求めていた俺 sequel
第四部 「覚醒のズメ子編」
二十話 窮地
午前2時30分、暗闇に包まれた聖川東学園4階マルチメディア室にて。
「『求めていた俺-sequel- 』20話連載記念〜〜!!おめでとう!!」
拍手をする探検家、江原岬。
「ヒューヒュー!!」
口笛を鳴らすサファイ。
パァアアン!!(クラッカーの音)」
「いやぁ、おめでたいねぇ。20話だよ、20。
年齢に換算したら成人式だぜ!?」
「そうそう!20話記念という事で、岬さん特製ケーキを作って来たの。じゃじゃーん!」
「・・って、やめろーーーッ!!」
バキィッ
栗山マナトがツッコミがてら愛用のノートパソコンで桐生の頰を強打する。
「いってぇえええ、なにすんだよクソマナト!」
桐生の右頬が赤く膨れ上がっている。
「なにすんだよじゃねーよ。今は一刻を争う緊急事態なんだぞ! あと、なーにが”年齢に換算したら成人式だぜぇ!?“ だよ!?」
「そう言うお前だってクラッカー鳴らしてたじゃねえか。」
「うっ」
「はーい、そこまでそこまでー。本題に戻りましょー?」
「江原さん・・言い出しっぺのアンタが言うなよ・・」
「まぁまぁそう怒らんとき〜や〜。ところで、どうやって1階に降りるの?」
江原が鼻をほじりながら質問する。
「うーん・・、建物全体の空間がズメ子の力によって歪んでしまってるんだとしたら、普通に階段を下っても無駄だよな。そもそも、コウスケの言っていることが本当に正しいかどうかは眉唾だが・・」
マルチメディア室の白いデスクの上に腰掛けながらこれからの作戦を練る桐生。
「よし、取り敢えずコウスケのやつと合流するのが先決だ。 こんなところでモタモタしてな・・・」
バァン!!!!
その時、突然どこからか物を叩くような大きな音が響いた。 桐生達全員が緊張に呑み込まれて硬直してしまう。
「まさか・・」
バンバンバンバンバンバン!!!!
四人全員が音のする方向に一斉に視線を浴びせる。彼らの視線の先にあるのはマルチメディア室の入り口の扉だ。
「シーッ・・。おそらく、ドアの向こうにズメ子(ヤツ)がいる」
人差し指を口元にあてるジェスチャーで、桐生がサファイ達3人に大声を出さないよう促す。
「とうとう嗅ぎつけて来たのね」
そしてついに。
カラカラカラカラ・・・
沈黙が走るマルチメディア室に無情な音が響き渡る。 ズメ子が扉を静かに開ける音だった。 そしてのそりのそりと、能面を被った人型の怪物は四足歩行でゆっくりと部屋の中に侵入してくる。
だが幸い、ここはマルチメディア室だ。あちらこちらにデスクやパソコン、コピー機といった遮蔽物が散在しているため、敵から隠れてやり過ごすには最適と言える。あくまで一時的に、だが。
「ハッハッハッハッハッハッハッ」
ズメ子が不気味な声(音?)を発しながら
「(みんな、こっちに来て!)」
デスクの下に隠れているサファイが手招きで他の3人を自分のいる所に集合させる。
「(いいこと思いついたんだ。今から僕がこっそりPCの電源をつける。そしてPCの明かりにズメ子の注意を引きつけるんだ。その隙にダッシュでこの部屋を脱出する!)」
「(分かった)」
全員がサファイの作戦に同意した。
「(いくよ)」
ポチ。
『チンチロチーン♪』
パソコンの起動音と同時に、画面が白光りする。
「ハッハッハッハッハッ」
サファイの企み通り、ズメ子の注意が一瞬PCの明かりに集中する。
「いまだッ!走れぇええええ!」
ダダダダダダッ
ズメ子のいる反対方向を猛ダッシュで通過して出口に向かい部屋を脱出することに見事成功した。
「ハッ?」
しかしすぐさまズメ子の方も異変に気付き、すぐさまこちらに向かって猛突進してきた。
「ドアを閉めろ!」
サファイが桐生に言われるまでもなく、扉を素早く閉める。ズメ子をこのままマルチメディア室に閉じ込める為に他3人も加勢して扉を両手でおさえる。
ドンドンドンドン!
向こう側からズメ子が扉に激突してくる。
「くっ、しつこいな!!江原さん、そのやたらでかいリュックの中にドアを閉めたまま固定できる道具ない!?」
「あるわ! “粘着力が通常の10倍のセロハンテープ“ よーー!!」
「あー、めっちゃ地味だけど無いよりはマシか。それをドアに貼り付けまくって!!」
「わかた」
江原がひたすらセロハンテープをドアに貼り付けること25分。 ギリギリドアを固定することが出来た。 しかしそれでもズメ子は突進を諦めない。
「テープが全て千切れるのも時間の問題だな。でも時間稼ぎにはなる!今のうちにコウスケを探しに行くんだ!」
そして桐生達四人はコウスケと合流する為に学園の廊下を駆ける。
求めていた俺 sequel