもそのはず、だれが信用できるものか、皆そこでは同じ立場。
その洞穴の牢屋、またはほかの捕虜の集められた洞穴の中のグループの中で、唐突な日常の破壊によってばらばらに集められた人々は、無理やり同じ牢屋にいれられ、例えばリーダーのような、そんな信用にたるたった一人の存在が明確に見つけることができなかった。
「しょうがない、あの人が市長だった、あの人は僕は嫌いだが市長だし、偉いだろう」
「あの人は有名なラッパーだ」
「あの高校の教師にしよう」
いつまでたっても話しをまとめる役も、責任者もまとまらない、だから脱走計画も、現状を把握することもできなかった、ある若者が落ち着いてこうつぶやいた。
「そうか、普通が、平常時の感覚が通じない人々、それが今の僕ら、それも当然だ、もっとも僕らは普段からこの地域で生きていた、しかし普通にいきていて、普段から見知った人ととしかほとんど関わりを持たないのだから」
宇宙人と人間