愛の形

tgsg かぜっぴき

好きだよ。簡単なその言葉ですら言えない。口から出そうとする度に羞恥が口を噤む。お前から言われてばかりで、俺は返しきれてないのに、どうしてずっとずっと俺にくれるんだ?…分からない。だって、愛って見返りがあるものじゃないのか。

♡「シゲ、まーた難しい顔してる」

○「あ?」

♡「ほら、こわぁい。眉間のシワ凄いよ」

そう言って眉間をグイグイ拡げるこいつは俺の恋人。いつもは茶化すだけのふざけた野郎なはずなのに、俺と居る時は遺憾なくイケメンっぷりというかスパダリっぷりというか(?)を発揮する。それが俺にはむず痒くて堪らない。どうして、そんな風に簡単に言えるのか、どうして、そんな風に接する事が出来るのか。どうしてどうしてどうして。……考え過ぎて頭が痛くなりそうだ。

♡「……シゲ?」

○「あ、な、なんだよ」

♡「んーん。疲れてるなら早く寝るんだよ? あ、それとも一緒に寝る?暖めてあげるよ?」

○「にやにやしながら言うな!…絶対何かするだろ」

♡「なんかってなーに?」

○「…っ、何でもない!」

俺は手越を置いて自室に入った。そして、そのまま机に突っ伏して寝てしまった。

朝起きると、何故かベッドで寝ていてご丁寧に服まで着替えさせてあった。

○「これは……ん?」

♡『俺は仕事で早いから一緒に居れないけど、シゲの仕事休みにしておいたから。風邪引いてるよ。まったく、自分の事は放ったらかしなんだから。必要な物はリビングに置いてあるから、病院いっておいで。仕事行ってきます。愛してるよ♡』

○「風邪?アイツ…つーか、必要な物なんて分かったのか?」

自分でも気付かなかった風邪をアイツが気付いて、リビングに行くと本当に準備までしてあった。…至れり尽くせりだな。
病院など諸々済ませ、薬が効いてきたのか楽になったので家事をしていると電話がかかってきた。

○「小山…?もしもし?」

□「あ、シゲちゃーん!風邪大丈夫?」

○「あぁ、心配かけて悪いな」

□「まぁまぁ。いつも頑張ってるから今日くらい休みなよ。いやぁ、でもびっくりしたよ。昨日の夜にいきなり手越から電話かかって来たかと思えば、大慌てで『シゲが、シゲが!』ってね?風邪引いてる熱が出てるー!って大騒ぎ。俺明日早いのにどうしよう…って、珍しく弱気だったよ?俺が持っていく物は教えたんだけど、ほんと愛されてるよねぇ」

○「え、あ、あぁ。そう…なのかな」

□「またまた、シゲちゃん。たまには手越甘やかしてあげてね。じゃあ、ゆっくり休むんだよー?」

○「…甘やかす。…おう。ありがとう、小山 」

□「うん!じゃあ、またね、早く治してね 」

○「あぁ、じゃあな」

…顔が頬が緩んで戻らない、顔が熱い。…手越に会いたくてたまらない。唐突に浮かんだ『手越を愛したい』という気持ちは膨らんで収まらない。不慣れなアイツが俺の為に、全てしてくれた。愛に見返りをなんて…手越に失礼だったな。理由とか理論とかなしに動けるのがアイツだ。そんな彼がただ単に憧れだったんだろう。答えが出た今、早く早くと会いたい気持ちがはやる。…愛とはこういうものか。本人に会って、早く伝えたい。…早く帰ってこないかな。

♡「ただいまー!」

○「…!…おかえり、手越」

風邪を引いている事も忘れて手越に思いっきり抱き着く。

♡「おっとー…なになに、どうしたのぉー?」

茶化しながらも少し強めに抱き締めて擦り寄ってくる手越の体温が愛おしい。…もう、どうにでもなってしまえ。

○「…手越、ありがとう。好きだ、大好きだ。でも、朝起きて居ないのは……さ、寂しいからなし、な…?」

♡「……は?え、わ、どうしたのシゲちゃん。あれかなぁ、熱酷い?大丈夫?」

ここまで、俺は伝えてないのか…自分で嫌になるな。…手越、明日風邪になったら看病するから許してくれ。

○「……大丈夫じゃないって言ったらどうしてくれるんだ?」

手越の頬へ両手を添えてそのまま唇を重ねる。熱い熱い熱い。すき、手越が好き。溢れて止まらない。

♡「ふぁ…シゲ…ちょ、っ…」

○「ん、はぁ…ふふ、すき。すきだよ、ゆうや」

♡「っ、…!…成亮…もうちょっとしよ」

顎をクイッと持ち上げられて吸い付かれる様な口付けに蕩けそうになる頭を何とか持ち直して応える。だんだん深くなって口をこじ開けられて舌を絡め取られる。ぐちゅぐちゅ音が響いておかしくなりそうだ。熱のせいなのか手越のせいなのか分からない、でも…幸せだ。

♡「は、…糸引いちゃった」

○「ん、ふぁ……ゆうやのきす、きもちいい…」

♡「キスだけでトロトロになっちゃって…でもね、お預けだよ。熱下げてからじゃないと相手してあげない」

○「な、…どうして…」

♡「無理はさせたくないの。一緒に寝るから、先にベッド入って待ってて」

○「……一緒に寝る。だから、早く来て?」

♡「!…分かってる。すぐ行くからね」

頭が朦朧としてる。自分が何言ってるかぎりぎり判別できる程度だ。恥ずかしい…でも、手越が…祐也が嬉しそうに顔緩ませるのを見るとたまらなく胸が締め付けられる。…戻って来た。ほんとに早かったな。

○「おかえり、ゆーや」

♡「ふふ、ただいま。さ、寝よっか。明日は元気になるといいね。じゃないと、俺も我慢できなくなっちゃうかも」

○「…そ、それでもいい、けど…治す、から…明日は俺の相手しろよ」

♡「ふふっ、成亮の可愛い可愛い頼みだもん。お互い休みだもんね。1日ずっと一緒に居るよ」

○「…やった。…おやすみ…ゆう、や…だぁいすき」

♡「ふふ、おやすみ、成亮。はぁ…罪だな、この可愛さ。」

変な事を呟いてるのは知らずに俺は愛する人の体温に溶けるように意識を手放した。明日の休日の様子を頭に思い描きながら。

愛の形

愛の形

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-17

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