異世界

君は勇者パーティのナンバー2だ、遠距離戦闘が得意で、弓やボウガンをつかって魔物を退治する、そのくせ人と戦うときには、こぶしとこぶし、あるいは小剣をつかい、律儀にも自分も危険を冒しながら対等な立場で対峙する。君は律儀だ、いつも律儀だ。

 だからこそ君に伝えなくてはいけない、私の声が聞こえるか、コンテニューボタンはいつでも押せるし、セーブはできる、だけど君は、ナンバー2の立場だからこそえらばなくてはいけない、勇者を殺すこともできる、その座を奪う事もできる、このゲームが自由度の高いゲームだといっただろう。説明書はよく読んだだろうか?そして魔王を倒すことも、姫君を手に入れることもできる。なぜ君は前にでないのか?なぜ君はいつまでも自分を信じないのか、どうして君は、信じる事で自分を解放しないのか、それは君がよく知っているはずだ。

 君はまよっている、荒野の中、砂埃がまっている、風は強く吹いている、人々が行き交う街、延々とつづく地平線に嫌気がさす、だが君は、魔物の暴走を許せず、信用のおける仲間を選んだ、魔物の奴隷を従えた。砂漠を超えるために薄くしろいフードつきの衣服をまとった。砂埃をさけるために防塵マスクをつけている、重装備で汗をながす、水筒にはすこし酒をまぜてある、弓矢の本数は十分だ。

 昨日の夜はよく寝たか?朝は誰よりも早くおき、移動中は後方を警戒し、遠くを見渡す目をもち、みんながくつろぎ明日の準備をする夕方さえ、食料さえもたった一人で調達できるのに、自分の仕事に満足せず、誇ることすらできない、君は誰だ?君は本当にプレイヤーか?ならば信じろ、誰が何といおうと、君はナンバー2で、だからこそパーティも勇者もどちらも左右することができる、けれど、だからこそ誰も君に注目しないのだ。

異世界

異世界

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-11

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