からくり人
いっときだけその人のふりをする身代わり人形が流行る。変わりに身代わり人形に半分魂を持っていかれるともしらずに。
世紀の大発明、僕はその被験者だった。魔法と科学の融合、わが国と少数民族魔法使いとの間で合同の研究が行われた。もともとわが国と魔法使いたちは他の国と比べると友好関係にあって、持ちつ持たれつでお互い共存の道を探していた、わが国はもともと国力が弱くなんの財産、資源もなかったが魔法使いの助言によって徐々にその領土をふやし、周辺の国を吸収して巨大かしてきた歴史がある。
そしてその恩もあって魔法使いたちに、わが国は特別優しく接している。今度の研究も実はそういった内情もあって、魔法使いたちのスキルのために進んできた研究でもあった。からくり人、表向きは人が疲れを癒すために、数日間自分の分身に働いてもらうという内容のサービス、とされているが実はこれは魔女たちによる合法的な魂の回収だった。
「最近つかれているんですよ」
お客はそういった人たちばかりで、魔法使いたちは、誓約書にサインさせて、その人の代わりに人形がその人の代わりをする日数をきめる。人形は精巧なマネキン人形で、それ単体でもかなりの完成度をもっているが、男女ともに容姿の平均値を持っているだけで、その誓約書と、お客の血液を使い、幻覚を見せる魔法をマネキンにほどこし、周りの人間に本人であると認識させ、数日間その本人として過ごす、という流れである。
ここまでは何も問題はないのだが、しばらくしておかしな現象が起き始めた、法律も施行し、きっちりとした制限をくわえられ始まったサービスだったはずが、本人の知らぬところで、本人のふりをする人形がちらほら事件を犯し始めた、魔法使いたちは真っ先に疑われたが、警察の調査によって、その件に魔法使いはかかわっていないと判明していく。その後、わが国と魔法使いの合同研究施設のデータがハッキングされていたことがわかる、子供の魔法使いが近頃誘拐されていたこともこの件にかかわっていた。とある国際犯罪グループが、魔法使いの子供をつかって、そしてからくり人サービスの使用済みの人形をつかってデータを復元し、利用者を装って犯罪を犯し、資金を集めていたのだった。
魔法使いたちの研究の問題点もわかった、本人の代わりに人形が使われるのはいいのだが、霊能力者の話によると人間の魂を微量ながら代償として利用しているのだという、つまり、簡単にいうと寿命を犠牲にしたサービスだったのだ、それでもいまだにこのサービスは細々とつづいているし、その噂、事実をもってもこのサービスの利用者は耐えない、だからまあ、人と人、文化と文化のレベルでも、この国と魔法使いは持ちつ持たれつの関係といえるのかもしれない。
からくり人