不の補充

 教会は古びて悪魔信仰教会の拠点となっていた。悪魔はつかれていた、毎週毎週人間たちの堕落につきあわなくてはならないし、人間の呼び出しにこたえなければならない、そして人間はその都度、退屈な恍惚とした表情をうかべるのだが、そんな顔は見飽きている、何せその顔は自分たち悪魔を模してはいるが、崇高がすぎて、まるで自分たちよりもさらに深い闇を信仰しているようだ、そんな闇はない、彼等は狂気を宿しすぎている。
「うごーうごー」
 うなるように呪文を唱える信者たち、悪魔は耐えきれず黒ミサの途中に目をふさいだ、翼をひろげ。その先端の骨の退化したトゲをそらたかく掲げた、羽のそれぞれの骨はピンとはっている。彼は段上の上でそのまま両腕で両肩を抱いた。
 彼は退屈していた、彼というには中性的な体つき、彼には乳房もついているし、顔は男の顔つきだ。しかし、退屈だ。呪文の中、そして地面にチョークでかかれた模様の中に納まっているのが彼の定め、ただ彼はしっている。負のエネルギーは人間にとってそれなりに必要なものだということを、彼等は負のエネルギーをためすぎた。何事もバランスが重要だ、彼等は負のエネルギーに依存しようとするために依存しているようなものだ、そういう人と付き合い続ける悪魔は、悪魔であり続けることに退屈している。そういうとき悪魔はときに自分の悪魔性を疑わなければならない。
「悪魔信仰の布教にももう飽きた」
 そうつぶやくのは、一人の教徒の前だけだ、彼女は悪魔と同じ退屈な目をしている、ただ、ほかの信者とちがうところは、まるでこの信仰と信者をあわれみ、あるいはそれよりつよく見下し、見くびっているところだ。
「私はここで社会を学んでいるのです」
 悪魔は、この信者が、教徒が、この集まりの中で一番賢いことを知っている。何事もバランスなのだ。

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悪魔の話。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-10

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