好きか嫌いか
レッドカーペットの端に、ふわふわといったりきたりして、ただ同じような場所にとどまっている、いつから私はこの姿だったのだろう、光の玉の私は、天使に問いかけられてとまどう。
「貴方は誰が好きですか?誰が嫌いですか、それは必須条件です。生まれ変わりたいのならそれを選んでね」
そういわれてもね、ととまどうことしかできない、教会のような聖堂のような場所にいた。なぜ生まれなくてはならないのか、生まれ変わるべきかと私が何度聞いても天使は、それは私の知る事ではないという、何度尋ねても天使は同じことを繰り返す、私の前方、長いレッドカーペットのむこう、長細いテーブルの右奥、行儀よくならぶ椅子にこしをかけてだまっている、私は神について尋ねた、はぐらかしたり、ここにはいないといったり、あげくのはてには、天使は神をしらないという、あまりに強大すぎて何がなんだかわからないのが神なのだそう。
何日も何週間も何年間も、光の玉の私はただ天使の食事や寝起きや、独り言の様子をみていたのだ。彼女は大理石の部屋の中央にいる、大広間には彼女意外の人はいない。
「そんな事も思い出せないのですか、あなたは人間なのですよ」
そういわれても思い出せない。なぜなんだろう、私は何が好きで、何が嫌いだったのだろう、だからこそ私は、志半ばに死んだそんな気がしている。しかしそれは何の心ざしだったのか、思い出せない、生きている頃は、それだけが世界のすべてのように思えていたと思うのに、どうしてだろう、なぜ、どうして、おもいだせない、思い出したいかどうかさえ、おもいだせない。けれど……。
アクセサリー、そのアクセサリーが美しいとおもった、左手首、天使の白い装束のその左腕のブレスレッドがあまりにもきれいだった、だから私は、
天使につげた。
「かざりがすきです、あとのものは嫌い」
「やっぱりあなたはあなたなのね、つぎのあなたもきっとそうでしょう」
そういって天使はわらう。私はその言葉が皮肉じみて聞こえたので、そのことについて天使に聞いた。
「あなたはきっと、生きている間には、生きていることをただのアクセサリーのようなものにしかとらえられていないのよ、どれだけ何を強くおもってもあなたにとって命は飾りなの」
好きか嫌いか