全自動道化師

 ある世界の片隅、大陸の中、大国のかたわらに一つの国、家電、機械類、現代文明の科学的な全てのものが魔道ゼンマイで動か触れる世界があった。

 誰もが魔道ゼンマイに与える魔力をもっていて、当たり前に魔道人形を動かしていた、生活のためにはほとんど魔道能力が必要で、それは必須必要な力で、特に、魔力をもたない人間はこの世界では差別されていた。

 ある時計台と広場、シーシーが有名なそのイルの街のその広場の近くにも、魔力をもたず、周囲の人間から心配されている人間がいた。彼はまだ少年で、この時代には、すでに差別はすくなくなってきてはいたが、それでも大人で魔力を持たないとなると生活も大変で、生活に必要な機械を動かす能力どころか、就ける職業も限られていた。

 彼は、一人でいることがおおかった、カカシ道化師が話し相手だった、カカシ道化師は広場の象徴の像で、街の中でつかわなくなった魔力をあつめ、時計をうごかし、一時間ごとに踊りを披露する。カカシ道化師は常にシーシ広場にいた、カカシ道化師はこの街をつくった人々の先祖で、ある伝説をもっていた、いくら人に騙されても信じ続けて、この街を守り続けていたのだ、この道化師は約50年前に設置され、50年前から時計台の下で象徴としてたっていた、カカシ道化師、少年は彼をみると自分をみているようで悲しくなる、道化師は道化師、騙されているものの、彼は常に笑う。

 少年、彼もまたその街で、カカシ道化師に憧れを抱いていたうちの一人だった。彼はカカシの笑顔を真似をした、それは単なる愛想笑いだったが、彼もまた、道化師のように、信じる事ではなく、その愛想笑いでその場をしのぐ方法を覚えていった。彼の起点になったのは、青年の時にカカシ道化師の研究をしたことだった、カカシ道化師の研究を独学でするうちに、空気中の余分な魔力を集める方法と装置を彼はたまたま発見した。そして彼は、それによってまるで義手か何かを手に入れたように、その世界で何不自由なく生活することができるようになった。
 
 しかし彼はそのことで満足しなかった、彼の本当の目的は、カカシ道化師を新しい象徴とすることだった、やがて本をだしたり、講演をしたり、長い時間をかけ、老いとともに彼は一躍有名人になっていたが、丁度いいころ合いをみて、町の人や、市長にその話をもちかけた、それは幼少の頃抱いた夢、彼の生涯の目的、広場の象徴、カカシ道化師の像の改善、改良だった。
 カカシ道化師は、それから彼の改良をうけ、ときにおこり、無表情になったりすることもあるようになった、それはこの街の魔力の影響をうけて、街の人々の反応を見て変わる、笑い声ひとつでもその日ごとに違う、やがて10年、20年、長い時間をかけて、彼の死後でまでそれは、彼の研究の象徴となった。あまりに自然で、あまりに普通な人間の象徴だった、だれも気にしなかったが、誰も不快におもわなかった、カカシ道化師は満足だった、ときに自分に興味がある人間が自分と話したがるようになったのだった。カカシ道化師は、彼の研究によって、自分に語りかける人間に反応することができるようになったからだった。

全自動道化師

全自動道化師

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-16

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